日常
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今夜も甘く熱く愛を確かめ合った2人。
Honeyの囁きが、まだ甘い余韻に包まれた寝室に柔らかく落ちた。
「もうすぐスタンのお誕生日ね。何がほしい?」
見上げてくるその瞳が、夜の熱を映したまま潤んでいて…俺の胸を一瞬で射抜いた。
…欲しいものなんて、目の前にあんじゃん。
思わず喉が鳴る。
腕に抱いた彼女は、甘く頬を紅潮させながらも小悪魔のように微笑む。
誕生日プレゼントを問う純粋な姿と、色気を纏った女としての姿が同居していて、理性を苛む。
「Honey…」
低く掠れた声で名前を呼ぶ。
「俺の誕生日に欲しいもん? そんなん、決まってんよ」
彼女が首を傾げると、俺はその顎に指をかけ、視線を絡め取った。
「アンタだ。Honey」
吐息を混ぜた言葉に、彼女の目が揺れる。
「俺の誕生日、朝から夜まで……全部、Honeyに埋め尽くされてえ」
「……ふふっ。スタンらしい答えね」
頬を染めながらも、Honeyは小さく笑った。
「でも……そう言われると、私も用意してたサプライズが霞んじゃうわ」
「サプライズ?」
思わず眉を上げる。
彼女は唇に指を当て、悪戯っぽく微笑んだ。
「内緒。…誕生日までは、素直に待っていてね」
その仕草があまりにも可愛くて、俺は強く抱き寄せずにはいられなかった。
「…待つのは得意だが、Honeyのことだかんね。待てると思うか?Honeyの隠し事は、すぐ嗅ぎ取んぜ」
耳元で囁くと、彼女は頬をさらに赤くして、苦笑しながら俺の胸を軽く叩いた。
…誕生日が楽しみじゃん。
だが、それ以上に。この瞬間、この温もりが何よりも愛おしい。
夜の甘い余韻に包まれたまま、Honeyの囁いたサプライズという言葉が頭から離れない。
彼女の胸元に顔を埋めながらも、俺の思考は妙に冴えていた。
…隠し事なんざ下手なくせに、こういう時だけ器用に隠そうとすんね。Honeyらしいな。
腕の中の温もりを感じながら、どう出るかを考えている自分がいる。
だが、誕生日を待つ前に、Honeyがどんな顔でそれを仕込んでいるのか覗きたくなるのも事実だ。
翌朝。
俺が出勤準備をしている間、Honeyは妙にそわそわしている。
キッチンに立つ姿も、寝室で着替えるに入る背中も…普段なら何気ない動作が、今日は少しだけ落ち着かない。
…準備ってやつか。
俺に気づかせないように必死に隠してっけど、目に見えてるじゃねえか。
出かける直前、Honeyがやたらと優しい声で
「今日は帰りが遅くなるかもしれないの。夕飯は気にしないで」と告げてきた。
決定的だった。
…OK、これから動くってわけか。
だがHoney、そんな簡単に誤魔化せると思うなよ。
俺は口元をわずかに吊り上げ、彼女の額にキスを落とした。
「…楽しみにしてる」
それだけ告げて家を出た。
その日から、俺の中ではひそかな攻防が始まった。
Honeyは外出の時間をずらし、買い物袋を隠すように持ち帰り、夜は書斎にこもって何やら作業をしている。
…全部見えてる。だが、知らないふりをして見守るのも悪くねえ。
Honeyが俺の誕生日に何を準備しているのか——本当は今すぐ知りてえ。
けど、彼女が必死に隠している姿がまた可愛くて、意地でも気づいていないフリを続ける。
…最高の笑顔で俺を驚かせてくれるんだろう。
ならその瞬間まで…待つのも悪くない。
誕生日まであと数日。
スタンは、甘い緊張と期待を胸に、Honeyの準備を静かに見守っていた。
一方、Honeyは準備に追われていた。
研究室を出た後、女友達でもありデザイナーの杠、ルリとHoneyは会議室で話をしていた。
Honey「というわけで、彼の希望を叶える為にセクシーなランジェリーを作って頂けたらと思ってて…」
杠「愛ですなぁ…大丈夫!任せて!ベビードール、ガーターベルトはマストね!」
ルリ「丁度女性向けインナーも展開したいと思っていたところで、可愛い系からセクシー系まで作れそうよ。」
Honeyがスタンに仕掛けるサプライズの1つに、セクシーランジェリーで責めてみようプランがあったのだ。
Honeyはスタンの好みを勘案する。
スタンの好みは可愛い系かセクシー系か…
スタンの好みを掘り下げるなら彼は根が軍人で現実主義。
だから表面的に飾り立てた派手なセクシー系よりも、Honeyそのものを際立たせる控えめだけど大胆なデザインに惹かれるタイプかな?
