高遠遙一
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私の隣にいる人は、指名手配されている残酷な男で有名だ。
母を殺した人たちを順番に手を下したこと、その後もコーディネーターとしてあらゆる事件を裏で操作していること、全てを新聞や彼から聞いている。
そして、今も彼は次の連鎖を引き起こそうとしている。
彼はどこか楽しげな様子で、人の名前がたくさん載ったリストを封筒に入れていた。
その様子を私は邪魔にならないようじっと隣で見ていた。
……が、宛名を見ると気になる名前が。
「!その宛名、また彼らを呼ぶんですか?」
その名前を見た瞬間、つい声を上げてしまった。
「あぁ、これですか?ええ、もちろん。オーディエンスは多い方が楽しい。それに、彼らとはこの先も平行線上で、決して交わることはできないことを証明し続けたいのです」
「平行線上…いつもそう言ってますよね。やっぱり彼らとはずっとそういう関係でしかいられないんですか?」
彼ら、というのは高校生の金田一君、警視庁の明智警視のことである。
いつも彼らとわざわざ対峙しては推理で勝負…と言ったら語弊があるのだが、そういうことを繰り返している。
毎度いいところまではいくものの、結局犯人のミスや自白で台無しになって、彼が直々に手を下してしまう。
そういった事件を未然に防ごうとするのが手紙を受け取った彼らである。
彼らの推理力には目を見張るものがある。
特に金田一君は高校生という若さで、数々の難事件を解決してきていると聞く。
明智警視もキャリア組かと思いきや、捜査一課でバリバリ仕事をしているようだ。
その推理力で、何度私たちが追いつめられたことか。
そのたびに高遠さんは余裕の笑顔でかわして逃げ延びるのだけれど。
「無理ですね。私たちは相反するもの同士ですから。彼らは決して私のやり方を良しとはしませんし、私も彼らに蹂躙されません。この先も、ずっと」
「そっか…。そうですよね」
「何です、凜華。彼らに感化されましたか?」
「うーん…。何だろう、こんなにも交わることのない人たちは初めてだなって思って」
「ほう」
「別に、歩み寄って欲しいとかそういう気持ちはないんです。ただ…彼らを見ていると不思議な気持ちになるんです」
それが何とは言えないけれど。
悪い人たちではない。どっちかと言えばこちらが悪いくらいだし。
私が協力者であるとバレたとき、彼らは何故か必死に私のことを引っ張ろうとしてきた。
そっちにいるべきじゃない
そう言われ、彼らと何日かいたこともある。
その時彼らといた時間が、私の中の何かを少し変えたのかもしれない。
「…向こうが居心地良かったですか」
「…向こうも居心地が良かったけれど、私は高遠さんと一緒がいい。それは変わりません」
「そうですか。ならばいいんです」
「……あ、ちょっと拗ねました?」
「何を…そんな子供じみたこと、私がするはずないじゃないですか」
ふいっと顔をそむけ、鞄から何かを取り出そうとする。
あ、顔隠した。
「だって私が向こうも居心地が良かったって言ったとき、ちょっとムッとした顔してましたよ」
「違います。そんな顔してません」
「してましたよー」
「凜華」
「んむ」
強引に塞がれた唇。
軽く触れただけの口づけだが、やはりどこか怒っているというか、拗ねてる。
「……やっぱり拗ねてるじゃない」
「違います。うるさい凜華の口を塞いでやっただけです」
「……はー」
「何ですかそのため息は」
「向こうの居心地が良かったら、あのまま帰ってきませんでしたよ。協力者としてだけではなく、一人の女としても私はここにいることを望んだだけです」
高遠さんの目をじっと見つめ、そう話す。
彼もまた私の目を見たまま話を聞いてくれている。
「本当は私はあなたのしていることを止めなきゃいけないんだろうけど、そういうことは私の中では関係ないの。もうあなたの側から片時も離れたくない。一緒にいたいだけ。それだけでここにいることはダメですか?」
「……ふふ」
しばしの沈黙の後、彼の口から漏れたのは笑いだった。
「な…何で笑うんですか」
「いえ…必死にフォローしてくれているなと思いまして」
「ひ、ひどい!だって高遠さんが不安そうな顔するから…!……っふ」
再び唇で塞がれる。
今度は優しくゆっくりと相手の体温を感じるように。確かめるような愛の口付けに、すっかり腰砕けになってしまった。
「ありがとうございます。そんなに思ってくれて……。安心しました」
「……良かった」
離れてからも、なんだか気恥ずかしくて彼の顔を見ることができない。
さっきまで彼の唇が触れていた自身の唇をそっとなぞると、再び落ち着いてきたはずの体の熱がまた戻って来た。
じわりと滲む彼への愛が、気持ちを更に高ぶらせる。
「…彼らとは永遠に平行線上で隣り合うことしかできません」
「…はい」
「でも…、凜華とは寄り添いながらも交わることができます。これからもそうでありたい。心も、この体も」
つ、と太腿を撫でられ、ついぎゅっと目を瞑る。
「私は凜華の全てが欲しいものでね。心も体も全部欲しい。いつでも交わっていたい」
「よ、ういちさ…」
嬉しいけど、そんなことされたら。
「私から離れないように、何度でも刻み込んであげますからね…」
熱の籠もった声で囁かれ、今日はこのまま一晩中眠れないだろうと覚悟した。
「もうそんなに欲しい顔をして…まだ太腿をそっとなぞっただけですよ?それとも…言葉で責められるのがお好きで?」
「ちっ違います!」
「そういう割には随分感じてくれているようですが…」
「あああ恥ずかしいから言わないで…!」
*********
彼らとは平行線上で隣り合うだけでも、貴女とは交わりたいという部分だけのために書き上げました。
祝!アニメ化!
アニメ化してから随分経ってしまいましたが、アニメ化記念夢です。
御題「愛すべき狂人」Seventh Heaven様より。
2014/4/26
13:16
2018/4/3
1:21一部修正
如月凜華