高遠遙一
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「……ん」
ここはどこだろう?
いつの間にか高かった日は傾き、地平線に差しかかっている。
…おかしいな、買い物の帰りだったはずなのに。
…あれ、手が動かない。
どうやら拘束されているらしい。
まさか誘拐?
────荷物は?
ない。肝心の携帯は鞄の中だ。
これじゃあ電話もメールもできない。
……取り合えずここがどこか確かめなくちゃ。
早くしないと…。
高遠さんが家で待っているのに。
私が帰らないと、今夜中に一緒にイギリス行きの飛行機に乗れない。
凜華はなんとか立ち上がり、自分の居場所を確認した。
…場所はすぐ分かった。
「今の」自宅から少し離れた、今は使われていない廃墟ビル。
でも何でこんな目に遭っているのかが分からない。
「よぉ、如月凜華サン?」
ふと名前を呼ばれた。
見ると、複数の男が部屋に入って来ているところだった。
「……」
軽く男たちを睨みつける。
「いきなりご挨拶な表情だな、如月サン」
「…当たり前です。何でこんな目に遭ってるのか見当もつきませんから」
「(あくまで冷静に、でも相手の機嫌を損ねたらお終いですよ。貴女は女性なんですから無茶は禁物です)」
以前、高遠さんが言っていた言葉が頭をよぎった。
「(…分かってます、高遠さん。でも今は冷静に相手の機嫌損なわせそうです)」
「なるほど、自分がコッチの世界で通用する美人だって知らないって事か」
「コッチの世界?」
「凜華ちゃんなら高くつくし、実際結構稼げるんじゃないかなァ?」
あぁ、私の身を売ると言っているのか。
「私には値段なんてつけられませんよ。プライスレスですから。あと馴れ馴れしく名前で呼ばないで、反吐が出るわ」
「ふん……なかなか口を利く女だな。先に黙らせなきゃダメらしい」
やっぱり私の減らず口は災いした。
「先方には悪いが…。お前ら、黙らせるだけだから優しく扱えよ」
一人の男から許可が出た瞬間、周囲の男たちが目の色を変えて凜華に近付いてきた。
「────私に手を出して、あとで後悔しないようにね」
「この期に及んで減らず口を叩くか。ここは誰にも入れやしないビルだ。誰も気付きやしないさ」
たとえそうだとしても、高遠さんならきっと私を見つけてくれる。
─まぁ、そうは言っても私はただの協力者だけど。
…もしかしたら、そろそろ時間だから私を置いて空港に行っちゃったかもしれない。
仕事のためにイギリスに行くんだもの。
高遠さんの仕事の予定を狂わせたくはないから、それはそれで仕方ない。
それでも高遠さんが来るなんて思ってしまう私は、本当に高遠さんを信頼していて、そして好きなんだなぁと思ってしまった。
殺人のコーディネーターに片想いだなんて、なんて面白い話なんだろう。
その間にも男たちは凜華に触れ、ゆっくりと衣服を剥がしていった。
「高遠さっ……」
目を瞑り、小さく叫ぶ。
「ははっ、とうとう本音が出たか」
男の笑い声が響く。
あぁ、何もできない自分が虚しい。
「はっ、震えてやがる。怖がらなくてもいいんだぜ?凜華ちゃん…」
そう囁いた男は凜華に被さってきた。
「やあぁっ!やだっ…高遠さん…!!」
悲鳴を上げるが男は離れない。
…が、ようやくその男の様子がおかしい事に気が付いた。
「死んで、る…?」
そっと体をずらすと、男の体はそのまま床に倒れてしまった。
「なっ、おい……!」
「死んでんのか…!?」
「やっと見つけましたよ」
ざわめきの中、不意に冷たい声が響いた。
「だ、誰だ貴様!」
男たちが一斉に声が聞こえた方向を向いて構えた。
「高遠さん…!」
「…凜華、」
高遠さんは私の名前を呼んで、一瞬だけ悲しそうな顔をした。
しかし、すぐに視線を外して男たちを見据えた。
さっきと違うその目は、冷たい。