たとえば、可愛い系のふわっとした雰囲気も悪くないけど、それは日常で十分味わえている。
夜の彼が求めるのはHoneyが俺の女であることを強く感じさせる、線の細いガーターベルトや透け感のあるベビードールのような、セクシー寄り。
でもただの挑発的なセクシーではなく、普段の清楚さとギャップがある、Honey自身の柔らかさや気品が失われない
誰にも見せない、俺だけの姿だという独占欲を煽る、このあたりが彼の琴線を鳴らす…はず。
Honey 「可愛い要素をひとさじ残したセクシー系でお願い!」
杠「任せて!黒や濃紺のレースベビードールに、ちょっと可愛いリボンやフリルが添えてある、とか。」
ルリ「完全に大人な攻め一辺倒でない、Honeyらしさが残っていていいかもしれないわね。」
会議室に3人の笑い声が広がる。
Honeyは少し頬を赤らめながら、資料にペンを走らせた。
杠「いいねいいね!清楚からのギャップってやつ!彼がHoneyを見て絶対に息を呑む瞬間が想像できるわ」
ルリ「あと、シルクやチュールの透け感は欠かせないんじゃないかしら。スタンリー隊長なら、きっと普段見せない顔に弱いタイプだと思うし」
Honeyは二人の意見を聞きながら、つい口元を押さえて笑みを零す。
Honey「ふふ…確かに。あの人、ギャップには弱いわ。私が少し違う顔を見せると、すぐに反応してしまうんですもの」
杠「おー、のろけ出ました!」
ルリ「でもそれ、最高のヒントよね。じゃあHoney専用に、大人の色気と可憐さを共存させた一着をデザインしてみましょう」
Honey「お願いします。…彼に、最高の誕生日を贈りたいから」
そう言って目を細めるHoneyの姿に、二人は胸を打たれたように頷いた。
―こうして、スタンのための特注サプライズランジェリーの準備が進み始めたのだった。
誕生日数日前の夜。
仕事を終えて帰宅したHoneyの部屋には、小ぶりの紙袋が置かれていた。
昼間杠とルリから受け取った例のブツである。
流石に昼間研究室で開封する事は叶わなかったので家まで持ち帰ってきた。
中を覗けば、丁寧に薄紙で包まれた、艶やかな黒レースの下着が現れる。
Honey「…早っ。まだ日数あるのに…ふたりとも、どれだけ気合い入ってるのよ」
思わず呟きながらも、手に取るとドレスのように軽やかな生地がするりと指を抜けていく。
胸元はバストを持ち上げるカップにリボン。
クロッチ部分には大胆なスリットが入り、布の面積は驚くほど少ない。
Honey「…これ、想像以上に攻めてるわね」
それでも、試さないわけにはいかない。
そっと身に纏うと、レースの冷たい感触が肌にぴたりと吸いついた。
鏡の前に立った瞬間、自分の姿に思わず言葉を失う。
そこに映っていたのは、普段白衣姿で研究に没頭する自分とはまるで別人。
胸元から覗く谷間、足さばきのたびにひらりと開くクロッチ部分のスリット。
腰のラインがむき出しになり、レースがかえって想像力を煽る。
Honey「…っ、な、なにこれ…すごすぎて…私、色っぽすぎない?」
頬が一気に赤くなり、思わず両手で顔を覆った。
指の隙間から鏡を見れば、潤んだ瞳で立ち尽くす自分が映り込んでいる。
Honey「スタンが、これ見たら…絶対…」
膝がかくりと緩み、ベッドに腰を下ろした。
自分でも直視できないほどの色気。
けれど心の奥底では、彼にだけ見せたいという高揚が熱となって広がっていた。
Honey「…私まで恥ずかしくなっちゃうなんて、どういうことなのよ」
照れ笑いを漏らしつつ、丁重に脱いでバスローブを羽織り、宝物のように大事にクローゼットへ仕舞い込むのだった。
スタンの誕生日、本番でこれを着たとき、彼がどうなってしまうのか。
Honey自身、想像するだけで胸が苦しくなるほどの期待に包まれていた。
寝室の窓の外で、バイクのエンジン音が止まった。
Honey「――っ!?」
心臓が跳ね上がる。
ちょうど鏡の前で試着したままの下着にバスローブ姿。
背筋に冷や汗がつうっと落ちる。
Honey(ま、まずい! 帰ってきたの…!? こんな姿、見せられないのに!)
慌ててバスローブを整え、鏡の前の姿を一度確認。
頬は火がついたように真っ赤で、目元は潤んでいる。
どう見ても普通じゃない。
ドアが開き、低い声が届いた。
スタン「Honey、今帰ったぜ…」
足音が近づく。
Honey「お、おかえりなさい! ちょっと…ちょっと待ってて!」
慌てて寝室のドアを半分だけ閉じた。
それでもスタンは眉をひそめながら覗き込んでくる。
スタン「顔、赤けえな。何してたん?」
Honey「えっ!? な、何もしてないわよ!?」
声が裏返る。誤魔化そうとするほど怪しい。
スタンは腕を組み、じっと観察する。
スタン「…風呂上がりにしては髪が乾きすぎてる。体調でも悪いか?」
Honey「ち、違うの! あの…あのね、女の子の準備って、色々あるのよ!」
妙に力が入った言い訳に、スタンの視線がさらに鋭くなる。
バスローブの襟元を直そうとする手が震え、余計に怪しさを強調してしまう。
スタン「…準備、ねぇ。俺に言えない類?」
Honey「だ、だから! まだ内緒なの! とにかく気にしないで!」
Honeyは強引にスタンの胸を押して、リビングへ追いやる。
スタンは不満げに眉間を寄せつつも、深追いはしなかった。
だが、
スタン(…顔の赤さ、隠しきれてないんよ。Honey、何を企んでやがる)
ソファに腰を下ろしながらも、視線の奥は疑念を帯びていた。
誤魔化し切ったはずのHoneyは、寝室で胸を押さえ、先ほど鏡に映した自分の姿を思い出しては、ひとりで更に頬を赤くしていた。
更に数日が経った。
スタンは表向き普段通りに振る舞っていたが、内心ではどうにも落ち着かない。
あの夜、真っ赤な頬で慌ててごまかしたHoneyの様子が脳裏に焼き付いて離れなかった。
スタン(…何を隠してた。体調じゃねえ、女友達絡みか、買い物か。だがHoneyは下手な嘘はつかない女だかんね。なら―何かの準備か?)
疑念は膨らむばかり。
そのため、彼は自然を装いつつも日ごとに視線をHoneyに向けてしまう。
ラボで書類に目を通すHoney。
研究員へ淡々と指示を飛ばすHoney。
夕食を作るために髪を後ろでまとめるHoney。
どの瞬間も、スタンの瞳は彼女を捉えて離さなかった。
スタン(普段のHoneyは、穏やかで美しい。それでいて、ときどき見せる仕草がやけに艶っぽい…特に最近はな。何かを抱え込んでるように見えるのに、笑みは柔らかい。俺の知らねえ楽しみを隠してやがんのか)
観察していると、自然と彼女の細やかな変化に気づく。
例えば、食卓でワイングラスを持つ指先。爪の手入れがいつもより丁寧にされている。
例えば、ラボで書き物をしているとき。耳元のイヤリングが新調されたものに変わっている。
スタン(……俺にバレる前提でやってねぇのは確かだ。なら、特別な日を見据えてんのか?)
