原作沿い
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人類が初めて石化光線を受けた後、スタンリー・スナイダーは石化した意識のみの世界で、早くも感覚で意識を保っていた。
時間はたっぷりとあった。
彼はふと、懐かしい事を思い出していた。
やけに鮮やかなあの頃の空気や光まで、今すぐ思い出せる。
俺がHoneyに初めて会ったあの日。
今でも、はっきり脳裏に焼き付いてる。
スタン、ゼノ 11才、Honey 9才
当時の俺は、すでに地元の有名なガキだった。
見た目から周囲のやっかみ、猫をかぶって寄ってくる異性、思春期も手伝って、結構なヤンチャをしていた。
そんな時、近所の元軍属の教官やってたオヤジに目をかけられて、年齢詐称まがいの訓練を受けていた。射撃もその1つだ。
新聞に載ったのも、なんてことない射撃大会で全種目トップ取ったってだけの話だった。
数日後、その地元紙の記事を読んで、
まだ小柄で、けど瞳だけ妙に意思の強い女の子が現れた。
Honey「こんにちは。貴方にお願いがあるの。私の隣に住んでいる科学バカが、狙撃手を探してて、私は、その手伝いをしてるの」
…今思い返すと、とんでもない第一声だな。
でも、その口調が妙に堂々としてて、
そしてその科学バカって言い方が…やけに愛情を含んでた。
そのあと後ろから来たゼノが、
「余計なことを勝手に言うんじゃない!」とかなんとか小言を飛ばしてたな。
でも俺は、そいつらのやりとりに妙に引き込まれた。
Honeyは俺より二つ下だったのに、
言葉は大人びてて、けどどこか無邪気で。
小さな体で、でかい夢を真っすぐ語る姿が、なんか、ちょっとズルいくらい眩しかった。
最初の印象?
そうだな…確か、心の中でこう思った。
この子、俺の人生に深く関わってくるなってな。
それが、ただの勘じゃなかったと分かったのは、
ずっと後だったが。
その日からだった。
俺が年齢詐称まがいの訓練の合間に、ゼノの家の裏庭に回るようになったのは。
目的は、科学でも射撃でもないHoneyがいたからだ。
だからHoney。
アンタが「お兄ちゃんが増えたみたいで嬉しい!」なんて笑うたびに、俺は心の中で苦笑いしてた。
「いやいや、お前…俺にとっては妹なんかじゃねぇかんな。最初っから、ずっと特別だったんだぜ」ってな。
その後も、俺はハイスクールで派手な噂ばっかり流れてる男だった。
誰と付き合っただの、放課後どこに消えただの、勝手に尾ひれのついた話が飛び交ってたのは事実だ。
けどな…
ひとつだけ、正確に伝えておきたいことがある。
俺は、あの頃
誰のことも、本気では見てなかった。
どれだけ女に囲まれても、
誰と付き合ったふりをしても、
夜が明ければ全部忘れていいような関係ばかりだった。
なぜかって?
理由は一つだ。
「俺の本音が向いてるのは、たったひとりだったから。」
Honey。
アンタがゼノと違って地元に残って、勉強に打ち込んで、必死に何かを背負ってちゃんと前を向いてたのを、俺はずっと、遠くから見てた。
たまにしか会えないその短い時間でさえ、Honeyが他の誰よりも眩しかった。
久しぶりに会った時
Honey「スタン、どんどん大人になってしまって寂しいな…」
と言われた時にはちょっと、ズルいくらい心を揺さぶられた。
けどな…
俺があの頃のHoneyに近づかなかったのは、たったひとつ。
「Honeyが、俺にとって軽い扱いできねぇ女だったからだ。」
もし近づいたら、
俺は本気で堕ちる。
全部失っても、手を伸ばしてしまう。
だが、そのときの俺は
まだHoneyの隣に立てる器じゃなかった。
そう思ってた。
だから、近寄らなかった。
モテてるふりをして、一通り遊んだ。
本当に見られたくなかった俺の弱さを隠して。
ゼノには早い段階からバレてたが、アイツもそこは気をつかって、たまにお節介な助言程度だった。
だがそれも、限界を迎えた。
高校卒業間近の、雨の日
あの雨の日のことは、まるで昨日の事の様に、今でも俺の心に深く残っている。
空が突然泣き出したみたいな午後で、
傘なんてどちらも持ってなくて、
お互い「まぁ、走ればどうにかなるか」なんて軽く言い合っていた。
ずぶ濡れになった服と冷たい風に、笑いも途切れて。
たまたま見つけた小さな資材倉庫。
雨音だけが響くその薄暗い空間で、
俺たちは肩を寄せるように座ってた。
Honeyの髪から、ポタポタと滴る雨。
唇は青いが、凛とした瞳。
何を言うわけでもないその沈黙に、
