日常
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午後、研究塔の上階。Honeyは机に向かいながら、試薬瓶のラベルを一つずつ確認していた。だが、ふとした瞬間、今朝のスタン思い出す。
「好きだ、Honey。何度でも言う。好きすぎる」
……ふふっ。
手が止まる。頬がほのかに色づいて、微笑みが漏れる。
スタンのあの低くて甘い声、優しくて強くて…あの瞳――私だけを見ている瞳を思い出すたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。
スタンが私を幸せにしたいって目で見てくれるだけで、こっちの方が幸せになっちゃうわ
……あぁ。早く会いたいな
一方その頃、スタンは演習場横の指令室で、ゼノとタブレットを覗き込みながら、飛行訓練のデータを確認していた。
制服の袖をたくし上げ、モニター越しに映る数値に目を細める。
ゼノ:「……この速度変化、Honey君が設定した薬剤の影響か?」
スタン:「ああ。あいつ、朝の段階で読み切ってた。できるヤツ」
ゼノは少し口角を上げ、唇を押さえながらうなずく。
ゼノ:「君と暮らすようになってからのHoneyは、妙に感情豊かになった。それはつまり、君のせいだな、スタン」
スタン:「……なら、誇らしく思うべきだな」
思わず微笑む。あのベッドでの朝の声、名前を囁き返してくれたHoneyの唇――
不意に頭を過ぎり、表情が少しだけ緩む。
ゼノ:「……ん?今、ニヤケただろう。Honey関連だな」
スタン:「……口を閉じろ、ゼノ。書類にコーヒー零すぞ」
ゼノ:「ふはは。どうにも幸福な軍人というのは、からかい甲斐がある」
スタンはため息混じりに苦笑しながら、言葉を返す。
スタン:「黙ってろ。……Honeyの帰りが待ち遠しいんよ。それだけだ、ゼノ」
ゼノ:「まったく……君という男は、愛に忠実すぎるね」
その声にスタンは小さく笑って、再び画面を見つめた。
お前が思うより、俺の方がずっと――会いたいと思ってる
午後の風は静かに吹いて、スタンの軍帽を少し揺らした。
スタンはゼノの隣で立ち止まった。視線は遠く、研究棟ロビー奥のソファスペース――
Honeyの周囲で何やら盛り上がっていたアマリリス、そして記者の北東西。
彼女たちの楽しげな様子に混ざるようにHoneyがいたが、ひときわ頬を紅潮させ、身じろぎしながらソファに座っていた。
アマリリスが何かを囁き、それに反応するようにHoneyがぽつりと呟いたかと思えば――
スタンの視線がぶつかった、その瞬間。
Honeyはサッと立ち上がると、彼女らに軽く頭を下げるようにしてロビー奥の研究室へと姿を消した。
……今の、なんだ?
スタンは眉を寄せた。
あの仕草、視線をそらし逃げるように去っていった様子は、まるで何か後ろめたいことがあったかのようだ。
ゼノが腕を組んだまま言った。
ゼノ:「……君には心当たりがあるように見えるが?」
スタン:「あいつの顔……」
スタンは小さく鼻を鳴らす。
あの顔は、Honeyが恥ずかしがる時に見せる表情だ。
スタン:「俺を避けて研究室に逃げたって、無意味だ。あいつがどれだけ顔を赤くしようと、俺の目を逸らせるわけがないかんね」
ゼノ:「ふむ。ということは、紅潮の理由がわかっていて黙っているのか。意地が悪いな、スタン」
スタン:「違え。……意地が悪いんじゃねえ。
あいつが恥ずかしがる姿を、少しでも長く見ていたいだけだかんね」
ゼノ:「……君、完全に恋に毒されてるな」
スタンは一歩、研究室のドアへと向かって歩き出す。
その背には、さっきまでHoneyがいたソファの残り香――
甘い香りが鼻をかすめた。
逃がさねぇよ、Honey。今夜、理由をきっちり聞かせてもらう。
冷静な視線の奥に、僅かに熱を帯びた狩人のような光が灯っていた。
スタンは、Honeyの姿を遠くから何度か目で追っていた。
白衣の裾を揺らしながら、資料を抱えて廊下を足早に通り過ぎる彼女。研究端末を覗き込んでは、真剣な表情で何かを打ち込んでいる。
