高遠遙一
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「凜華さん、私とここにいることを後悔していませんか」
どこにも出かけず、自宅でゆったりとした時間を過ごしている時に高遠さんに聞かれてフリーズする。
「…いえ?後悔なんてしていませんよ?」
後悔なんて滅相もない。
高遠さんと一緒にいたいと思って自らの意思で彼についてきているのに、後悔なんてしていない。
むしろこっちが迷惑をかけていないかが不安になるくらいなのに。
「そうですか」
そう言うと何かを考え込む高遠さん。
今更なぜそんな事を聞いてきたのか疑問だった。
かれこれ彼と一緒にこの生活を続けて1年。
大変ではあるものの、この生活も刺激があって様々な出会いと別れがあって、何よりも高遠さんと一緒に毎日一緒にいられる。
そこに重きを置いてる自分からしたら、今の言葉には心底驚いた。
「…高遠さん、なぜ今そんな事を言い出してきたんですか?」
「……いえ、なんとなく聞いてみようかと思ったので」
「ということは、今聞いてみようと思ったきっかけがあったんですよね?」
歯切れの悪い彼にすかさず切り込んで聞く。
私が何か迷惑になるようなことでもしたのだろうか。それとも誰かから何か言われたのか。
不意に、しかも中途半端に聞かれたものだから、気になってしまって仕方がない。
「大したことではありません」
「大したことではなくても、気になったから聞いたんですよね?」
「……まぁ、そうですね」
彼にしてはどうも歯切れが悪い。
普段の彼からは想像もできない姿だ。
「私何かしました?」
「いえ、決してそんな事はありません」
私に過失があるのかと聞けば、それは即答に近い否定の返事。
ありがたいけども、だ。
「…まあ、確かに大変なこともありますけど、この生活結構気に入ってるので全然後悔してないです」
「そうですか…そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます。良かったです」
そう言ってようやく安心したのかふと笑みを浮かべた。
しかしこれで追及をやめる私ではない。
「どこかで何かを見たりとか唆されたりしたんでしょ。正直に白状なさい、高遠さん」
ソファーに座っている彼の横に並ぶように座り、彼の目をじっと見つめる。
プレッシャーに負けたのか、高遠さんはゆっくりと口を開いた。
「………凜華さんは【前の生活】に戻りたいと思わないですか?」
「【前の生活】?」
彼の言う【前の生活】とは、彼とこうやって逃亡生活を送る前の事を指すのか。
「外出している時にたまたま立ち寄ったカフェにいた女性たちを見てそう思ったんです。パソコンに向かって仕事をしている人、友人と楽しそうに話しながらデザートを食べている人、音楽を聴きながら勉強をしている人。それぞれかそれぞれの時間を自由に生きているのを見た時、ふと凜華さんのことを思い出しました」
「……はい」
「貴女は私と来たことでああいう生活を送れなくなった。私と同じように闇の中に生きる人になってしまったんだと思ったら、私がそうやって凜華さんの権利を奪ってしまったのだと」
次第に私から目をそらし、俯き加減に話を続ける。
「そう思ったら、実はどこかで後悔しているのではないかと思いましてね…。あの時は深く考えず凜華さんを連れてきましたが、その事ばかりを考えてしまうんです」
「……高遠さん」
彼の名前を呼び、そっと手を握る。
彼が私の事を見たとき、今までに見たことないような、少し悲しそうな目をしていた。
「あなたと一緒にいることを後悔なんてしてない。した事もないです。もちろんこれからもずっと、この事を後悔なんてしないと思います」
彼の手に少しだけ力がこもったのが分かった。
「高遠さんと一緒にいたいと思ったから全てを捨ててきました。あなたのいない未来なんて考えられなかったから。私は高遠さんなしでは生きていけないんです。だから…もうこれ以上そんな事言わないでください。私は高遠さんに権利を奪われたとは思……」
思ってない、そう言いかけて最後まで言わせてもらえなかった。
「んっ………」
強く抱き締められ、貪るような口付けに身体が痺れるような感覚に陥る。
「…ん…………あ…………はっ………」
だんだん息が苦しくなってきても、抱き締める腕の力が強くて痛くてもなかなか解放してくれない。
「たかと…さっ…!」
なんとか体を離して彼の名前を呼ぶ。
呼ぶといってもまともに声も出せなかったが。
「………おやおや、煽っているんですか?随分扇情的な目で見つめてきますが」
名残惜しそうに離れた高遠さんは、不敵な笑みを浮かべながら尚も近付いてこようとする。
「ちが…あなたがいきなりこんな事するから!」
「ふふ、そんなむきになって反論しなくても」
「ああもう、高遠さんのあほ、ばか!」
レベルの低い悪態をついてそっぽを向く。
こんなドキドキするキスなんて久しぶりだし、折れるんじゃないかって言いたくなるほどの抱擁は初めてだと思う。
こんな事をしても余裕のある高遠さんは、やっぱり大人でいつも敵わなくて、でもそこに惹かれていて。
いつも翻弄されてばかりだけど、結局それも悪くないなと思ってしまう。
「……ありがとうございます、凜華。私はつまらないことで悩んでいたようですね」
先程とは違う、ふわりと包み込まれるような抱擁。
後ろから抱き締められているから高遠さんの表情は分からないけど、とても優しくて心地が良い。
「今一緒にいるのが凜華さんでよかった」
そう耳元で囁かれ、首筋に口付けが落とされた。
「凜華さんじゃないと駄目なんです。私も貴女がいない未来なんて考えられない」
「狂ってるんじゃないかと思うほどに、凜華さんのことが頭から離れない、いとおしくてたまらない」
「凜華さん……いや、凜華。愛してます、ずっとこうしていたい」
口付けの合間に紡がれる言葉。
くすぐったくて、彼の気持ちがダイレクトに伝わってきて、なんだか不思議な感覚がする。
「私も」
彼の方に向き直って
「私も高遠さんのこと、愛してます。だからもうあんな事言わないで」
そう言って、今度は私から高遠さんに口付けをした。
「あなたとこの生活、どちらも結構くせになってるんですから」
今更やめるなんてできないわ、大好きな人との生活なんて。
「……凜華」
「はい?」
抱き締められたままソファーに倒れ込む。
「このまま…したいです」
「え、……えっ!?」
「ちょっと我慢できそうになくて…いいですよね?」
「いや、あの、いいってまだ言ってないから脱がせないで!それにまだお昼ですー!」
既に私の服に手をかけている高遠さんの腕を掴む。
「無理です、凜華が可愛いのが悪い…」
彼の力にかなうわけもなく。
彼の押しに勝てるはずもなく。
次第に絆されて蕩けるような感覚に陥って
そうやって痺れるような衝撃を受けて
最後には意識を手放した。
「私の方がくせになってますよ、凜華」
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やらかしてくれましたよ高遠さん
珍しくこういうのもいいかなとギリギリラインで。
冷徹なところもあるのに、彼女が相手になると
迷いが生じる高遠さんだったらかわいいなと。
小説の最終更新が2年前と知って戦慄したのは内緒です。
2018/3/25 21:54
如月凜華
「3秒後に死ぬ」より「あなたがいない未来なんて」お借りしました。
ありがとうございます。