原作沿い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「短期間で構わないから、天才高校生の科学顧問をにしてくれないか」
そう日本の高校から連絡をもらった時、最初はお断りしようかと思っていた。
私には、特殊部隊隊長をしている婚約者が居て、今も任務に出ている。
いつ任務から戻るか分からない。
でも、いつ戻ってもいい様に待っていたいから。
不安が無いわけではない。
寧ろ不安しかないと言った方が正しい。
ヒーローと言えば聞こえはいいだろう。
でも、彼の職場は戦場なのだ。
一瞬の判断ミスや油断で命を落とす事もよくある事実。
特殊部隊という事もあり、機密しかない身分。
ましてや隊長だ。
部下の命も預らねばならず、その重圧は計り知れない。
世界のどこに居て、生きているか、怪我は無いのかすらもわからない。携帯だって繋がらないし、任務がどれくらいなのか、次の任務は何なのかも分からず、緊急召集もあり、一年の殆ど家に居ない。
そんな人をよく好きになれたわね、と友人のには笑われたっけ。
私も友人からそんな話聞いたら同じこと言うだろうな。
でも、彼の意志を否定したくなかったし、何より彼とゼノの夢を応援したかった。
ゼノの作ったロケットでスタンが宇宙に行く夢を。ゼノからは「君もその頃には僕の優秀な右腕として隣に居るんだよ」なんて言われたっけ。
実際、空軍トップのパイロットがNASAの宇宙飛行士になるケースは多い。
その夢をかなえる為には、私の不安で邪魔をしたくなかったのだ。
ずっと小さな頃からゼノと3人で育ったせいか、一緒に居るのが当たり前だった。
けれど、年頃にもなると上級生だったスタンとゼノとは会える頻度が減ったっけ。
ゼノが大学で忙しいのは仕方ないと思ったけれど、スタンはヤンチャな友達と遊んでるみたいで中々会えなかった事を覚えてる。
スタンが入隊する少し前、雨の倉庫でスタンから告白された時、私凄く嬉しかった。
でも、入隊するって聞いてたから正直「今さら何で?」とも思ったわ。
だって私、小さい時からスタンの事ずっと好きだったのよ。
でもスタンは私に興味無さそうで、年頃には女遊びしている話は学校の噂で嫌って程聞いてたし、実際朝帰りしていたのも目撃していたから、好きな気持ちを忘れなきゃて必死に隠してた。
想いが通じ会ってから入隊までは、幸せしかない時間だったわ。
所謂恋人らしい時を過ごせていたの。
毎日の様にスタンの送迎用付きデート。
食事、映画、舞台鑑賞、買い物、ドライブ、ピクニック、公園、射撃訓練場、たまにゼノと3人でご飯に行った事も。
とにかく楽しくて、甘くて幸せな、沢山の思い出を作ったわ。
初めてのデートでキスして、3回目のデートで初めて夜を共にして。
初めてする時に性病の証明書を出してきたのは、正直驚いてしまったけれど。
後日その話をゼノにしたら「スタンは遊び慣れているのに、行動はまるで初めて恋している男の子だ。それは君に本気だからだろうね」と言われたっけ。
楽しい時間には限りがあって、それからスタンは入隊し、会える期間は少なくなった。
そのかわり、帰還後は甘い恋人との幸せな時間を過ごす日々。
だから不安に押し潰されないように、寂しくならない様に、私勉強頑張って、飛び級や転院をして色々な科学分野に精通したの。
今じゃアメリカの科学分野の中でも、ちょっとした有名人になった。
正式にゼノの助手をやってほしいと、NASAからの通知もきているが、上層部が拒んでいると聞いている。
その頃スタンも特殊部隊に抜擢され、お互い順調に邁進していた矢先。
不穏な手紙が投函されていた。
中には写真が数種類。
私が窓際でスタンと電話している姿、買い物している姿、出勤する時の姿などが盗撮されていたのだ。
最初は私のストーカーだと思ったが、最後の1枚で確信する事になる。