「お前か…?コイツを殺したのは……」
「ええ。凜華に近付いたので、つい」
あっさりと認め、受け答えの内容は残忍だ。
「な、マジかよ…!」
「ご愁傷さまです。…そしてさようなら、みなさん」
妖しく歪んだ笑顔は、次の瞬間男たちの命を簡単に奪ってしまった。
さすが殺人のコーディネーターだけある。
感心するとこじゃないけれど、これにはさすがに息を呑んだ。
「…凜華に手を出すなんていい度胸です」
もう動かない男たちに、高遠さんはそう言った。
「急いでは来たのですが、こんな目に遭わせてしまってすみません…」
ゆっくりと膝をつき、私の手を拘束している手錠を容易く外してくれた。
「何を言ってるんですか…!助けに来てくださっただけて十分です…。でも、もう搭乗時間ですよ?仕事が…」
解放された腕の時計を見ると、既にそんな時刻を指していた。
助けに来てくれた事に感謝はしているし嬉しいが、素直に喜べはしない。
高遠さんの仕事の妨げになった、それが何よりも私に重くのしかかった。
「───凜華」
「はい…」
先程とは違う、優しくそして包み込むような瞳に真っ直ぐ見つめられて、目が離せない。
「私は凜華がいなければ、仕事であってもイギリスには行きたくありません。───イギリスだけではなく、どこへ行くにしても」
「え…」
「私が信頼できる唯一の協力者であり、愛しくてたまらない凜華を置いて行ける筈がありません」
「高遠さ…」
「…さぁ、帰りましょう。今日はキャンセルして、明日イギリスへ出発する事にします」
高遠さんは私に上着をかけて、手を引いて外に停めてあった車に乗せてくれた。
「…高遠さん」
「はい」
「私はどこまでも高遠さんと一緒に行きます」
「…はい」
車はゆっくりと二人の住んでいる家へと向かった。
2013/10/13
14:53
2018/4/3一部修正
0:13
如月凜華
ここはどこだろう?
いつの間にか高かった日は傾き、地平線に差しかかっている。
…おかしいな、買い物の帰りだったはずなのに。
…あれ、手が動かない。
どうやら拘束されているらしい。
まさか誘拐?
────荷物は?
ない。肝心の携帯は鞄の中だ。
これじゃあ電話もメールもできない。
……取り合えずここがどこか確かめなくちゃ。
早くしないと…。
高遠さんが家で待っているのに。
私が帰らないと、今夜中に一緒にイギリス行きの飛行機に乗れない。
凜華はなんとか立ち上がり、自分の居場所を確認した。
…場所はすぐ分かった。
「今の」自宅から少し離れた、今は使われていない廃墟ビル。
でも何でこんな目に遭っているのかが分からない。
「よぉ、如月凜華サン?」
ふと名前を呼ばれた。
見ると、複数の男が部屋に入って来ているところだった。
「……」
軽く男たちを睨みつける。
「いきなりご挨拶な表情だな、如月サン」
「…当たり前です。何でこんな目に遭ってるのか見当もつきませんから」
「(あくまで冷静に、でも相手の機嫌を損ねたらお終いですよ。貴女は女性なんですから無茶は禁物です)」
以前、高遠さんが言っていた言葉が頭をよぎった。
「(…分かってます、高遠さん。でも今は冷静に相手の機嫌損なわせそうです)」
「なるほど、自分がコッチの世界で通用する美人だって知らないって事か」
「コッチの世界?」
「凜華ちゃんなら高くつくし、実際結構稼げるんじゃないかなァ?」
あぁ、私の身を売ると言っているのか。
「私には値段なんてつけられませんよ。プライスレスですから。あと馴れ馴れしく名前で呼ばないで、反吐が出るわ」
「ふん……なかなか口を利く女だな。先に黙らせなきゃダメらしい」
やっぱり私の減らず口は災いした。
「先方には悪いが…。お前ら、黙らせるだけだから優しく扱えよ」
一人の男から許可が出た瞬間、周囲の男たちが目の色を変えて凜華に近付いてきた。