──普段通りに見せかけて、いつもより数段よそよそしい。
……あいつ、あからさまに俺から逃げてる
それは確信だった。
Honeyの視線が、スタンにぶつかりそうになるたびにわずかに軌道を逸らされる。
口を開いて話しかけようと近づけば、まるでタイミングを読まれたように誰かとの用事でその場を離れていく。
……これは、確信犯だ
思わずスタンは、煙草の箱に手を伸ばしかけたが、途中でやめた。
逃げるHoneyも、悪くねえ
何かやましい話をされて、顔を紅潮させていた彼女。
それを隠すように――けれどつい意識しすぎて挙動が不自然になってる。
頑張って平静を装っているつもりでも、スタンの目は誤魔化せない。
スタンの目には、遠巻きでもHoneyの緊張がわかった。
いつもより背筋を伸ばし、指先をきゅっと握り、会話ではなく数字や結果に集中しようとする様子。
だがそれが、却って彼女の可愛さを引き立てていた。
いつものHoneyとは違え。だが、これも俺だけが知ってるHoneyだ
鼻の奥に残る、今朝のボディークリームの微かな香りがふと蘇る。
スタンの視線が、微かに熱を帯びた。
「……仕方ねえな」
そう呟いて、スタンはわざと少しだけ脚音を立てて歩き出した。
廊下の奥、研究エリアのガラス越しにいるHoneyが、わずかにピクリと肩を揺らす。
気づいてんじゃねぇか、Honey
追いつく気満々の足音――
だがそれが、彼女の鼓動をさらに高鳴らせると知っていて。
この小さな追いかけっこが、Honeyの可愛い焦りを見られるなら――
スタンにとっては、もったいない時間ではなかった。
ついに――捕まえた。
午後の終わりが近づき、研究員たちが一段落して各自の持ち場を離れ始める時間。
スタンは、廊下の突き当たり、静かなバックヤード近くの角である確信を持って立っていた。
Honeyが最後に持っていた資料は、間違いなくその近くの棚に返すものだった。
逃げ道が少なく、出会い頭で鉢合わせしやすい構造になっていることも――スタンは熟知している。
そして足音が近づく。
コツ、コツ、……
Honeyのヒール音だ。
緊張のせいか少し早足で、けれど強がるようにリズムは崩れていない。
曲がり角を曲がった瞬間――
「……っ!」
Honeyが立ち止まった。
前方には、まるで最初からここで待っていたとしか言えないスタンの姿。
「逃げ足、悪くなかったぜ」
ゆっくりと、だが確実に距離を詰めながらスタンが言った。
Honeyは少し肩をすくめ、ほんの一瞬だけ後ずさったが、それ以上はもう逃げなかった。
視線を逸らしながら、唇をきゅっと結ぶ。
頬は――まだ少し赤い。
「だって、あんな話……聞かれてたかもと思ったら……恥ずかしくて……」
「……なるほどな」
スタンは一歩、また一歩と距離を詰める。
Honeyの背が、壁に軽く当たった。
「なら……どうする?」
低く甘い声。
Honeyの睫毛が震え、小さく口が開いた。
「……逃げても、追いつくんだもん。……だったら、もう……好きにして、スタン」
その一言に、スタンの口角が緩む。
「最初からそのつもりだったぜ」
そして、誰もいないバックヤード前の空間――
ふたりの距離は、もうゼロになる。
優しく、しかし熱のある手がHoneyの頬に触れ、唇に――静かに、触れた。
それは、捕まえた報酬でもあり、彼女の逃げ切れなかった可愛さに与える褒美のような、優しいキスだった。
そしてHoneyは、そっとスタンに身体を預けた。
ようやく捕まった安心と、少しだけ悔しさと――でも何より、愛おしさに包まれて。
スタンは、Honeyを捕まえた後すぐには問いただしたりはしなかった。
彼はそういう時、一呼吸置く。
甘いキスを交わし、しばらく彼女の体温を確かめてから――少しだけ肩の力が抜けたHoneyを、ふと軽く見下ろして聞いた。
「で、今日の逃避行の理由は?」
Honeyはびくりと肩を揺らし、小さくうつむいた。頬がまた赤くなる。さっきまでより、さらに濃く。
「……アマリリスにね、変な物をすすめられたの。女性用の……その、媚薬っというか……体が敏感になる香油みたいなもので……好奇心で受け取っちゃったんだけど……昨夜のこと思い出して、私……それだけで……もう……」