最後の1枚、それはスタンと私が玄関先で抱き合い額を寄せ合う写真。私顔の部分は切り取られていた。
ゾッとしてその場に写真をぶちまけ、スタンに電話した。
普段は繋がりもしないが、今日はコール音がした。
…でも、私は自ら直ぐに切ってしまった。
彼に助けてと言っても、彼はここには直ぐ来れないのが分かっていたからだ。
恐怖で自然と溢れる涙。
震える足。
その時、着信を知らせるメロディラインが部屋に鳴り響く。
ビクッと驚き、画面を見れば、スタンからだった。
ここで出ないのは不自然と思い、涙を無理矢理引っ込め震えを鎮める。
深呼吸して、電話に出た。
スタン「…Honey ?」
Honey 「スタン、ごめんなさい。お仕事中よね?」
スタン「…いや、今少しなら平気。どうしたんよ?」
Honey 「…ただ、怖い夢見てしまっただけなの。私ったらまだ寝惚けてるわね。忙しいのに、ごめんなさい。任務気をつけて。帰り待っているわ。またね」
Honey は一方的に切った為、内心気づかれたかな…と思ったが、仕方ないと言い聞かせ、その場は終わった。
写真を見ながらどうしたものか考えていた時、来客を知らせるチャイムがなった。深夜程ではないが予定のない来客に恐怖を覚え、驚きのあまり再度写真をぶちまけてしまったが、不可抗力だ。
恐怖の中、そっとドアに近づくと知っている声がした。
耳を澄ますと、知った声が私を呼んでいた。
Honey 「…ゼノ?」
ゼノ「やぁ、Honey。 少し失礼するよ」
何やら段ボールを持参したゼノの勢いに押され、部屋に上がり込むゼノ。
ゼノは勢い良く入ってきたものの、一点を見つめ途中でピタッと止まった。
ゼノ「…Honey、アレは… 」
アレとは、先程Honey がチャイムに驚き撒き散らした写真がテーブルに広がっていた。
Honey 「…ゼノ…」
言葉なく立ち尽くすHoney
ゼノ「…全く…スタンから電話を貰って大至急Honey の元に行ってくれないかと言われて来てみれば…この写真、撮られたのはいつからだ?」
会話しつつも持参した箱から手際良く機材を取り出し始めたゼノ。
窓枠や玄関、植木に至るまで慣れた手付きで作業をしている。
私は次から次へと矢継早に出される質問に、あわわッとしながら答えるのみだった。
そしてスタンが戻るまで、ゼノ宅に泊まる様指示を受け、ゼノに移送(送迎)されたのだ。
ゼノの家で寝泊まりする事、2週間。
ゼノは私の部屋で寝泊まりしているそう。
詳細は教えてくれなかったが、知った間柄なので特に不審はなかった。
お風呂からあがりソファーで本を読んでいると、コンコンとノック音がした。顔をあげるとリビングの入口にスタンが立っていた。
嬉しさのあまり、少女の様に走ってスタンに抱きついた。
Honey 「…!!…スタン!お帰りなさい。」
スタン「あぁ。ただいま、Honey 」
私をギュッと抱きしめ返してくれる腕、重なる唇、ギュッと再び抱きつけばスタンの香りがする胸元、彼が生きて戻って来てくれた安心感と、会えた嬉しさを実感させてくれた。
スタン「本当は1日前に帰還して解散してたんよ。…迎えが遅くなっちまって悪かった。」
Honey 「…?」
スタンが帰還後、直接私に会いに来なかったのは珍しい。…というか初めてだ。
スタン「フッ…何の事かわかんねえって顔」
Honey 「…???」
スタン「遅くなっちまったのは不本意だが、これでケリはつけてきたぜ。」
スタンはHoney の腰に手を回したまま、上半身を少し離すと胸元のポケットから畳まれた紙を出してきた。
Honey 「…FBIの逮捕状と接近禁止令?!…え?」
スタンのストーカーと思われる知らない女性の名前が書かれた書類が数枚。
驚いてスタンを見れば、彼は真剣な眼差しで私を見ていた。