思考はそこで止まる。
答えに辿り着きそうで辿り着けない。だが焦る気もない。
むしろ、謎を抱えたままのHoneyを観察する時間は、彼にとっては妙な愉しみでもあった。
帰宅後、ソファでくつろぐ彼女の横顔を盗み見る。
スタン「…最近、妙に綺麗に見える」
Honey「えっ? 何、急に」
スタン「観察結果だ。否定できねえだろ」
Honeyは一瞬たじろぎ、しかしすぐ笑顔を作ってごまかした。
スタンの疑いは消えぬまま、けれど彼女を見つめる眼差しは日ごとに深さを増していった。
誕生日という決戦の日まで、スタンは観察モードを解かずにいることになる。
次の日、研究室の廊下。
書類を抱えて歩くHoneyの表情は、どこか曇っていた。
小さく眉を寄せて、視線を床に落とし、まるで難題を解く研究員そのもの。
Honey(どうしよう…。誕生日までに2日くらいは距離を置きたいのに、スタンは毎晩私を求めてくる…。拒むなんてしたら絶対怪しまれるし、理由を作らないと…でも、どう言えば自然かな…)
そんな内心を抱えたまま歩くHoneyを、数歩後ろからスタンが鋭い目で追っていた。
表向きは淡々とゼノに同行しているだけに見えるが、その眼差しは完全に観察モードだ。
スタン(また悩んでんな。顔に出すタイプじゃねえのに、こうして一人で考え込む時はすぐ分かんよ。…OK,何を隠してる?)
彼はわざと歩調を合わせ、隣に並んだ。
無言でしばらく歩いたのち、唐突に切り出す。
スタン「難しい顔してたな。廊下に答えでも落ちてたん?」
不意打ちにHoneyははっと顔を上げる。
Honey「えっ…い、いや、ちょっと考えごとをしてただけ」
スタン「ふうん?」
低い声にわずかな探る色が混ざる。
彼の目は笑っていない。
軍人特有の観察眼が、彼女の仕草ひとつを逃さない。
スタン(生理や体調不良なら隠す必要はねぇ。だが、明らかに俺に見せまいとしてるな。…ますます怪しいじゃんよ)
口には出さないが、瞳には警戒と好奇心が宿る。
一方のHoneyは笑顔を繕いながら心臓を早鐘のように鳴らしていた。
Honey(やばっ…気づかれてる…。でもサプライズだから絶対言いたくない…!)
彼女は平静を装い、新しい研究のことと嘘を吐きかけたが、スタンの眼がそれを許さなそうで、喉で言葉が止まる。
スタンは口角をわずかに上げ、耳元で低く囁いた。
スタン「……逃げ道はねえよ、Honey。何を隠してんよ?」
困るHoneyに他の研究員がHoneyを呼ぶ声。
ありえない速さで呼ばれたからと去るHoney。
廊下で探られた余韻を引きずったまま、Honeyは研究室の奥に戻りながら思考を続けていた。
Honey(うーん…スタンの観察眼、ほんとに鋭すぎる…。嘘はバレるし、下手に理由を作ったら余計怪しまれる。どう自然に距離を置くって流れにできるかな…)
机に書類を置いてから、彼女はふと閃いた。
Honey(…そうだ。仕事の名目なら自然かもしれない。新しいデータ解析や試薬の調整で夜が遅くなる、とか。スタンも研究室に来てるけど、終盤の細かい処理は私だけでって理由付けできるはず)
しかし次の瞬間、彼女は唇を噛んだ。
Honey(でも…スタンなら絶対待つって言ってくる。帰宅してからも待って、結局夜は逃げられない気がする…。)
頭を抱えるHoneyを、遠くからまたもや鋭く見ている男がいた。
スタン(……明らかに何か考えてんじゃん。あの様子、任務関連じゃねえ。俺に隠したい何か。…余計に気になんね)
その夜。
帰宅後、Honeyは試しに仕掛けてみた。
Honey「スタン、今週ちょっと研究の詰めがあるの。夜遅くまでラボに残らなきゃいけない日が続きそうで…」
ソファに腰かけていたスタンは、眉をひとつ上げただけで彼女をじっと見つめる。
スタン「へえ? 残業ってやつか」
Honey「え、ええ。ごめんなさいね。帰宅してからだとすぐに眠くなっちゃうかもしれないし」
少しでも自然に、と微笑んで言ったつもりだったが…スタンは目を細め、唇の端をわずかに吊り上げた。
スタン「…Honeyがそんなふうに断り文句を口にするのは珍しいじゃん」
心臓が跳ねる。彼は完全に怪しんでいる。
だがスタンはすぐに追及せず、腕を組んで背もたれに沈み込んだ。
スタン(OK,Honeyが何を仕込んでんのか…誕生日までは泳がせてやんよ。ただし俺の目から逃げられると思うなよ、Honey)
こうして、2日間のおあずけ作戦は、スタンに見抜かれそうになりながらも始動することになった。
―おあずけ1日目の夜。
Honeyはラボの片付けを理由に、いつもより少し遅れて帰宅した。
玄関を開けると、すでに灯りの落ち着いたリビングにスタンが腰をかけている。
ソファに深く座り、グラスを片手に、静かに彼女を待っていた。
Honey「ただいま、スタン。ごめんね、遅くなっちゃって」
スタン「……ああ。おかえり」
彼の声は落ち着いている。けれど、その視線は明らかに熱を帯びていて、Honeyの背筋をぞくりとさせた。
Honey(だめ、今日は距離を置く作戦の日…。自然に、自然に…)
Honeyはキッチンに向かい、グラスを手に取ってワインを注ぐ。
だが背後から感じる視線がやけに強い。
振り向くと、スタンが足を組み替えながら、まるで獲物を狙うように目を細めていた。
スタン「……Honey」
Honey「な、なに?」
スタン「残業のわりに、疲れた顔じゃねえな」
グラスを持つ手がわずかに震える。
笑って誤魔化そうとしたHoneyだが、スタンは立ち上がり、ゆっくりと彼女に歩み寄ってきた。
その大きな影に包まれると、呼吸が浅くなる。
腕を伸ばされ、彼の手がグラスごとHoneyの手を包んだ。
スタン「…何を隠してる?」
低く囁く声が耳に落ちて、心臓が跳ねた。
Honeyは咄嗟に笑みを作り、頬を染めながら視線を逸らす。
Honey「…隠してなんてないわ。ただ、ちょっと忙しいだけ」
スタン「…ふうん」
疑いは完全に消えていない。
それでも、彼はそれ以上強く追及せず、グラスを取り上げて代わりにHoneyを抱き寄せた。
スタン「…まあいい。今夜は疲れてるってことにしておいてやんよ」
―そう言いながら、彼の指先が腰を撫でている。
明らかに名残惜しげで、すぐにでも本能のまま彼女を抱き潰したそうな圧。
Honey(やっぱり…簡単に誤魔化せる相手じゃない…。でも、耐えて。あと二日…!)