俺の中で何かが決壊した。
もう逃げない。
もう誤魔化せない。
スタン「Honey…俺、アンタが好きだ。」
気づけば、そう口にしてた。
衝動でも、気まぐれでもなかった。
その言葉は、ずっと胸の中で燻っていた本当の想いだった。
Honeyが俺を見つめ返して、
一瞬、何か言いかけて…でも言葉を止めたその時、俺は分かってた。
「軍に入るって決めてるのに、
そんな俺が好きだなんて、言う資格があるか?」
アンタがそう思って当然だ。
だが、俺にはあの瞬間、もう二度とチャンスは来ないと直感でわかった。
黙ってる方が、よっぽど罪だと自覚していた。
「…分かってんよ。 俺がこれからどんな場所に行くんか、アンタが一番分かってんよな。 だが、好きになっちまったもんはどうしようもねぇ。」
するとHoneyが小さく笑って、でもちょっとだけ震えた声で、こう言った。
「…私もね、スタンがずっと前から…好き。」
Honey。
その言葉を聞けたから、俺は軍に入るとき、後ろを振り返らずに済んだ。
どんな厳しい訓練も、どんな任務も、心の奥にあのとき受け取った、Honeyの気持ちが支えとなり、耐えられたし、生きて帰ってこられた。
Honeyが研究の世界で活躍していた頃、俺は、特殊部隊の最年少隊長の肩書きを背負うことになった。
本部での命令を受けたとき、周囲の連中は「順当だ」「当然の実力」なんて口では言ってたが、正直、反発もあった。
年齢が若すぎる、キャリアが浅い、癖が強い、感情が見えない…影ではそう囁かれてたのも知っている。
だが、俺は揺らがなかった。
俺にはひとつ、揺るがない信念があった。
それは、Honeyが見てくれてるっつう、たった一つの事実。
Honeyが研究の最前線に立ち、昼夜問わず成果に向かって突き進んでるのを知っている。
ゼノと肩を並べる程の実力があるHoney、俺も、停滞してられないと心底思っていた。
だから、誰よりも早く起きて、誰よりも速く動いて、部下の命を背負う重圧を、全部「Honeyに恥じない男でいるため」の糧に変えた。
あの頃は正直…Honeyへ連絡を入れる余裕なんてなかった。
特殊部隊という一般部隊とは異なる極秘しかねぇ任務。
当然自宅に自由に戻る事も休みも少ない。
…寂しい想い沢山させちまった。
週末デートも、サマーバケーションも、クリスマスも、記念日も、一緒に過ごすことはかなわなかった。
それでも、Honeyが毎回出迎えてくれると甘えちまってた。
軍人と科学者。
立ってる場所も、背負ってる責任も違う。
だが、
任務の合間、ふと休憩中に届く短いメッセージや、Honeyやゼノから送信された「学会発表おめでとう」って報せを見るたび、俺は心の奥で、静かに拳を握って喜んだ。
「今に見てろ、Honey。アンタがただの初恋なんかじゃない、一生かけて守る女だって、証明してやる」ってな。
だから、特殊部隊隊長になったとき。
俺が最初に思い浮かべたのは、報告したい相手がいるってことだ。
名誉のためじゃねぇ。
権限のためでもねぇ。
ただ、誇りとしてHoneyに伝えたい。
「俺はここまで来た。隣に立てる男になったんだ」って。
それを伝えた時、Honeyは涙を溜めながら
「おめでとう」と抱き締めてくれた。
それが、俺には何よりの勲章だ。
最後にHoneyと会ったのは、いつだっただろうか。
2週間前、Honeyに見送られいつもの様に基地入口で見送る姿。それを最後に俺はHoneyに会えていない。
2週間前の任務は珍しく早くカタがつき、サプライズ帰宅となったが、Honeyの姿は家になくリビングに置き手紙があった。
中身を開けようとした時、緊急召集のアラームが鳴った。
俺は小さく舌打ちをすると、手紙を胸ポケットにしまい急いで基地に車を走らせた。
ピナクルズ公園での祭典護衛任務の召集。
キナ臭いが、命令である以上出向くしかない。
そしてゼノから話を聞き石化した訳だが…。
心配なのはHoneyの事だ。
ゼノがツバメの話の前、ゼノが話した内容が引っかかる。
ゼノ「スタン、君最近Honeyとは連絡取っていないのかい?」
スタン「ああ。任務出てる時は携帯切る規律あっかんね。Honeyがどうかしたか?」
ゼノ「…はぁ。…スタンもスタンだが、HoneyもHoneyだな。いや、最近僕も不本意なものに振り回されてはいるが…」
スタン「OK.ゼノ。何が言いたい?」
ゼノ「スタン、君が特殊部隊隊長になってからHoneyと婚約した事は親友として実に喜ばしい。
だが、君達2人には圧倒的に過ごす時間が足りないとは思わないか?