スタン「…あの電話でHoney に何かあった事は分かったかんね。ゼノに監視カメラ配置してもらって、俺が帰還と同時に告訴したんよ。ゼノがHoneyん家に仕掛けたカメラ映像が証拠になったのと、特殊部隊の身元が割れる一大事だと上に掛け合った甲斐あって、国の判断は早かったぜ。即逮捕出来たかんね。
だが…一番にHoney には謝らなきゃならねえ。
…怖い思いさせて、悪かった。」
Honey 「…スタン…」
安心から溢れた涙はスタンの手によって受け止められ、更にギュッと抱きしめられた。
スタンは過去の経緯と、心境を誠実にHoney へ説明してくれた。
そしてスタンは、少しだけ私を離すと、私の左手をとり跪き手にキスを落とすと
スタン「…Honey 、俺はそばに居ることが出来ねえが、いつだってHoney を一番に愛してる。限られたそばに居る時間を、一緒に過ごしたいんよ。だから…俺と結婚してくんね?」
Honey 「…スタン…ええ…もちろんよ」
Honey の頬を涙がスッと溢れたが、それはスタンの手により受け止められ、キツく抱きしめられた。
スタンがポケットから出したダイヤの指輪をHoney の左手にそっとはめる。
スタン「Honey…愛してる 」
Honey 「スタン…私もスタンを愛してるわ」
熱い視線が交わり、唇が触れる直前、「コホンッ」とわざとらしい咳払いが聞こえた。
ゼノ「婚約おめでとう、Honey 、スタン。実に喜ばしく盛り上がっている所悪いが、ここは僕の家でね。」
スタンが邪魔だと言わんばかりの鋭い視線を送るも、慣れたものだと気にしないゼノ。
私は丁重にゼノへストーカー撃退のお礼を伝えたが、スタンに連れられ帰宅した。
「大した事はしていないさ」とゼノは言っていたが、私達を見送ったその背中は親友達の婚約の嬉しさが滲み出ていた気がした。
車を走らせるスタンの助手席で、異変に気づいたHoney。
Honey 「ねぇ…スタン、どこか寄るの?家と方向違うけれど…」
スタン「ん?…あってんよ。」
そうして着いたのは、高セキュリティな住宅区画。訳のわからない私を余所にスタンは私をエスコートし部屋に招き入れると…
見慣れた家具と私の家にあった物、スタンの家にあった家具や物達が綺麗にセッティングされていた。
Honey 「…!!…え?…スタン…ここって…」
スタン「新居にようこそ、My fiancee」
私の肩を抱き、ウィンクしてみせたスタン。
手に渡されたのは部屋の鍵。
ソファーに座る様促され、状況を飲み込めていない私は素直にポスンッと座った。
スタンがコーヒーを入れてくれるまで、キョロキョロしていた私を見て「借りてきた猫みてえだ」とクスリッと笑ってたっけ。
スタンいわく、件があって同じ家には居たくないだろうと思っての配慮と、婚約は前々から考えていて一緒に住む事も決めていた事、防犯面やお互いの職場立地を考えて決めたと言っていた。
それはもう世界一幸せだと思えたわ。
だってこんなにも大好きな婚約者と家に帰れば会える幸せな空間なのだから。
それから私達は幸せな日々を過ごし、スタンは最年少で特殊部隊隊長に。
私も学会などで順調に実績を積んでいた。
そんなある日、職場に電話が入る。
取り次いでくれた人いわく知らない名前だが、出ると無言の奇妙な電話。
それが連日続き、職場でも流石に噂となっていた。
それは私を引き抜こうと画策していたゼノにも耳に届く程に。
ゼノ「…Honey、最近変な噂を聞いたが、確かなのかね?」
Honey「あー。アレね。女性科学者にはよくあるやつって皆から励まされたわ。…もう、本当嫌になっちゃうわよね…でも、ゼノ、スタンには言わないで!余計な心配かけたくないから!約束よ!…それにしてもゼノ、最近また一層ダークサイドが強くなった?」