抱き寄せられたまま、スタンの胸に顔を埋め、彼女は必死に気配を誤魔化した。
スタンはそれ以上迫らず、ただ彼女の髪に口づけを落として、深く息を吐く。
スタン(…くそ。お預けか。やんじゃん。だがその分、当日は…容赦しねえかんね)
おあずけ初日の夜は、互いの内に火種だけを残したまま、嵐の前の静けさのように過ぎていった。
――おあずけ2日目の夜。
Honeyはベッドの端に腰を下ろし、照明を落とした寝室の中で静かに息をついた。
昨日の夜は、なんとか誤魔化すことに成功したけれど、スタンの視線が鋭すぎて心臓がもたなかった。
今夜も無事に切り抜けられるのだろうか。
バスルームから出てきたスタンは、上半身裸のままタオルで髪を拭きながらHoneyに近づいてくる。
その姿を見ただけで、Honeyの喉がひゅっと鳴った。
スタン「…また考え事か?」
Honey「えっ、ち、違うわ。ただちょっと、明日の段取りを…」
スタン「段取り、ねぇ」
ベッドに腰を下ろしたスタンの重みで、マットレスが沈む。
その傍に座るだけで、圧倒的な熱気と気配が迫ってきた。
スタン「昨日も疲れてるって言ってたよな。…Honeyにしちゃ珍しい」
Honey「うっ……」
胸元に落ちてきたスタンの視線に、思わず体を硬くする。
けれど彼はそれ以上強引に触れてこず、代わりに背後からHoneyを抱き締めた。
スタン「…いいか。俺は無理強いはしねぇ。ただ…」
低い声が首筋に落ちる。
ぞわりと背筋を走る熱。
スタン「Honeyが何か隠してるのは、見ればわかんよ」
Honey(ひゃっ…やっぱり気づかれてる…!)
心臓が破裂しそうな鼓動を悟られないように、必死に呼吸を整える。
誕生日まで、あと一日。
ここでバレたらサプライズは台無しだ。
Honey「…ふふっ。スタンって鋭いんだから。でも大丈夫、ちゃんとそのうちわかるから」
スタン「…そのうち?」
意味深な返答に、スタンの目が怪しく細まる。
けれどHoneyがにっこり笑い、腕に自分の手を重ねた瞬間、彼は深く息を吐いて彼女の肩に額を預けた。
スタン「……チッ。OK,今はそれ以上追及しねぇ」
Honey「ありがとう、スタン」
言葉では引き下がったものの、スタンの抱擁は普段よりも強く、名残惜しげだった。
抑えているからこそ、逆に伝わる熱。
スタン(…あと一日。いいだろう。誕生日に全部受け取ってやる)
おあずけ二日目の夜は、静かでいて、嵐を孕んだ夜気そのものだった。
スタンの誕生日前夜。
Honeyとスタンは自宅に帰り着いていた。
お風呂を済ませ時計はもうすぐ0時を迎える。
いつもなら寝室に入った瞬間、自然と身体を寄せ合うのに、今夜のHoneyは違った。
Honey「スタン…ちょっと待ってて。準備があるの」
スタン「準備?」
怪訝そうに眉を寄せたスタンの返事も待たず、Honeyは寝室の奥へと姿を消す。
その背中を見送りながら、スタンは煙草を咥えかけて手を止めた。
スタン(…準備? ここ数日のおあずけも全部そのせいか)
数分後――
扉が静かに開き、姿を現したHoneyに、スタンの喉が低く鳴った。
艶やかな黒のレースと透け感のあるベビードール。
足をすらりと飾るガーターベルトとストッキング。
髪は少しだけ巻かれ、唇には淡い艶。
普段のHoneyの可憐さに、妖艶さが加わっていた。
Honey「…お誕生日おめでとう、スタン」
わずかに肩を抱きすくめるような仕草。
けれど視線だけは真っ直ぐに、彼を射抜いている。
スタン「……っ」
低く押し殺したような息。
普段なら冷静な男が、ほんの一瞬言葉を失った。
スタン「……Honey」
Honey「いつも私を満たしてくれるから…今日は、私が贈り物になる日」
そう言って、恥じらいながらも胸元のリボンに指をかける。
その動作一つで、スタンの理性は焼き切れそうだった。
スタン「…この数日、妙に隠してたんは…これか」
Honey「うん。驚いてくれた?」
スタン「…驚いたどこじゃねぇ」
次の瞬間、強く腕を引かれ、Honeyはスタンの胸に抱き込まれる。
背に回る腕は、壊してしまうほど熱く力強い。
スタン「…最高のプレゼントじゃん。アンタが俺の為に、ここまで考えてくれたってことが…たまらねぇ」
囁きは低く甘く、そして荒ぶるように震えていた。
Honeyは微笑みながら頷き、そのまま彼の首に腕を回す。
Honey「ふふふ。…じゃあ、今夜は思う存分、受け取って」