だからあんな邪魔者につまらん横槍をいれられ続け、彼女が日本に息抜きしに行ったのだ!実に嘆かわしい!」
その話はゼノが他研究者に呼ばれ終了したのだが………邪魔者?…息抜き?…日本?
邪魔者には心当たりがある。
学生時代俺が長きに渡るHoneyへの片思いを吹っ切ろうとした時期の話だ。
友人とクラブに行った時出会った、顔も名前も覚えてねえその場限りの女。
結局俺は、Honeyへの想いは忘れられず、女遊びが激しいという汚名をHoneyに持たれたっけな。
そん時の女、もといストーカーだ。
どこから聞き付けたのか、俺と付き合う事になったHoneyを特定し、以前から執拗にHoneyへ嫌がらせを繰り返してきた為、裁判所と軍の特殊部隊所属特権をフル活用し、俺達への接近禁止命令と特殊部隊の国家機密に関わる事案だと上層部を動かしFBI逮捕をくらわせて黙らせた。
その件ではゼノも心配して積極的にサポートしてくれた甲斐もあり、Honey自身も、最初は怖がってはいたが大丈夫だと言っていた。
が、不在がちな俺は念のため、俺とゼノでHoneyのリモート見守りをしていた経緯がある。
俺は任務の合間をぬって、ゼノは研究の区切りに。
ここ数日俺は任務で出ていたため近況を知らなかったが、ゼノのあの言い方だと何かあったのだろう。
チッ…あの女、今度会ったらタダじゃおかねえ。
次のワードは、息抜き。
ゼノの発言からして、随分前から異変はあったのだろう。
Honeyの性格を考えれば、帰ってきた俺に心配かけない様に黙っているだろう。
クソッ…
気付けなかった自分の油断と、不甲斐なさに怒りを覚える。
息抜きは、嫌がらせに対してで間違いねえ。
最後のキーワードは日本。
日本…?
Honeyは日系アメリカ人で、生まれは日本だが、日本に行く事は学会で過去数回程度だった。
その時スタンはリビングテーブルに置いてあった手紙の存在を思い出す。
Honeyが手紙を置いていくのは、俺が携帯を切っている事も多く、いつ帰宅するかわからないからだ。
ただ、普段は「買い物に行ってくる」だとか、「○○と飲んでくる」だとか手紙というよりはメモ書きに近いものが多い。
今日は緊急召集だった為、急いでいた事もあり胸ポケットにしまっていた封筒。
護衛任務が終わってから読もうとしたアレの中身は何だったのか…そしてゼノは口調からしてその内容を知っている。
Honeyはもしかすると、日本に行っているのか?