ゼノ「…君の言うダークサイドが科学に理解のない愚者共を見下す意味なら、そうだと断言できるね。大体人類がまた一歩科学を進化させる事が出来るチャンスだというのに…○△□✕※」
ゼノのマシンガントークを受け流しつつ、携帯の呼び出しに答える。
日本の末広高校からの連絡だった。
「短期間で構わないから、天才高校生の科学顧問をにしてくれないか」
ゼノも話を聞いていた様だが、私は一度断った。
ただ先方が検討だけでもと言われた為、一旦保留とし、その場は終わった。
ゼノ「話は変わるが、式の準備は順調かね?…先日のドレス選びでは直前にスタンへ召集がかかったと聞いたが…」
Honeyの表情が少し曇った。
Honey「…その日は…衣装合わせキャンセルしたの…仕方ない事だし、スタンと相談して式の日どりは決めたけど、お互い忙しいから…延期…するのも有りだと思って…」
今思うと、多少無理していたのかもしれない。任務から帰ってきたスタンの癒しの場である為にって、出来るフィアンセを演じていたのかもしれない。
大好きな彼と、両思いの彼氏彼女になって、はれて婚約者となったのに…これ以上何を望むというのだろう。
スタンと過ごす日々は幸せで、その為に会えない時も頑張れているのに、もっとずっと一緒にいてほしいと、日に日に欲張りになっていく自分が嫌になっていた。そんな自分を出したくなくて、足掻いて苦しくなっていた。
ゼノ「…Honey…もしかしたら君は、マリッジブルーかもしれないね」
Honey「…マリッジブルー?!」
ゼノ「君だって耳にした事はあるだろう。よくある話さ。」
Honey「確か、対策は日常から離れて気分転換だったっけ……日本の話、受けてみようかな。短期間ならゼノとも職場ともオンラインで仕事調整出来るしね」
そうして、私は式準備に影響がない範囲でスケジュール調整し日本へ旅立った。
スタンにはメールしておいたものの、携帯の電源入れ忘れて見てない可能性もあった為に手紙を書いておいた。
ラブレターみたいで、少し照れたが2週間で戻る予定だと書いておいた。
式準備や職場から離れて、一回自分をリセットする。そしたら、またスタンを笑顔で迎える元の自分を取り戻せる。そう信じて、私は飛行機に乗り込んだ。
顧問開始日より早く日本入りしたHoneyは日本を満喫した。
京都、奈良など有名観光地を巡り、東京入りの前日には箱根の大涌谷により、高級温泉旅館に宿泊して羽を伸ばした。
非日常体験で癒され、本来の自分を取り戻した気がする。
すると、ゼノから電話がかかってきた。
PCを見る様指示され、送られてきたスズメの写真と研究結果を聞いた。
この件は以前からゼノから話は聞いており、これから祭典で大々的に発表するから知っておいてほしいとの事だった。
生き物が生きたまま石化…ファンタジー要素が強いものの、新兵器攻撃実験説など色々考えられたが、今は私リフレッシュ中の身。
軍の特殊部隊を緊急召集したと言っていたから、ゼノとスタンは会えるのだろう。
スタンに宜しく。とだけ伝えると、私は東京に向かうべく宿を出る。
駅前で、深い帽子を被った女の人とぶつかった。
ドスッーー
一瞬何が起きているのか分からなかった。
強い衝撃を受けた後、数秒遅れて、腹部から焼ける様熱いな強い痛みが走ったと同時に、足元に赤く垂れる血液。余りの痛みに倒れ込み。道路に広がる血の海を眺めながら、頭は酷く冷静で、悲鳴や騒音は耳に届かなかった。
あ、動脈いったな。
出血量からして救急でも間に合わないのが自分で分かってしまう科学脳のお陰か恐怖はなかった。
薄れゆく意識の中、頭に浮かぶのはスタンの事。
思い出される顔は、どれも幸せな瞬間ばかり。
少し照れながら私を見つめるスタン
優しく目を細めたスタン
愛しい想いが溢れた目をしているスタン
嬉しそうに笑いかけるスタン
震える血だらけの手で左手の婚約指輪を撫でる。
ーー最後に、会いたかったな。
スタン。