そうして、誕生日のスタートは、誰にも見せられないほど激しく、そして甘やかに始まった。
----続きは、39.HappyBirthday2 裏夢です
Honeyの囁きが、まだ甘い余韻に包まれた寝室に柔らかく落ちた。
「もうすぐスタンのお誕生日ね。何がほしい?」
見上げてくるその瞳が、夜の熱を映したまま潤んでいて…俺の胸を一瞬で射抜いた。
…欲しいものなんて、目の前にあんじゃん。
思わず喉が鳴る。
腕に抱いた彼女は、甘く頬を紅潮させながらも小悪魔のように微笑む。
誕生日プレゼントを問う純粋な姿と、色気を纏った女としての姿が同居していて、理性を苛む。
「Honey…」
低く掠れた声で名前を呼ぶ。
「俺の誕生日に欲しいもん? そんなん、決まってんよ」
彼女が首を傾げると、俺はその顎に指をかけ、視線を絡め取った。
「アンタだ。Honey」
吐息を混ぜた言葉に、彼女の目が揺れる。
「俺の誕生日、朝から夜まで……全部、Honeyに埋め尽くされてえ」
「……ふふっ。スタンらしい答えね」
頬を染めながらも、Honeyは小さく笑った。
「でも……そう言われると、私も用意してたサプライズが霞んじゃうわ」
「サプライズ?」
思わず眉を上げる。
彼女は唇に指を当て、悪戯っぽく微笑んだ。
「内緒。…誕生日までは、素直に待っていてね」
その仕草があまりにも可愛くて、俺は強く抱き寄せずにはいられなかった。
「…待つのは得意だが、Honeyのことだかんね。待てると思うか?Honeyの隠し事は、すぐ嗅ぎ取んぜ」
耳元で囁くと、彼女は頬をさらに赤くして、苦笑しながら俺の胸を軽く叩いた。
…誕生日が楽しみじゃん。
だが、それ以上に。この瞬間、この温もりが何よりも愛おしい。
夜の甘い余韻に包まれたまま、Honeyの囁いたサプライズという言葉が頭から離れない。
彼女の胸元に顔を埋めながらも、俺の思考は妙に冴えていた。
…隠し事なんざ下手なくせに、こういう時だけ器用に隠そうとすんね。Honeyらしいな。
腕の中の温もりを感じながら、どう出るかを考えている自分がいる。
だが、誕生日を待つ前に、Honeyがどんな顔でそれを仕込んでいるのか覗きたくなるのも事実だ。
翌朝。
俺が出勤準備をしている間、Honeyは妙にそわそわしている。
キッチンに立つ姿も、寝室で着替えるに入る背中も…普段なら何気ない動作が、今日は少しだけ落ち着かない。
…準備ってやつか。
俺に気づかせないように必死に隠してっけど、目に見えてるじゃねえか。
出かける直前、Honeyがやたらと優しい声で
「今日は帰りが遅くなるかもしれないの。夕飯は気にしないで」と告げてきた。
決定的だった。
…OK、これから動くってわけか。
だがHoney、そんな簡単に誤魔化せると思うなよ。
俺は口元をわずかに吊り上げ、彼女の額にキスを落とした。
「…楽しみにしてる」
それだけ告げて家を出た。
その日から、俺の中ではひそかな攻防が始まった。
Honeyは外出の時間をずらし、買い物袋を隠すように持ち帰り、夜は書斎にこもって何やら作業をしている。
…全部見えてる。だが、知らないふりをして見守るのも悪くねえ。
Honeyが俺の誕生日に何を準備しているのか——本当は今すぐ知りてえ。
けど、彼女が必死に隠している姿がまた可愛くて、意地でも気づいていないフリを続ける。
…最高の笑顔で俺を驚かせてくれるんだろう。
ならその瞬間まで…待つのも悪くない。
誕生日まであと数日。
スタンは、甘い緊張と期待を胸に、Honeyの準備を静かに見守っていた。
一方、Honeyは準備に追われていた。
研究室を出た後、女友達でもありデザイナーの杠、ルリとHoneyは会議室で話をしていた。
Honey「というわけで、彼の希望を叶える為にセクシーなランジェリーを作って頂けたらと思ってて…」
杠「愛ですなぁ…大丈夫!任せて!ベビードール、ガーターベルトはマストね!」
ルリ「丁度女性向けインナーも展開したいと思っていたところで、可愛い系からセクシー系まで作れそうよ。」
Honeyがスタンに仕掛けるサプライズの1つに、セクシーランジェリーで責めてみようプランがあったのだ。
Honeyはスタンの好みを勘案する。
スタンの好みは可愛い系かセクシー系か…
スタンの好みを掘り下げるなら彼は根が軍人で現実主義。
だから表面的に飾り立てた派手なセクシー系よりも、Honeyそのものを際立たせる控えめだけど大胆なデザインに惹かれるタイプかな?