確かめようの無い現状。
不安だけが、過る。
幸か不幸か、石化光線はどこまで被害をもたらしたのかはわからない。
アメリカだけが攻撃対象なら、日本に行っているならワンチャンHoneyが無事という可能性もある。
ゼノがHoneyにツバメの事を話してねえって事はねえ。
2人の事は幼い頃から一番近くで見てきてっかんね。
ゼノはHoneyに会議召集する前に情報伝えてる筈だ。
珍しく弱気になる自分
スナイプすん時なら何十時間だって堪えられる。鍛え上げた持ち前の集中力も、Honeyの事となれば話は別。
チッ…らしくねえな。
無事でいてくれ、Honey。
今だって頭を過るのは、いつもと変わらず「いってらっしゃい、スタン。必ず戻ったきてね、約束よ」と言いながら笑顔で手を振るHoneyの姿だった。
時間はたっぷりとあった。
彼はふと、懐かしい事を思い出していた。
やけに鮮やかなあの頃の空気や光まで、今すぐ思い出せる。
俺がHoneyに初めて会ったあの日。
今でも、はっきり脳裏に焼き付いてる。
スタン、ゼノ 11才、Honey 9才
当時の俺は、すでに地元の有名なガキだった。
見た目から周囲のやっかみ、猫をかぶって寄ってくる異性、思春期も手伝って、結構なヤンチャをしていた。
そんな時、近所の元軍属の教官やってたオヤジに目をかけられて、年齢詐称まがいの訓練を受けていた。射撃もその1つだ。
新聞に載ったのも、なんてことない射撃大会で全種目トップ取ったってだけの話だった。
数日後、その地元紙の記事を読んで、
まだ小柄で、けど瞳だけ妙に意思の強い女の子が現れた。
Honey「こんにちは。貴方にお願いがあるの。私の隣に住んでいる科学バカが、狙撃手を探してて、私は、その手伝いをしてるの」
…今思い返すと、とんでもない第一声だな。
でも、その口調が妙に堂々としてて、
そしてその科学バカって言い方が…やけに愛情を含んでた。
そのあと後ろから来たゼノが、
「余計なことを勝手に言うんじゃない!」とかなんとか小言を飛ばしてたな。
でも俺は、そいつらのやりとりに妙に引き込まれた。
Honeyは俺より二つ下だったのに、
言葉は大人びてて、けどどこか無邪気で。
小さな体で、でかい夢を真っすぐ語る姿が、なんか、ちょっとズルいくらい眩しかった。
最初の印象?
そうだな…確か、心の中でこう思った。
この子、俺の人生に深く関わってくるなってな。
それが、ただの勘じゃなかったと分かったのは、
ずっと後だったが。
その日からだった。
俺が年齢詐称まがいの訓練の合間に、ゼノの家の裏庭に回るようになったのは。
目的は、科学でも射撃でもないHoneyがいたからだ。
だからHoney。
アンタが「お兄ちゃんが増えたみたいで嬉しい!」なんて笑うたびに、俺は心の中で苦笑いしてた。
「いやいや、お前…俺にとっては妹なんかじゃねぇかんな。最初っから、ずっと特別だったんだぜ」ってな。
その後も、俺はハイスクールで派手な噂ばっかり流れてる男だった。
誰と付き合っただの、放課後どこに消えただの、勝手に尾ひれのついた話が飛び交ってたのは事実だ。
けどな…
ひとつだけ、正確に伝えておきたいことがある。
俺は、あの頃
誰のことも、本気では見てなかった。
どれだけ女に囲まれても、
誰と付き合ったふりをしても、
夜が明ければ全部忘れていいような関係ばかりだった。
なぜかって?
理由は一つだ。
「俺の本音が向いてるのは、たったひとりだったから。」
Honey。
アンタがゼノと違って地元に残って、勉強に打ち込んで、必死に何かを背負ってちゃんと前を向いてたのを、俺はずっと、遠くから見てた。
たまにしか会えないその短い時間でさえ、Honeyが他の誰よりも眩しかった。
久しぶりに会った時
Honey「スタン、どんどん大人になってしまって寂しいな…」
と言われた時にはちょっと、ズルいくらい心を揺さぶられた。
けどな…
俺があの頃のHoneyに近づかなかったのは、たったひとつ。
「Honeyが、俺にとって軽い扱いできねぇ女だったからだ。」
もし近づいたら、
俺は本気で堕ちる。
全部失っても、手を伸ばしてしまう。
だが、そのときの俺は
まだHoneyの隣に立てる器じゃなかった。
そう思ってた。
だから、近寄らなかった。
モテてるふりをして、一通り遊んだ。
本当に見られたくなかった俺の弱さを隠して。
ゼノには早い段階からバレてたが、アイツもそこは気をつかって、たまにお節介な助言程度だった。
だがそれも、限界を迎えた。
高校卒業間近の、雨の日
あの雨の日のことは、まるで昨日の事の様に、今でも俺の心に深く残っている。
空が突然泣き出したみたいな午後で、
傘なんてどちらも持ってなくて、
お互い「まぁ、走ればどうにかなるか」なんて軽く言い合っていた。
ずぶ濡れになった服と冷たい風に、笑いも途切れて。