「────私に手を出して、あとで後悔しないようにね」
「この期に及んで減らず口を叩くか。ここは誰にも入れやしないビルだ。誰も気付きやしないさ」
たとえそうだとしても、高遠さんならきっと私を見つけてくれる。
─まぁ、そうは言っても私はただの協力者だけど。
…もしかしたら、そろそろ時間だから私を置いて空港に行っちゃったかもしれない。
仕事のためにイギリスに行くんだもの。
高遠さんの仕事の予定を狂わせたくはないから、それはそれで仕方ない。
それでも高遠さんが来るなんて思ってしまう私は、本当に高遠さんを信頼していて、そして好きなんだなぁと思ってしまった。
殺人のコーディネーターに片想いだなんて、なんて面白い話なんだろう。
その間にも男たちは凜華に触れ、ゆっくりと衣服を剥がしていった。
「高遠さっ……」
目を瞑り、小さく叫ぶ。
「ははっ、とうとう本音が出たか」
男の笑い声が響く。
あぁ、何もできない自分が虚しい。
「はっ、震えてやがる。怖がらなくてもいいんだぜ?凜華ちゃん…」
そう囁いた男は凜華に被さってきた。
「やあぁっ!やだっ…高遠さん…!!」
悲鳴を上げるが男は離れない。
…が、ようやくその男の様子がおかしい事に気が付いた。
「死んで、る…?」
そっと体をずらすと、男の体はそのまま床に倒れてしまった。
「なっ、おい……!」
「死んでんのか…!?」
「やっと見つけましたよ」
ざわめきの中、不意に冷たい声が響いた。
「だ、誰だ貴様!」
男たちが一斉に声が聞こえた方向を向いて構えた。
「高遠さん…!」
「…凜華、」
高遠さんは私の名前を呼んで、一瞬だけ悲しそうな顔をした。
しかし、すぐに視線を外して男たちを見据えた。
さっきと違うその目は、冷たい。
「お前か…?コイツを殺したのは……」
「ええ。凜華に近付いたので、つい」
あっさりと認め、受け答えの内容は残忍だ。
「な、マジかよ…!」
「ご愁傷さまです。…そしてさようなら、みなさん」
妖しく歪んだ笑顔は、次の瞬間男たちの命を簡単に奪ってしまった。
さすが殺人のコーディネーターだけある。
感心するとこじゃないけれど、これにはさすがに息を呑んだ。
「…凜華に手を出すなんていい度胸です」
もう動かない男たちに、高遠さんはそう言った。
「急いでは来たのですが、こんな目に遭わせてしまってすみません…」
ゆっくりと膝をつき、私の手を拘束している手錠を容易く外してくれた。
「何を言ってるんですか…!助けに来てくださっただけて十分です…。でも、もう搭乗時間ですよ?仕事が…」
解放された腕の時計を見ると、既にそんな時刻を指していた。
助けに来てくれた事に感謝はしているし嬉しいが、素直に喜べはしない。
高遠さんの仕事の妨げになった、それが何よりも私に重くのしかかった。
「───凜華」
「はい…」
先程とは違う、優しくそして包み込むような瞳に真っ直ぐ見つめられて、目が離せない。
「私は凜華がいなければ、仕事であってもイギリスには行きたくありません。───イギリスだけではなく、どこへ行くにしても」
「え…」
「私が信頼できる唯一の協力者であり、愛しくてたまらない凜華を置いて行ける筈がありません」
「高遠さ…」
「…さぁ、帰りましょう。今日はキャンセルして、明日イギリスへ出発する事にします」
高遠さんは私に上着をかけて、手を引いて外に停めてあった車に乗せてくれた。
「…高遠さん」
「はい」
「私はどこまでも高遠さんと一緒に行きます」
「…はい」
車はゆっくりと二人の住んでいる家へと向かった。
2013/10/13
14:53
2018/4/3一部修正
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如月凜華
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