たとえば、可愛い系のふわっとした雰囲気も悪くないけど、それは日常で十分味わえている。
夜の彼が求めるのはHoneyが俺の女であることを強く感じさせる、線の細いガーターベルトや透け感のあるベビードールのような、セクシー寄り。
でもただの挑発的なセクシーではなく、普段の清楚さとギャップがある、Honey自身の柔らかさや気品が失われない
誰にも見せない、俺だけの姿だという独占欲を煽る、このあたりが彼の琴線を鳴らす…はず。
Honey 「可愛い要素をひとさじ残したセクシー系でお願い!」
杠「任せて!黒や濃紺のレースベビードールに、ちょっと可愛いリボンやフリルが添えてある、とか。」
ルリ「完全に大人な攻め一辺倒でない、Honeyらしさが残っていていいかもしれないわね。」
会議室に3人の笑い声が広がる。
Honeyは少し頬を赤らめながら、資料にペンを走らせた。
杠「いいねいいね!清楚からのギャップってやつ!彼がHoneyを見て絶対に息を呑む瞬間が想像できるわ」
ルリ「あと、シルクやチュールの透け感は欠かせないんじゃないかしら。スタンリー隊長なら、きっと普段見せない顔に弱いタイプだと思うし」
Honeyは二人の意見を聞きながら、つい口元を押さえて笑みを零す。
Honey「ふふ…確かに。あの人、ギャップには弱いわ。私が少し違う顔を見せると、すぐに反応してしまうんですもの」
杠「おー、のろけ出ました!」
ルリ「でもそれ、最高のヒントよね。じゃあHoney専用に、大人の色気と可憐さを共存させた一着をデザインしてみましょう」
Honey「お願いします。…彼に、最高の誕生日を贈りたいから」
そう言って目を細めるHoneyの姿に、二人は胸を打たれたように頷いた。
―こうして、スタンのための特注サプライズランジェリーの準備が進み始めたのだった。
誕生日数日前の夜。
仕事を終えて帰宅したHoneyの部屋には、小ぶりの紙袋が置かれていた。
昼間杠とルリから受け取った例のブツである。
流石に昼間研究室で開封する事は叶わなかったので家まで持ち帰ってきた。
中を覗けば、丁寧に薄紙で包まれた、艶やかな黒レースの下着が現れる。
Honey「…早っ。まだ日数あるのに…ふたりとも、どれだけ気合い入ってるのよ」
思わず呟きながらも、手に取るとドレスのように軽やかな生地がするりと指を抜けていく。
胸元はバストを持ち上げるカップにリボン。
クロッチ部分には大胆なスリットが入り、布の面積は驚くほど少ない。
Honey「…これ、想像以上に攻めてるわね」
それでも、試さないわけにはいかない。
そっと身に纏うと、レースの冷たい感触が肌にぴたりと吸いついた。
鏡の前に立った瞬間、自分の姿に思わず言葉を失う。
そこに映っていたのは、普段白衣姿で研究に没頭する自分とはまるで別人。
胸元から覗く谷間、足さばきのたびにひらりと開くクロッチ部分のスリット。
腰のラインがむき出しになり、レースがかえって想像力を煽る。
Honey「…っ、な、なにこれ…すごすぎて…私、色っぽすぎない?」
頬が一気に赤くなり、思わず両手で顔を覆った。
指の隙間から鏡を見れば、潤んだ瞳で立ち尽くす自分が映り込んでいる。
Honey「スタンが、これ見たら…絶対…」
膝がかくりと緩み、ベッドに腰を下ろした。
自分でも直視できないほどの色気。
けれど心の奥底では、彼にだけ見せたいという高揚が熱となって広がっていた。
Honey「…私まで恥ずかしくなっちゃうなんて、どういうことなのよ」
照れ笑いを漏らしつつ、丁重に脱いでバスローブを羽織り、宝物のように大事にクローゼットへ仕舞い込むのだった。
スタンの誕生日、本番でこれを着たとき、彼がどうなってしまうのか。
Honey自身、想像するだけで胸が苦しくなるほどの期待に包まれていた。
寝室の窓の外で、バイクのエンジン音が止まった。
Honey「――っ!?」
心臓が跳ね上がる。
ちょうど鏡の前で試着したままの下着にバスローブ姿。
背筋に冷や汗がつうっと落ちる。
Honey(ま、まずい! 帰ってきたの…!? こんな姿、見せられないのに!)
慌ててバスローブを整え、鏡の前の姿を一度確認。
頬は火がついたように真っ赤で、目元は潤んでいる。
どう見ても普通じゃない。
ドアが開き、低い声が届いた。
スタン「Honey、今帰ったぜ…」
足音が近づく。
Honey「お、おかえりなさい! ちょっと…ちょっと待ってて!」
慌てて寝室のドアを半分だけ閉じた。
それでもスタンは眉をひそめながら覗き込んでくる。
スタン「顔、赤けえな。何してたん?」
Honey「えっ!? な、何もしてないわよ!?」
声が裏返る。誤魔化そうとするほど怪しい。
スタンは腕を組み、じっと観察する。
スタン「…風呂上がりにしては髪が乾きすぎてる。体調でも悪いか?」
Honey「ち、違うの! あの…あのね、女の子の準備って、色々あるのよ!」
妙に力が入った言い訳に、スタンの視線がさらに鋭くなる。
バスローブの襟元を直そうとする手が震え、余計に怪しさを強調してしまう。
スタン「…準備、ねぇ。俺に言えない類?」
Honey「だ、だから! まだ内緒なの! とにかく気にしないで!」
Honeyは強引にスタンの胸を押して、リビングへ追いやる。
スタンは不満げに眉間を寄せつつも、深追いはしなかった。
だが、
スタン(…顔の赤さ、隠しきれてないんよ。Honey、何を企んでやがる)
ソファに腰を下ろしながらも、視線の奥は疑念を帯びていた。
誤魔化し切ったはずのHoneyは、寝室で胸を押さえ、先ほど鏡に映した自分の姿を思い出しては、ひとりで更に頬を赤くしていた。
更に数日が経った。
スタンは表向き普段通りに振る舞っていたが、内心ではどうにも落ち着かない。
あの夜、真っ赤な頬で慌ててごまかしたHoneyの様子が脳裏に焼き付いて離れなかった。
スタン(…何を隠してた。体調じゃねえ、女友達絡みか、買い物か。だがHoneyは下手な嘘はつかない女だかんね。なら―何かの準備か?)
疑念は膨らむばかり。
そのため、彼は自然を装いつつも日ごとに視線をHoneyに向けてしまう。
ラボで書類に目を通すHoney。
研究員へ淡々と指示を飛ばすHoney。
夕食を作るために髪を後ろでまとめるHoney。
どの瞬間も、スタンの瞳は彼女を捉えて離さなかった。
スタン(普段のHoneyは、穏やかで美しい。それでいて、ときどき見せる仕草がやけに艶っぽい…特に最近はな。何かを抱え込んでるように見えるのに、笑みは柔らかい。俺の知らねえ楽しみを隠してやがんのか)
観察していると、自然と彼女の細やかな変化に気づく。
例えば、食卓でワイングラスを持つ指先。爪の手入れがいつもより丁寧にされている。
例えば、ラボで書き物をしているとき。耳元のイヤリングが新調されたものに変わっている。
スタン(……俺にバレる前提でやってねぇのは確かだ。なら、特別な日を見据えてんのか?)