そこまで言って、顔を両手で覆ってしまったHoney。
きっと耳まで真っ赤。
スタンは一瞬、固まった。
その後、ふっと鼻から短く息を吐き、
背後の壁に手をついてHoneyの横顔を覗き込む。
「……Honey」
低い声。
その音色には、笑ってるような、でも確かに煽られた獣の気配も宿していた。
「俺が、昨夜のアンタを思い出すだけでどうなってっか……知っててそれ言ってるん?」
「し、知らないわよ……っ!」
Honeyの反応はまさに可愛い自爆で、スタンの口元がくいと上がる。
彼女の紅潮した頬の熱を指先で確かめながら、スタンは心の中で呟いた。
なるほど、そういう理由か。
アマリリス、相変わらずロケット級の爆弾投下してくれるな。
とはいえ、その爆弾はスタンの本能を直撃する類の代物だった。
思わずHoneyの腰に回した手に、ほんの少し力がこもる。
「で、その……貰ったブツは、どこよ?」
「へ、部屋の引き出しに……しまってあるけど……」
「使うつもりは?」
「い、今は……だって、昨日のでまだ足が……」
「そっか」
スタンは目を細めて、もう一度Honeyの唇にキスを落とした。
優しく、しかしどこか約束のように。
使うかどうか
それはHoneyの意志がすべてだ。
だが、もしその気になった時のために。
スタンは心の中で決めていた。
本能と愛情の、境界を甘く溶かす夜が来るその時、Honeyが望むなら――その香油も、二人の時間のスパイスにしてみせる、と。
けれど今日のところは、彼女の恥じらいとその理由を知れたことが、何よりも嬉しくて愛おしくて。
今夜は――優しく、でもしっかり抱きしめよう。そんな風に、スタンは思っていた。
「…ねえ、スタン。さっき言ってた スタンが、昨夜の私を思い出す とどうなるの?」
Honeyが控えめに、潤んだ瞳で聞いてきた。
スタンは、その問いに一瞬だけ言葉を失った。
Honeyと名を呼びかけかけて、途中で止まる。彼女の潤んだ瞳に、無垢な好奇心と、わずかな甘えが混じっていて、それが、たまらなく可愛かった。
彼女は本当に知らないのか、それとも知っていて聞いているのか。
……どちらにしても、もう遅い。
ゆっくりとHoneyの腰を引き寄せ、壁際にそっと追い込む。
そのまま、視線を合わせたまま低く囁いた。
「……アンタが、あんとき見せた全部が、脳に焼き付いてっからね。何度思い出しても、鼓動が早くなって、喉が乾く。……正直、今もギリギリだな」
そう言った直後、スタンの瞳の奥の抑えた欲情が、はっきりと浮かぶ。
手のひらがHoneyの頬に触れ、その温もりに包み込むようにキスを――ほんの数秒、長めに、けれど柔らかく落とした。
離れ際、小さく笑って付け加える。
「……だから、そんな目で聞くのは反則だぜ、Honey」
スタンの声には、普段の理性の奥にある本能の熱がじわりと滲んでいた。
そしてそれは、Honeyの心を再び、甘く震わせることになる。
「スタン…私もね、昨夜のスタンが私を愛でる目をしながら幸せそうにしていて、それだけで心が満たされていたの。今日も早くスタンに会いたいって思っていたのよ。…薬の件でまさかこんな事態になるとは思ってなかったのだけれど…」
素直に気持ちを伝えるHoney。
スタンはHoneyの言葉に、ゆっくりと瞼を伏せてから、ふっと息をついた。
それは安堵と、愛しさが一度に胸にこみ上げた証。
彼女の素直な気持ちが、まっすぐにスタンの内側を貫いてくる。
まるで、その一言一言が、心臓の柔らかい部分を包み込むようだった。
――そして、スタンは口元にほんの少し笑みを浮かべながら、Honeyに近づく。
「……俺もなんよ、Honey。アンタに会いたいっつう気持ちは、どんな訓練よりも強烈だ。会えない時間に何度、声が聞きたくなって、触れたくなったか……数え切れないくらいにな」
彼はそう言いながら、Honeyの頬にそっと手を添える。
その手には強さも優しさも、確かな熱もこもっていた。