Honeyの目から一筋の涙が溢れ落ちた瞬間、私の心臓は動きを止めた。
そして数分後、全人類は石化した。
そう日本の高校から連絡をもらった時、最初はお断りしようかと思っていた。
私には、特殊部隊隊長をしている婚約者が居て、今も任務に出ている。
いつ任務から戻るか分からない。
でも、いつ戻ってもいい様に待っていたいから。
不安が無いわけではない。
寧ろ不安しかないと言った方が正しい。
ヒーローと言えば聞こえはいいだろう。
でも、彼の職場は戦場なのだ。
一瞬の判断ミスや油断で命を落とす事もよくある事実。
特殊部隊という事もあり、機密しかない身分。
ましてや隊長だ。
部下の命も預らねばならず、その重圧は計り知れない。
世界のどこに居て、生きているか、怪我は無いのかすらもわからない。携帯だって繋がらないし、任務がどれくらいなのか、次の任務は何なのかも分からず、緊急召集もあり、一年の殆ど家に居ない。
そんな人をよく好きになれたわね、と友人のには笑われたっけ。
私も友人からそんな話聞いたら同じこと言うだろうな。
でも、彼の意志を否定したくなかったし、何より彼とゼノの夢を応援したかった。
ゼノの作ったロケットでスタンが宇宙に行く夢を。ゼノからは「君もその頃には僕の優秀な右腕として隣に居るんだよ」なんて言われたっけ。
実際、空軍トップのパイロットがNASAの宇宙飛行士になるケースは多い。
その夢をかなえる為には、私の不安で邪魔をしたくなかったのだ。
ずっと小さな頃からゼノと3人で育ったせいか、一緒に居るのが当たり前だった。
けれど、年頃にもなると上級生だったスタンとゼノとは会える頻度が減ったっけ。
ゼノが大学で忙しいのは仕方ないと思ったけれど、スタンはヤンチャな友達と遊んでるみたいで中々会えなかった事を覚えてる。
スタンが入隊する少し前、雨の倉庫でスタンから告白された時、私凄く嬉しかった。
でも、入隊するって聞いてたから正直「今さら何で?」とも思ったわ。
だって私、小さい時からスタンの事ずっと好きだったのよ。
でもスタンは私に興味無さそうで、年頃には女遊びしている話は学校の噂で嫌って程聞いてたし、実際朝帰りしていたのも目撃していたから、好きな気持ちを忘れなきゃて必死に隠してた。
想いが通じ会ってから入隊までは、幸せしかない時間だったわ。
所謂恋人らしい時を過ごせていたの。
毎日の様にスタンの送迎用付きデート。
食事、映画、舞台鑑賞、買い物、ドライブ、ピクニック、公園、射撃訓練場、たまにゼノと3人でご飯に行った事も。
とにかく楽しくて、甘くて幸せな、沢山の思い出を作ったわ。
初めてのデートでキスして、3回目のデートで初めて夜を共にして。
初めてする時に性病の証明書を出してきたのは、正直驚いてしまったけれど。
後日その話をゼノにしたら「スタンは遊び慣れているのに、行動はまるで初めて恋している男の子だ。それは君に本気だからだろうね」と言われたっけ。
楽しい時間には限りがあって、それからスタンは入隊し、会える期間は少なくなった。
そのかわり、帰還後は甘い恋人との幸せな時間を過ごす日々。
だから不安に押し潰されないように、寂しくならない様に、私勉強頑張って、飛び級や転院をして色々な科学分野に精通したの。
今じゃアメリカの科学分野の中でも、ちょっとした有名人になった。
正式にゼノの助手をやってほしいと、NASAからの通知もきているが、上層部が拒んでいると聞いている。
その頃スタンも特殊部隊に抜擢され、お互い順調に邁進していた矢先。
不穏な手紙が投函されていた。
中には写真が数種類。
私が窓際でスタンと電話している姿、買い物している姿、出勤する時の姿などが盗撮されていたのだ。
最初は私のストーカーだと思ったが、最後の1枚で確信する事になる。
最後の1枚、それはスタンと私が玄関先で抱き合い額を寄せ合う写真。私顔の部分は切り取られていた。