思考はそこで止まる。
答えに辿り着きそうで辿り着けない。だが焦る気もない。
むしろ、謎を抱えたままのHoneyを観察する時間は、彼にとっては妙な愉しみでもあった。
帰宅後、ソファでくつろぐ彼女の横顔を盗み見る。
スタン「…最近、妙に綺麗に見える」
Honey「えっ? 何、急に」
スタン「観察結果だ。否定できねえだろ」
Honeyは一瞬たじろぎ、しかしすぐ笑顔を作ってごまかした。
スタンの疑いは消えぬまま、けれど彼女を見つめる眼差しは日ごとに深さを増していった。
誕生日という決戦の日まで、スタンは観察モードを解かずにいることになる。
次の日、研究室の廊下。
書類を抱えて歩くHoneyの表情は、どこか曇っていた。
小さく眉を寄せて、視線を床に落とし、まるで難題を解く研究員そのもの。
Honey(どうしよう…。誕生日までに2日くらいは距離を置きたいのに、スタンは毎晩私を求めてくる…。拒むなんてしたら絶対怪しまれるし、理由を作らないと…でも、どう言えば自然かな…)
そんな内心を抱えたまま歩くHoneyを、数歩後ろからスタンが鋭い目で追っていた。
表向きは淡々とゼノに同行しているだけに見えるが、その眼差しは完全に観察モードだ。
スタン(また悩んでんな。顔に出すタイプじゃねえのに、こうして一人で考え込む時はすぐ分かんよ。…OK,何を隠してる?)
彼はわざと歩調を合わせ、隣に並んだ。
無言でしばらく歩いたのち、唐突に切り出す。
スタン「難しい顔してたな。廊下に答えでも落ちてたん?」
不意打ちにHoneyははっと顔を上げる。
Honey「えっ…い、いや、ちょっと考えごとをしてただけ」
スタン「ふうん?」
低い声にわずかな探る色が混ざる。
彼の目は笑っていない。
軍人特有の観察眼が、彼女の仕草ひとつを逃さない。
スタン(生理や体調不良なら隠す必要はねぇ。だが、明らかに俺に見せまいとしてるな。…ますます怪しいじゃんよ)
口には出さないが、瞳には警戒と好奇心が宿る。
一方のHoneyは笑顔を繕いながら心臓を早鐘のように鳴らしていた。
Honey(やばっ…気づかれてる…。でもサプライズだから絶対言いたくない…!)
彼女は平静を装い、新しい研究のことと嘘を吐きかけたが、スタンの眼がそれを許さなそうで、喉で言葉が止まる。
スタンは口角をわずかに上げ、耳元で低く囁いた。
スタン「……逃げ道はねえよ、Honey。何を隠してんよ?」
困るHoneyに他の研究員がHoneyを呼ぶ声。
ありえない速さで呼ばれたからと去るHoney。
廊下で探られた余韻を引きずったまま、Honeyは研究室の奥に戻りながら思考を続けていた。
Honey(うーん…スタンの観察眼、ほんとに鋭すぎる…。嘘はバレるし、下手に理由を作ったら余計怪しまれる。どう自然に距離を置くって流れにできるかな…)
机に書類を置いてから、彼女はふと閃いた。
Honey(…そうだ。仕事の名目なら自然かもしれない。新しいデータ解析や試薬の調整で夜が遅くなる、とか。スタンも研究室に来てるけど、終盤の細かい処理は私だけでって理由付けできるはず)
しかし次の瞬間、彼女は唇を噛んだ。
Honey(でも…スタンなら絶対待つって言ってくる。帰宅してからも待って、結局夜は逃げられない気がする…。)
頭を抱えるHoneyを、遠くからまたもや鋭く見ている男がいた。
スタン(……明らかに何か考えてんじゃん。あの様子、任務関連じゃねえ。俺に隠したい何か。…余計に気になんね)
その夜。
帰宅後、Honeyは試しに仕掛けてみた。
Honey「スタン、今週ちょっと研究の詰めがあるの。夜遅くまでラボに残らなきゃいけない日が続きそうで…」
ソファに腰かけていたスタンは、眉をひとつ上げただけで彼女をじっと見つめる。
スタン「へえ? 残業ってやつか」
Honey「え、ええ。ごめんなさいね。帰宅してからだとすぐに眠くなっちゃうかもしれないし」
少しでも自然に、と微笑んで言ったつもりだったが…スタンは目を細め、唇の端をわずかに吊り上げた。
スタン「…Honeyがそんなふうに断り文句を口にするのは珍しいじゃん」
心臓が跳ねる。彼は完全に怪しんでいる。
だがスタンはすぐに追及せず、腕を組んで背もたれに沈み込んだ。
スタン(OK,Honeyが何を仕込んでんのか…誕生日までは泳がせてやんよ。ただし俺の目から逃げられると思うなよ、Honey)
こうして、2日間のおあずけ作戦は、スタンに見抜かれそうになりながらも始動することになった。
―おあずけ1日目の夜。
Honeyはラボの片付けを理由に、いつもより少し遅れて帰宅した。
玄関を開けると、すでに灯りの落ち着いたリビングにスタンが腰をかけている。
ソファに深く座り、グラスを片手に、静かに彼女を待っていた。
Honey「ただいま、スタン。ごめんね、遅くなっちゃって」
スタン「……ああ。おかえり」
彼の声は落ち着いている。けれど、その視線は明らかに熱を帯びていて、Honeyの背筋をぞくりとさせた。
Honey(だめ、今日は距離を置く作戦の日…。自然に、自然に…)
Honeyはキッチンに向かい、グラスを手に取ってワインを注ぐ。
だが背後から感じる視線がやけに強い。
振り向くと、スタンが足を組み替えながら、まるで獲物を狙うように目を細めていた。
スタン「……Honey」
Honey「な、なに?」
スタン「残業のわりに、疲れた顔じゃねえな」
グラスを持つ手がわずかに震える。
笑って誤魔化そうとしたHoneyだが、スタンは立ち上がり、ゆっくりと彼女に歩み寄ってきた。
その大きな影に包まれると、呼吸が浅くなる。
腕を伸ばされ、彼の手がグラスごとHoneyの手を包んだ。
スタン「…何を隠してる?」
低く囁く声が耳に落ちて、心臓が跳ねた。
Honeyは咄嗟に笑みを作り、頬を染めながら視線を逸らす。
Honey「…隠してなんてないわ。ただ、ちょっと忙しいだけ」
スタン「…ふうん」
疑いは完全に消えていない。
それでも、彼はそれ以上強く追及せず、グラスを取り上げて代わりにHoneyを抱き寄せた。
スタン「…まあいい。今夜は疲れてるってことにしておいてやんよ」
―そう言いながら、彼の指先が腰を撫でている。
明らかに名残惜しげで、すぐにでも本能のまま彼女を抱き潰したそうな圧。
Honey(やっぱり…簡単に誤魔化せる相手じゃない…。でも、耐えて。あと二日…!)