「……媚薬なんて関係ない。アンタが俺を求めてくれる、それだけで俺には充分すぎるほどの効き目だかんね」
そう囁くと、額をそっと寄せて、Honeyのぬくもりを確かめるようにそっと触れる。
「……だが正直、アンタの頬が紅くなって、俺を避けた理由がそれだったとわかったとき――
可愛すぎて、こっちがどうにかなっちまうかと思ったぜ」
声は低く落ち着いているのに、瞳の奥は明らかに理性が揺らいでいる色を宿している。
そして最後に、囁くように。
「今夜、ちゃんと取り返させてもらうかんね、Honey」
その言葉には、深く、甘く、熱い約束が込められていた。
Honeyがスタンの耳元で囁いた
「えぇ、ちゃんと取り返して。スタンにもっと愛してほしいから。…私を甘く、蕩けさせて…」
官能的なHoneyの囁き
その瞬間、スタンの内側で――
静かに張り詰めていた理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた気がした。
Honeyの吐息混じりの声が、耳奥をかすめるように届いて、その柔らかな囁きは言葉の体を成した媚薬そのものだった。
彼女の蕩けさせてという願いは、もはや命令よりも強い誘惑であり、スタンの本能を深く震わせる。
「……Honey、言葉の選び方、少し反則だぜ」
低く、押し殺すような声。
だけどその声には、すでに火が灯った獣の気配が滲んでいた。スタンはHoneyの耳元に口を寄せて、今度は彼の声で囁き返す。
「OK.わかった。アンタの望み通り、甘く、蕩けるくらい…俺の手と口で、どうしようもないくらいにしてやんよ」
そしてゆっくりと後ろから彼女を抱き寄せ、
その身体ごと自分の熱の中に巻き込むように、強く、優しく――抱きしめた。
Honeyがスタンに望んだ夜は、もう始まっていた。
その一言で、彼の愛はいつもの数倍、濃く、深く、そして…果てしなく甘くなる。
帰宅してからの待ちに待った瞬間
風呂場の扉が閉まる音がしてから、
スタンはまるで秒を数えるような心地で、静かに呼吸を整えていた。
それでも、内側では落ち着くどころか、
心臓が一秒ごとに高鳴っていく。
タオルで濡れた髪を乱雑に拭きながら、
彼の視線はつい、廊下の先――
Honeyがいるはずの寝室の扉に吸い寄せられる。
あの囁きが脳裏に蘇る。
「私を甘く、蕩けさせて…」
思い出すだけで、
湯でほてった肌の内側が再点火するようだった。
「待ってろ、Honey…」
呟く声は低く、獣のようにかすれていた。
彼女が“待っている。
今夜は、ただ求め合うだけじゃ足りない。
あの潤んだ瞳、熱を帯びた声、震える吐息、全部全部、ひとつ残らず受け止めて、
全身で、何度でも愛し尽くしたい。
バスタオルを無造作に腰に巻いたまま、ドアノブに手をかける瞬間、スタンの瞳は鋭く、けれど限りなく優しく笑った。
そこに、世界でただひとりの俺の女がいる。
そして彼女が望んでくれている。
もう、溺れにいく準備は整っている。
あとは、扉を開けるだけだった。
夕刻からのお預けは、スタンの理性を、じわじわ焼いていた。
ドアを開ければベッドに浅く座るHoney
控えめな笑みと、時折チラつかせる視線で、スタンの狩猟本能を焚き付けていく。
「…Honey」
Honeyが声に振り返る間もなく、ベッドに押し倒された。
目が合った時には、スタンの瞳はいつもの冷静を脱ぎ捨て、灼熱の獣そのもの。
長い愛撫も言葉もいらない。
指先、唇、舌、どれもがHoneyの急所を正確に撃ち抜く。
「――全部、感じてろ。今夜は、Honeyを壊れるほど、愛する夜だかんね」
快感の波が襲うたび、Honeyの意識はかき乱されていく。
抗おうとするたび、それを見越したスタンが次の攻撃を仕掛ける。
脚をすくい、腰を持ち上げ、甘噛みと共に耳元で囁く。
「アンタを……誰より、深く、知ってるのは俺だけでいい」
逃げられない。
スタンはHoneyの反応を読み切って、
その全てに対応する次の手を持っている。
まるで、一つの交わりでHoneyを限界のその先へ導くプレデター。
強くて、優しくて、支配的で、甘くて、獰猛。
最奥を抉り、繰り返し絶頂に誘った後――