たまたま見つけた小さな資材倉庫。
雨音だけが響くその薄暗い空間で、
俺たちは肩を寄せるように座ってた。
Honeyの髪から、ポタポタと滴る雨。
唇は青いが、凛とした瞳。
何を言うわけでもないその沈黙に、
俺の中で何かが決壊した。
もう逃げない。
もう誤魔化せない。
スタン「Honey…俺、アンタが好きだ。」
気づけば、そう口にしてた。
衝動でも、気まぐれでもなかった。
その言葉は、ずっと胸の中で燻っていた本当の想いだった。
Honeyが俺を見つめ返して、
一瞬、何か言いかけて…でも言葉を止めたその時、俺は分かってた。
「軍に入るって決めてるのに、
そんな俺が好きだなんて、言う資格があるか?」
アンタがそう思って当然だ。
だが、俺にはあの瞬間、もう二度とチャンスは来ないと直感でわかった。
黙ってる方が、よっぽど罪だと自覚していた。
「…分かってんよ。 俺がこれからどんな場所に行くんか、アンタが一番分かってんよな。 だが、好きになっちまったもんはどうしようもねぇ。」
するとHoneyが小さく笑って、でもちょっとだけ震えた声で、こう言った。
「…私もね、スタンがずっと前から…好き。」
Honey。
その言葉を聞けたから、俺は軍に入るとき、後ろを振り返らずに済んだ。
どんな厳しい訓練も、どんな任務も、心の奥にあのとき受け取った、Honeyの気持ちが支えとなり、耐えられたし、生きて帰ってこられた。
Honeyが研究の世界で活躍していた頃、俺は、特殊部隊の最年少隊長の肩書きを背負うことになった。
本部での命令を受けたとき、周囲の連中は「順当だ」「当然の実力」なんて口では言ってたが、正直、反発もあった。
年齢が若すぎる、キャリアが浅い、癖が強い、感情が見えない…影ではそう囁かれてたのも知っている。
だが、俺は揺らがなかった。
俺にはひとつ、揺るがない信念があった。
それは、Honeyが見てくれてるっつう、たった一つの事実。
Honeyが研究の最前線に立ち、昼夜問わず成果に向かって突き進んでるのを知っている。
ゼノと肩を並べる程の実力があるHoney、俺も、停滞してられないと心底思っていた。
だから、誰よりも早く起きて、誰よりも速く動いて、部下の命を背負う重圧を、全部「Honeyに恥じない男でいるため」の糧に変えた。
あの頃は正直…Honeyへ連絡を入れる余裕なんてなかった。
特殊部隊という一般部隊とは異なる極秘しかねぇ任務。
当然自宅に自由に戻る事も休みも少ない。
…寂しい想い沢山させちまった。
週末デートも、サマーバケーションも、クリスマスも、記念日も、一緒に過ごすことはかなわなかった。
それでも、Honeyが毎回出迎えてくれると甘えちまってた。
軍人と科学者。
立ってる場所も、背負ってる責任も違う。
だが、
任務の合間、ふと休憩中に届く短いメッセージや、Honeyやゼノから送信された「学会発表おめでとう」って報せを見るたび、俺は心の奥で、静かに拳を握って喜んだ。
「今に見てろ、Honey。アンタがただの初恋なんかじゃない、一生かけて守る女だって、証明してやる」ってな。
だから、特殊部隊隊長になったとき。
俺が最初に思い浮かべたのは、報告したい相手がいるってことだ。
名誉のためじゃねぇ。
権限のためでもねぇ。
ただ、誇りとしてHoneyに伝えたい。
「俺はここまで来た。隣に立てる男になったんだ」って。
それを伝えた時、Honeyは涙を溜めながら
「おめでとう」と抱き締めてくれた。
それが、俺には何よりの勲章だ。
最後にHoneyと会ったのは、いつだっただろうか。
2週間前、Honeyに見送られいつもの様に基地入口で見送る姿。それを最後に俺はHoneyに会えていない。
2週間前の任務は珍しく早くカタがつき、サプライズ帰宅となったが、Honeyの姿は家になくリビングに置き手紙があった。
中身を開けようとした時、緊急召集のアラームが鳴った。
俺は小さく舌打ちをすると、手紙を胸ポケットにしまい急いで基地に車を走らせた。
ピナクルズ公園での祭典護衛任務の召集。
キナ臭いが、命令である以上出向くしかない。
そしてゼノから話を聞き石化した訳だが…。
心配なのはHoneyの事だ。
ゼノがツバメの話の前、ゼノが話した内容が引っかかる。
ゼノ「スタン、君最近Honeyとは連絡取っていないのかい?」
スタン「ああ。任務出てる時は携帯切る規律あっかんね。Honeyがどうかしたか?」
ゼノ「…はぁ。…スタンもスタンだが、HoneyもHoneyだな。いや、最近僕も不本意なものに振り回されてはいるが…」
スタン「OK.ゼノ。何が言いたい?」
ゼノ「スタン、君が特殊部隊隊長になってからHoneyと婚約した事は親友として実に喜ばしい。
だが、君達2人には圧倒的に過ごす時間が足りないとは思わないか?