ゾッとしてその場に写真をぶちまけ、スタンに電話した。
普段は繋がりもしないが、今日はコール音がした。
…でも、私は自ら直ぐに切ってしまった。
彼に助けてと言っても、彼はここには直ぐ来れないのが分かっていたからだ。
恐怖で自然と溢れる涙。
震える足。
その時、着信を知らせるメロディラインが部屋に鳴り響く。
ビクッと驚き、画面を見れば、スタンからだった。
ここで出ないのは不自然と思い、涙を無理矢理引っ込め震えを鎮める。
深呼吸して、電話に出た。
スタン「…Honey ?」
Honey 「スタン、ごめんなさい。お仕事中よね?」
スタン「…いや、今少しなら平気。どうしたんよ?」
Honey 「…ただ、怖い夢見てしまっただけなの。私ったらまだ寝惚けてるわね。忙しいのに、ごめんなさい。任務気をつけて。帰り待っているわ。またね」
Honey は一方的に切った為、内心気づかれたかな…と思ったが、仕方ないと言い聞かせ、その場は終わった。
写真を見ながらどうしたものか考えていた時、来客を知らせるチャイムがなった。深夜程ではないが予定のない来客に恐怖を覚え、驚きのあまり再度写真をぶちまけてしまったが、不可抗力だ。
恐怖の中、そっとドアに近づくと知っている声がした。
耳を澄ますと、知った声が私を呼んでいた。
Honey 「…ゼノ?」
ゼノ「やぁ、Honey。 少し失礼するよ」
何やら段ボールを持参したゼノの勢いに押され、部屋に上がり込むゼノ。
ゼノは勢い良く入ってきたものの、一点を見つめ途中でピタッと止まった。
ゼノ「…Honey、アレは… 」
アレとは、先程Honey がチャイムに驚き撒き散らした写真がテーブルに広がっていた。
Honey 「…ゼノ…」
言葉なく立ち尽くすHoney
ゼノ「…全く…スタンから電話を貰って大至急Honey の元に行ってくれないかと言われて来てみれば…この写真、撮られたのはいつからだ?」
会話しつつも持参した箱から手際良く機材を取り出し始めたゼノ。
窓枠や玄関、植木に至るまで慣れた手付きで作業をしている。
私は次から次へと矢継早に出される質問に、あわわッとしながら答えるのみだった。
そしてスタンが戻るまで、ゼノ宅に泊まる様指示を受け、ゼノに移送(送迎)されたのだ。
ゼノの家で寝泊まりする事、2週間。
ゼノは私の部屋で寝泊まりしているそう。
詳細は教えてくれなかったが、知った間柄なので特に不審はなかった。
お風呂からあがりソファーで本を読んでいると、コンコンとノック音がした。顔をあげるとリビングの入口にスタンが立っていた。
嬉しさのあまり、少女の様に走ってスタンに抱きついた。
Honey 「…!!…スタン!お帰りなさい。」
スタン「あぁ。ただいま、Honey 」
私をギュッと抱きしめ返してくれる腕、重なる唇、ギュッと再び抱きつけばスタンの香りがする胸元、彼が生きて戻って来てくれた安心感と、会えた嬉しさを実感させてくれた。
スタン「本当は1日前に帰還して解散してたんよ。…迎えが遅くなっちまって悪かった。」
Honey 「…?」
スタンが帰還後、直接私に会いに来なかったのは珍しい。…というか初めてだ。
スタン「フッ…何の事かわかんねえって顔」
Honey 「…???」
スタン「遅くなっちまったのは不本意だが、これでケリはつけてきたぜ。」
スタンはHoney の腰に手を回したまま、上半身を少し離すと胸元のポケットから畳まれた紙を出してきた。
Honey 「…FBIの逮捕状と接近禁止令?!…え?」
スタンのストーカーと思われる知らない女性の名前が書かれた書類が数枚。
驚いてスタンを見れば、彼は真剣な眼差しで私を見ていた。