Honeyの名前を、低く、熱く、耳元で囁いた。
「…何度でもイかせる。それが俺の雄だ、Honey――アンタだけの。」
Honey――アンタが「もっと」と願ったからには、スタンの本能が臨界突破するしかねえ。
溜めた分、倍で返す。全身で悦びに溺れさせる夜の後半戦――追撃が、始まった。
Honeyが一度、二度と頂に昇りきったはずの身体が、まだスタンの腕の中で小さく震えていた。
けれど、スタンの手も、唇も、まだ終わっていない。
「…終わりだと思ったか?俺がHoneyにもっと欲しいって言わせるまでは、まだ――足りねえ」
低く、囁くように、でも瞳は鋭く獲物を狙うような光。
スタンの掌がHoneyの太腿をなぞりながら、柔らかな熱の芯をもう一度起こしていく。
焦らしと寸止め。
そして、その合間に何度も優しく、しかし確信的にそこを責める。
「Honeyのココ、俺が触れるだけで反応してんすば。嘘つけない身体になったな…可愛い」
Honeyは既に理性がとろけて、甘い声が漏れるたび、スタンがさらに深く入ってくる。
喉を鳴らし、眉を寄せて、その身体をどこまでも受け入れようとするHoneyの姿に、スタンの喉も自然と鳴った。
「……堪んねえ。Honey、アンタの全部が欲しい。 さっきのは前哨戦だ。今からが、本当の狩りだかんね」
Honeyの足を抱え、深く、深く突き上げる。スタンの身体は汗で濡れていて、それでも動きは鋭く、正確で、情熱に満ちていた。
口唇も、舌も、指も、腰も、Honeyを悦ばせる為だけにあるかのように動く。
「Honey…もう限界か? だが、逃がさないかんね。アンタが俺を欲しがった分、俺も…それ以上を与えてやんぜ」
何度も、何度も。
心も身体も、Honeyを悦びで埋め尽くす。
最後は、お互いに名を呼びながら、
絶頂と共に息を絡め、抱きしめ合った。
「Honey…愛してる。アンタだけが、俺の本能をここまで狂わせる」
そして――腕の中で小さく震えるHoneyを、
汗ばんだ腕でしっかり包みながら、スタンは優しく囁いた。
「さあ、甘い夜はまだまだ続くぜ。アンタがもういいって言うまで…俺は終わらせないかんね」
スタンは、腕の中にすっかり力を抜いて眠るHoneyの髪に唇を落としながら、深く静かに息をついた。
「……完敗だな、Honey」
身体中に残る熱と甘さの余韻は、まるで恋をしているという証そのもののようだった。
あの囁き、あの視線、震えながらもこちらを求めてくる柔らかな指先。
どれ一つとして見逃せなかった。
いや、きっと見逃したくなかったのだ。
「全部、受け止めるつもりだったんよ――気づけば、お前にのまれてた」
彼女の声、肌、吐息――その全部がスタンの理性を甘く絡め取り、解けさせる。
Honeyを甘く蕩けさせるつもりが、気づけば自分の方が溺れていた。
彼女の頬に手を添えて、そっと撫でながら呟く。
「これ以上はもうないと思う度、毎回まだ先があるって教えてくれんのはアンタなんよ」
今夜の彼女も、昨日とは違う表情を見せ、知らなかったHoneyの奥深くまで触れさせてくれた。
それが、たまらなく嬉しくて、それが、もうどうしようもなく愛しい
「Honey、これからも毎晩、アンタに負け続けんぜ」
その低く甘い声に応えるように、
眠っていたはずのHoneyが、そっと彼に身を寄せてきた。
愛し合うほど、欲し合うほど、2人の距離は、もう限りなくゼロに近づいていた。
朝日が差し込む静かな寝室。
肌に落ちる陽のぬくもりより、今この腕の中にいるHoneyの体温のほうがずっと甘く、柔らかく――愛おしい。
昨夜、何度も甘く激しく求め合ったせいか、Honeyはいつもより深く眠っていた。
目元は少し赤く、唇は僅かに腫れている。
それはスタンが何度も触れて、愛を刻んだ証。
「…Honey、可愛すぎて朝からキスしたくなんよ。 もう、止めらんねえな」
頬に、瞼に、額に。
優しく触れるキスをひとつずつ落とすと、Honeyが微かに身じろぎし、蕩けた声で、眠たげに囁いた。
「…ん…スタン…もう朝?……ふふ、幸せ…」
その声を聞いた瞬間、スタンの胸の奥に、ズキュンと来る好きの衝動が湧き上がった。