抱き寄せられたまま、スタンの胸に顔を埋め、彼女は必死に気配を誤魔化した。
スタンはそれ以上迫らず、ただ彼女の髪に口づけを落として、深く息を吐く。
スタン(…くそ。お預けか。やんじゃん。だがその分、当日は…容赦しねえかんね)
おあずけ初日の夜は、互いの内に火種だけを残したまま、嵐の前の静けさのように過ぎていった。
――おあずけ2日目の夜。
Honeyはベッドの端に腰を下ろし、照明を落とした寝室の中で静かに息をついた。
昨日の夜は、なんとか誤魔化すことに成功したけれど、スタンの視線が鋭すぎて心臓がもたなかった。
今夜も無事に切り抜けられるのだろうか。
バスルームから出てきたスタンは、上半身裸のままタオルで髪を拭きながらHoneyに近づいてくる。
その姿を見ただけで、Honeyの喉がひゅっと鳴った。
スタン「…また考え事か?」
Honey「えっ、ち、違うわ。ただちょっと、明日の段取りを…」
スタン「段取り、ねぇ」
ベッドに腰を下ろしたスタンの重みで、マットレスが沈む。
その傍に座るだけで、圧倒的な熱気と気配が迫ってきた。
スタン「昨日も疲れてるって言ってたよな。…Honeyにしちゃ珍しい」
Honey「うっ……」
胸元に落ちてきたスタンの視線に、思わず体を硬くする。
けれど彼はそれ以上強引に触れてこず、代わりに背後からHoneyを抱き締めた。
スタン「…いいか。俺は無理強いはしねぇ。ただ…」
低い声が首筋に落ちる。
ぞわりと背筋を走る熱。
スタン「Honeyが何か隠してるのは、見ればわかんよ」
Honey(ひゃっ…やっぱり気づかれてる…!)
心臓が破裂しそうな鼓動を悟られないように、必死に呼吸を整える。
誕生日まで、あと一日。
ここでバレたらサプライズは台無しだ。
Honey「…ふふっ。スタンって鋭いんだから。でも大丈夫、ちゃんとそのうちわかるから」
スタン「…そのうち?」
意味深な返答に、スタンの目が怪しく細まる。
けれどHoneyがにっこり笑い、腕に自分の手を重ねた瞬間、彼は深く息を吐いて彼女の肩に額を預けた。
スタン「……チッ。OK,今はそれ以上追及しねぇ」
Honey「ありがとう、スタン」
言葉では引き下がったものの、スタンの抱擁は普段よりも強く、名残惜しげだった。
抑えているからこそ、逆に伝わる熱。
スタン(…あと一日。いいだろう。誕生日に全部受け取ってやる)
おあずけ二日目の夜は、静かでいて、嵐を孕んだ夜気そのものだった。
スタンの誕生日前夜。
Honeyとスタンは自宅に帰り着いていた。
お風呂を済ませ時計はもうすぐ0時を迎える。
いつもなら寝室に入った瞬間、自然と身体を寄せ合うのに、今夜のHoneyは違った。
Honey「スタン…ちょっと待ってて。準備があるの」
スタン「準備?」
怪訝そうに眉を寄せたスタンの返事も待たず、Honeyは寝室の奥へと姿を消す。
その背中を見送りながら、スタンは煙草を咥えかけて手を止めた。
スタン(…準備? ここ数日のおあずけも全部そのせいか)
数分後――
扉が静かに開き、姿を現したHoneyに、スタンの喉が低く鳴った。
艶やかな黒のレースと透け感のあるベビードール。
足をすらりと飾るガーターベルトとストッキング。
髪は少しだけ巻かれ、唇には淡い艶。
普段のHoneyの可憐さに、妖艶さが加わっていた。
Honey「…お誕生日おめでとう、スタン」
わずかに肩を抱きすくめるような仕草。
けれど視線だけは真っ直ぐに、彼を射抜いている。
スタン「……っ」
低く押し殺したような息。
普段なら冷静な男が、ほんの一瞬言葉を失った。
スタン「……Honey」
Honey「いつも私を満たしてくれるから…今日は、私が贈り物になる日」
そう言って、恥じらいながらも胸元のリボンに指をかける。
その動作一つで、スタンの理性は焼き切れそうだった。
スタン「…この数日、妙に隠してたんは…これか」
Honey「うん。驚いてくれた?」
スタン「…驚いたどこじゃねぇ」
次の瞬間、強く腕を引かれ、Honeyはスタンの胸に抱き込まれる。
背に回る腕は、壊してしまうほど熱く力強い。
スタン「…最高のプレゼントじゃん。アンタが俺の為に、ここまで考えてくれたってことが…たまらねぇ」
囁きは低く甘く、そして荒ぶるように震えていた。
Honeyは微笑みながら頷き、そのまま彼の首に腕を回す。
Honey「ふふふ。…じゃあ、今夜は思う存分、受け取って」
そうして、誕生日のスタートは、誰にも見せられないほど激しく、そして甘やかに始まった。
----続きは、39.HappyBirthday2 裏夢です