スタン「…あの電話でHoney に何かあった事は分かったかんね。ゼノに監視カメラ配置してもらって、俺が帰還と同時に告訴したんよ。ゼノがHoneyん家に仕掛けたカメラ映像が証拠になったのと、特殊部隊の身元が割れる一大事だと上に掛け合った甲斐あって、国の判断は早かったぜ。即逮捕出来たかんね。
だが…一番にHoney には謝らなきゃならねえ。
…怖い思いさせて、悪かった。」
Honey 「…スタン…」
安心から溢れた涙はスタンの手によって受け止められ、更にギュッと抱きしめられた。
スタンは過去の経緯と、心境を誠実にHoney へ説明してくれた。
そしてスタンは、少しだけ私を離すと、私の左手をとり跪き手にキスを落とすと
スタン「…Honey 、俺はそばに居ることが出来ねえが、いつだってHoney を一番に愛してる。限られたそばに居る時間を、一緒に過ごしたいんよ。だから…俺と結婚してくんね?」
Honey 「…スタン…ええ…もちろんよ」
Honey の頬を涙がスッと溢れたが、それはスタンの手により受け止められ、キツく抱きしめられた。
スタンがポケットから出したダイヤの指輪をHoney の左手にそっとはめる。
スタン「Honey…愛してる 」
Honey 「スタン…私もスタンを愛してるわ」
熱い視線が交わり、唇が触れる直前、「コホンッ」とわざとらしい咳払いが聞こえた。
ゼノ「婚約おめでとう、Honey 、スタン。実に喜ばしく盛り上がっている所悪いが、ここは僕の家でね。」
スタンが邪魔だと言わんばかりの鋭い視線を送るも、慣れたものだと気にしないゼノ。
私は丁重にゼノへストーカー撃退のお礼を伝えたが、スタンに連れられ帰宅した。
「大した事はしていないさ」とゼノは言っていたが、私達を見送ったその背中は親友達の婚約の嬉しさが滲み出ていた気がした。
車を走らせるスタンの助手席で、異変に気づいたHoney。
Honey 「ねぇ…スタン、どこか寄るの?家と方向違うけれど…」
スタン「ん?…あってんよ。」
そうして着いたのは、高セキュリティな住宅区画。訳のわからない私を余所にスタンは私をエスコートし部屋に招き入れると…
見慣れた家具と私の家にあった物、スタンの家にあった家具や物達が綺麗にセッティングされていた。
Honey 「…!!…え?…スタン…ここって…」
スタン「新居にようこそ、My fiancee」
私の肩を抱き、ウィンクしてみせたスタン。
手に渡されたのは部屋の鍵。
ソファーに座る様促され、状況を飲み込めていない私は素直にポスンッと座った。
スタンがコーヒーを入れてくれるまで、キョロキョロしていた私を見て「借りてきた猫みてえだ」とクスリッと笑ってたっけ。
スタンいわく、件があって同じ家には居たくないだろうと思っての配慮と、婚約は前々から考えていて一緒に住む事も決めていた事、防犯面やお互いの職場立地を考えて決めたと言っていた。
それはもう世界一幸せだと思えたわ。
だってこんなにも大好きな婚約者と家に帰れば会える幸せな空間なのだから。
それから私達は幸せな日々を過ごし、スタンは最年少で特殊部隊隊長に。
私も学会などで順調に実績を積んでいた。
そんなある日、職場に電話が入る。
取り次いでくれた人いわく知らない名前だが、出ると無言の奇妙な電話。
それが連日続き、職場でも流石に噂となっていた。
それは私を引き抜こうと画策していたゼノにも耳に届く程に。
ゼノ「…Honey、最近変な噂を聞いたが、確かなのかね?」
Honey「あー。アレね。女性科学者にはよくあるやつって皆から励まされたわ。…もう、本当嫌になっちゃうわよね…でも、ゼノ、スタンには言わないで!余計な心配かけたくないから!約束よ!…それにしてもゼノ、最近また一層ダークサイドが強くなった?」
ゼノ「…君の言うダークサイドが科学に理解のない愚者共を見下す意味なら、そうだと断言できるね。大体人類がまた一歩科学を進化させる事が出来るチャンスだというのに…○△□✕※」