目を開けたHoneyが、
とろんとした瞳で見上げてきて、スタンの胸元に顔をうずめる。
「…スタンの匂い、いっぱい…ふふ。溶けちゃいそう」
そんなこと言われたら、こっちが溶ける。
優しく背中を撫でながら、スタンはHoneyの耳元に囁く。
「なら、とことん溶かしてやんよ。
朝から、好きが溢れて止まんねえ」
指先がHoneyの髪をすくい、頬をなぞる。
愛しい、愛しい、何度でも言いたい。
この世界にHoneyほど美しく、愛おしい存在はいない。
ゆっくり、でも情熱を孕んだキス。
昨夜の激しさとは違う、甘く、優しく、でも深く舌を絡め合う。
Honeyの唇が、スタンの愛に応えるように吸いついてくる。
その様子に、スタンは思わず笑みをこぼす。
「朝からそんな可愛い顔されたら、出掛けられなくなんじゃん」
「…じゃあ、出掛けるまでキスしてて」
その願いに、断る理由なんて、あるわけがない。
軽く唇を重ねるだけだったキスが、いつの間にかまた深くなっていく。
髪を撫で、首筋に唇を落としながら、スタンはとろける朝に酔いしれていた。
「Honey……今日も綺麗だぜ。 アンタを見てるだけで、心が満たされんね。…もう一回、キスさせな」
そう言って重ねた唇は、優しさと熱の入り混じった、まさに愛そのものだ。
離れがたい2人。
「…スタン、今日も頑張ってね。でも…あと1分だけ、こうしてて?」
「あぁ。アンタが望むんなら、あと10分だって」
甘くて、ぬくもりに満ちた朝。
触れ合い、見つめ合い、想い合って始まるふたりの日常。
それは、何よりも幸せな愛のかたちだ。
「好きだ、Honey。何度でも言う。好きすぎる」
……ふふっ。
手が止まる。頬がほのかに色づいて、微笑みが漏れる。
スタンのあの低くて甘い声、優しくて強くて…あの瞳――私だけを見ている瞳を思い出すたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。
スタンが私を幸せにしたいって目で見てくれるだけで、こっちの方が幸せになっちゃうわ
……あぁ。早く会いたいな
一方その頃、スタンは演習場横の指令室で、ゼノとタブレットを覗き込みながら、飛行訓練のデータを確認していた。
制服の袖をたくし上げ、モニター越しに映る数値に目を細める。
ゼノ:「……この速度変化、Honey君が設定した薬剤の影響か?」
スタン:「ああ。あいつ、朝の段階で読み切ってた。できるヤツ」
ゼノは少し口角を上げ、唇を押さえながらうなずく。
ゼノ:「君と暮らすようになってからのHoneyは、妙に感情豊かになった。それはつまり、君のせいだな、スタン」
スタン:「……なら、誇らしく思うべきだな」
思わず微笑む。あのベッドでの朝の声、名前を囁き返してくれたHoneyの唇――
不意に頭を過ぎり、表情が少しだけ緩む。
ゼノ:「……ん?今、ニヤケただろう。Honey関連だな」
スタン:「……口を閉じろ、ゼノ。書類にコーヒー零すぞ」
ゼノ:「ふはは。どうにも幸福な軍人というのは、からかい甲斐がある」
スタンはため息混じりに苦笑しながら、言葉を返す。
スタン:「黙ってろ。……Honeyの帰りが待ち遠しいんよ。それだけだ、ゼノ」
ゼノ:「まったく……君という男は、愛に忠実すぎるね」
その声にスタンは小さく笑って、再び画面を見つめた。
お前が思うより、俺の方がずっと――会いたいと思ってる
午後の風は静かに吹いて、スタンの軍帽を少し揺らした。
スタンはゼノの隣で立ち止まった。視線は遠く、研究棟ロビー奥のソファスペース――
Honeyの周囲で何やら盛り上がっていたアマリリス、そして記者の北東西。
彼女たちの楽しげな様子に混ざるようにHoneyがいたが、ひときわ頬を紅潮させ、身じろぎしながらソファに座っていた。
アマリリスが何かを囁き、それに反応するようにHoneyがぽつりと呟いたかと思えば――
スタンの視線がぶつかった、その瞬間。
Honeyはサッと立ち上がると、彼女らに軽く頭を下げるようにしてロビー奥の研究室へと姿を消した。
……今の、なんだ?