だからあんな邪魔者につまらん横槍をいれられ続け、彼女が日本に息抜きしに行ったのだ!実に嘆かわしい!」
その話はゼノが他研究者に呼ばれ終了したのだが………邪魔者?…息抜き?…日本?
邪魔者には心当たりがある。
学生時代俺が長きに渡るHoneyへの片思いを吹っ切ろうとした時期の話だ。
友人とクラブに行った時出会った、顔も名前も覚えてねえその場限りの女。
結局俺は、Honeyへの想いは忘れられず、女遊びが激しいという汚名をHoneyに持たれたっけな。
そん時の女、もといストーカーだ。
どこから聞き付けたのか、俺と付き合う事になったHoneyを特定し、以前から執拗にHoneyへ嫌がらせを繰り返してきた為、裁判所と軍の特殊部隊所属特権をフル活用し、俺達への接近禁止命令と特殊部隊の国家機密に関わる事案だと上層部を動かしFBI逮捕をくらわせて黙らせた。
その件ではゼノも心配して積極的にサポートしてくれた甲斐もあり、Honey自身も、最初は怖がってはいたが大丈夫だと言っていた。
が、不在がちな俺は念のため、俺とゼノでHoneyのリモート見守りをしていた経緯がある。
俺は任務の合間をぬって、ゼノは研究の区切りに。
ここ数日俺は任務で出ていたため近況を知らなかったが、ゼノのあの言い方だと何かあったのだろう。
チッ…あの女、今度会ったらタダじゃおかねえ。
次のワードは、息抜き。
ゼノの発言からして、随分前から異変はあったのだろう。
Honeyの性格を考えれば、帰ってきた俺に心配かけない様に黙っているだろう。
クソッ…
気付けなかった自分の油断と、不甲斐なさに怒りを覚える。
息抜きは、嫌がらせに対してで間違いねえ。
最後のキーワードは日本。
日本…?
Honeyは日系アメリカ人で、生まれは日本だが、日本に行く事は学会で過去数回程度だった。
その時スタンはリビングテーブルに置いてあった手紙の存在を思い出す。
Honeyが手紙を置いていくのは、俺が携帯を切っている事も多く、いつ帰宅するかわからないからだ。
ただ、普段は「買い物に行ってくる」だとか、「○○と飲んでくる」だとか手紙というよりはメモ書きに近いものが多い。
今日は緊急召集だった為、急いでいた事もあり胸ポケットにしまっていた封筒。
護衛任務が終わってから読もうとしたアレの中身は何だったのか…そしてゼノは口調からしてその内容を知っている。
Honeyはもしかすると、日本に行っているのか?
確かめようの無い現状。
不安だけが、過る。
幸か不幸か、石化光線はどこまで被害をもたらしたのかはわからない。
アメリカだけが攻撃対象なら、日本に行っているならワンチャンHoneyが無事という可能性もある。
ゼノがHoneyにツバメの事を話してねえって事はねえ。
2人の事は幼い頃から一番近くで見てきてっかんね。
ゼノはHoneyに会議召集する前に情報伝えてる筈だ。
珍しく弱気になる自分
スナイプすん時なら何十時間だって堪えられる。鍛え上げた持ち前の集中力も、Honeyの事となれば話は別。
チッ…らしくねえな。
無事でいてくれ、Honey。
今だって頭を過るのは、いつもと変わらず「いってらっしゃい、スタン。必ず戻ったきてね、約束よ」と言いながら笑顔で手を振るHoneyの姿だった。
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