ゼノのマシンガントークを受け流しつつ、携帯の呼び出しに答える。
日本の末広高校からの連絡だった。
「短期間で構わないから、天才高校生の科学顧問をにしてくれないか」
ゼノも話を聞いていた様だが、私は一度断った。
ただ先方が検討だけでもと言われた為、一旦保留とし、その場は終わった。
ゼノ「話は変わるが、式の準備は順調かね?…先日のドレス選びでは直前にスタンへ召集がかかったと聞いたが…」
Honeyの表情が少し曇った。
Honey「…その日は…衣装合わせキャンセルしたの…仕方ない事だし、スタンと相談して式の日どりは決めたけど、お互い忙しいから…延期…するのも有りだと思って…」
今思うと、多少無理していたのかもしれない。任務から帰ってきたスタンの癒しの場である為にって、出来るフィアンセを演じていたのかもしれない。
大好きな彼と、両思いの彼氏彼女になって、はれて婚約者となったのに…これ以上何を望むというのだろう。
スタンと過ごす日々は幸せで、その為に会えない時も頑張れているのに、もっとずっと一緒にいてほしいと、日に日に欲張りになっていく自分が嫌になっていた。そんな自分を出したくなくて、足掻いて苦しくなっていた。
ゼノ「…Honey…もしかしたら君は、マリッジブルーかもしれないね」
Honey「…マリッジブルー?!」
ゼノ「君だって耳にした事はあるだろう。よくある話さ。」
Honey「確か、対策は日常から離れて気分転換だったっけ……日本の話、受けてみようかな。短期間ならゼノとも職場ともオンラインで仕事調整出来るしね」
そうして、私は式準備に影響がない範囲でスケジュール調整し日本へ旅立った。
スタンにはメールしておいたものの、携帯の電源入れ忘れて見てない可能性もあった為に手紙を書いておいた。
ラブレターみたいで、少し照れたが2週間で戻る予定だと書いておいた。
式準備や職場から離れて、一回自分をリセットする。そしたら、またスタンを笑顔で迎える元の自分を取り戻せる。そう信じて、私は飛行機に乗り込んだ。
顧問開始日より早く日本入りしたHoneyは日本を満喫した。
京都、奈良など有名観光地を巡り、東京入りの前日には箱根の大涌谷により、高級温泉旅館に宿泊して羽を伸ばした。
非日常体験で癒され、本来の自分を取り戻した気がする。
すると、ゼノから電話がかかってきた。
PCを見る様指示され、送られてきたスズメの写真と研究結果を聞いた。
この件は以前からゼノから話は聞いており、これから祭典で大々的に発表するから知っておいてほしいとの事だった。
生き物が生きたまま石化…ファンタジー要素が強いものの、新兵器攻撃実験説など色々考えられたが、今は私リフレッシュ中の身。
軍の特殊部隊を緊急召集したと言っていたから、ゼノとスタンは会えるのだろう。
スタンに宜しく。とだけ伝えると、私は東京に向かうべく宿を出る。
駅前で、深い帽子を被った女の人とぶつかった。
ドスッーー
一瞬何が起きているのか分からなかった。
強い衝撃を受けた後、数秒遅れて、腹部から焼ける様熱いな強い痛みが走ったと同時に、足元に赤く垂れる血液。余りの痛みに倒れ込み。道路に広がる血の海を眺めながら、頭は酷く冷静で、悲鳴や騒音は耳に届かなかった。
あ、動脈いったな。
出血量からして救急でも間に合わないのが自分で分かってしまう科学脳のお陰か恐怖はなかった。
薄れゆく意識の中、頭に浮かぶのはスタンの事。
思い出される顔は、どれも幸せな瞬間ばかり。
少し照れながら私を見つめるスタン
優しく目を細めたスタン
愛しい想いが溢れた目をしているスタン
嬉しそうに笑いかけるスタン
震える血だらけの手で左手の婚約指輪を撫でる。
ーー最後に、会いたかったな。
スタン。
Honeyの目から一筋の涙が溢れ落ちた瞬間、私の心臓は動きを止めた。
そして数分後、全人類は石化した。