スタンは眉を寄せた。
あの仕草、視線をそらし逃げるように去っていった様子は、まるで何か後ろめたいことがあったかのようだ。
ゼノが腕を組んだまま言った。
ゼノ:「……君には心当たりがあるように見えるが?」
スタン:「あいつの顔……」
スタンは小さく鼻を鳴らす。
あの顔は、Honeyが恥ずかしがる時に見せる表情だ。
スタン:「俺を避けて研究室に逃げたって、無意味だ。あいつがどれだけ顔を赤くしようと、俺の目を逸らせるわけがないかんね」
ゼノ:「ふむ。ということは、紅潮の理由がわかっていて黙っているのか。意地が悪いな、スタン」
スタン:「違え。……意地が悪いんじゃねえ。
あいつが恥ずかしがる姿を、少しでも長く見ていたいだけだかんね」
ゼノ:「……君、完全に恋に毒されてるな」
スタンは一歩、研究室のドアへと向かって歩き出す。
その背には、さっきまでHoneyがいたソファの残り香――
甘い香りが鼻をかすめた。
逃がさねぇよ、Honey。今夜、理由をきっちり聞かせてもらう。
冷静な視線の奥に、僅かに熱を帯びた狩人のような光が灯っていた。
スタンは、Honeyの姿を遠くから何度か目で追っていた。
白衣の裾を揺らしながら、資料を抱えて廊下を足早に通り過ぎる彼女。研究端末を覗き込んでは、真剣な表情で何かを打ち込んでいる。
──普段通りに見せかけて、いつもより数段よそよそしい。
……あいつ、あからさまに俺から逃げてる
それは確信だった。
Honeyの視線が、スタンにぶつかりそうになるたびにわずかに軌道を逸らされる。
口を開いて話しかけようと近づけば、まるでタイミングを読まれたように誰かとの用事でその場を離れていく。
……これは、確信犯だ
思わずスタンは、煙草の箱に手を伸ばしかけたが、途中でやめた。
逃げるHoneyも、悪くねえ
何かやましい話をされて、顔を紅潮させていた彼女。
それを隠すように――けれどつい意識しすぎて挙動が不自然になってる。
頑張って平静を装っているつもりでも、スタンの目は誤魔化せない。
スタンの目には、遠巻きでもHoneyの緊張がわかった。
いつもより背筋を伸ばし、指先をきゅっと握り、会話ではなく数字や結果に集中しようとする様子。
だがそれが、却って彼女の可愛さを引き立てていた。
いつものHoneyとは違え。だが、これも俺だけが知ってるHoneyだ
鼻の奥に残る、今朝のボディークリームの微かな香りがふと蘇る。
スタンの視線が、微かに熱を帯びた。
「……仕方ねえな」
そう呟いて、スタンはわざと少しだけ脚音を立てて歩き出した。
廊下の奥、研究エリアのガラス越しにいるHoneyが、わずかにピクリと肩を揺らす。
気づいてんじゃねぇか、Honey
追いつく気満々の足音――
だがそれが、彼女の鼓動をさらに高鳴らせると知っていて。
この小さな追いかけっこが、Honeyの可愛い焦りを見られるなら――
スタンにとっては、もったいない時間ではなかった。
ついに――捕まえた。
午後の終わりが近づき、研究員たちが一段落して各自の持ち場を離れ始める時間。
スタンは、廊下の突き当たり、静かなバックヤード近くの角である確信を持って立っていた。
Honeyが最後に持っていた資料は、間違いなくその近くの棚に返すものだった。
逃げ道が少なく、出会い頭で鉢合わせしやすい構造になっていることも――スタンは熟知している。
そして足音が近づく。
コツ、コツ、……
Honeyのヒール音だ。
緊張のせいか少し早足で、けれど強がるようにリズムは崩れていない。
曲がり角を曲がった瞬間――
「……っ!」
Honeyが立ち止まった。
前方には、まるで最初からここで待っていたとしか言えないスタンの姿。
「逃げ足、悪くなかったぜ」
ゆっくりと、だが確実に距離を詰めながらスタンが言った。
Honeyは少し肩をすくめ、ほんの一瞬だけ後ずさったが、それ以上はもう逃げなかった。
視線を逸らしながら、唇をきゅっと結ぶ。
頬は――まだ少し赤い。
「だって、あんな話……聞かれてたかもと思ったら……恥ずかしくて……」
「……なるほどな」
スタンは一歩、また一歩と距離を詰める。
Honeyの背が、壁に軽く当たった。
「なら……どうする?」
低く甘い声。
Honeyの睫毛が震え、小さく口が開いた。
「……逃げても、追いつくんだもん。……だったら、もう……好きにして、スタン」
その一言に、スタンの口角が緩む。
「最初からそのつもりだったぜ」
そして、誰もいないバックヤード前の空間――
ふたりの距離は、もうゼロになる。
優しく、しかし熱のある手がHoneyの頬に触れ、唇に――静かに、触れた。
それは、捕まえた報酬でもあり、彼女の逃げ切れなかった可愛さに与える褒美のような、優しいキスだった。
そしてHoneyは、そっとスタンに身体を預けた。
ようやく捕まった安心と、少しだけ悔しさと――でも何より、愛おしさに包まれて。
スタンは、Honeyを捕まえた後すぐには問いただしたりはしなかった。
彼はそういう時、一呼吸置く。
甘いキスを交わし、しばらく彼女の体温を確かめてから――少しだけ肩の力が抜けたHoneyを、ふと軽く見下ろして聞いた。
「で、今日の逃避行の理由は?」
Honeyはびくりと肩を揺らし、小さくうつむいた。頬がまた赤くなる。さっきまでより、さらに濃く。
「……アマリリスにね、変な物をすすめられたの。女性用の……その、媚薬っというか……体が敏感になる香油みたいなもので……好奇心で受け取っちゃったんだけど……昨夜のこと思い出して、私……それだけで……もう……」
そこまで言って、顔を両手で覆ってしまったHoney。
きっと耳まで真っ赤。
スタンは一瞬、固まった。
その後、ふっと鼻から短く息を吐き、
背後の壁に手をついてHoneyの横顔を覗き込む。
「……Honey」
低い声。
その音色には、笑ってるような、でも確かに煽られた獣の気配も宿していた。
「俺が、昨夜のアンタを思い出すだけでどうなってっか……知っててそれ言ってるん?」
「し、知らないわよ……っ!」
Honeyの反応はまさに可愛い自爆で、スタンの口元がくいと上がる。
彼女の紅潮した頬の熱を指先で確かめながら、スタンは心の中で呟いた。
なるほど、そういう理由か。
アマリリス、相変わらずロケット級の爆弾投下してくれるな。
とはいえ、その爆弾はスタンの本能を直撃する類の代物だった。
思わずHoneyの腰に回した手に、ほんの少し力がこもる。
「で、その……貰ったブツは、どこよ?」
「へ、部屋の引き出しに……しまってあるけど……」
「使うつもりは?」
「い、今は……だって、昨日のでまだ足が……」
「そっか」
スタンは目を細めて、もう一度Honeyの唇にキスを落とした。
優しく、しかしどこか約束のように。
使うかどうか
それはHoneyの意志がすべてだ。
だが、もしその気になった時のために。
スタンは心の中で決めていた。
本能と愛情の、境界を甘く溶かす夜が来るその時、Honeyが望むなら――その香油も、二人の時間のスパイスにしてみせる、と。
けれど今日のところは、彼女の恥じらいとその理由を知れたことが、何よりも嬉しくて愛おしくて。
今夜は――優しく、でもしっかり抱きしめよう。そんな風に、スタンは思っていた。
「…ねえ、スタン。さっき言ってた スタンが、昨夜の私を思い出す とどうなるの?」
Honeyが控えめに、潤んだ瞳で聞いてきた。
スタンは、その問いに一瞬だけ言葉を失った。
Honeyと名を呼びかけかけて、途中で止まる。彼女の潤んだ瞳に、無垢な好奇心と、わずかな甘えが混じっていて、それが、たまらなく可愛かった。
彼女は本当に知らないのか、それとも知っていて聞いているのか。
……どちらにしても、もう遅い。
ゆっくりとHoneyの腰を引き寄せ、壁際にそっと追い込む。
そのまま、視線を合わせたまま低く囁いた。
「……アンタが、あんとき見せた全部が、脳に焼き付いてっからね。何度思い出しても、鼓動が早くなって、喉が乾く。……正直、今もギリギリだな」
そう言った直後、スタンの瞳の奥の抑えた欲情が、はっきりと浮かぶ。
手のひらがHoneyの頬に触れ、その温もりに包み込むようにキスを――ほんの数秒、長めに、けれど柔らかく落とした。
離れ際、小さく笑って付け加える。
「……だから、そんな目で聞くのは反則だぜ、Honey」
スタンの声には、普段の理性の奥にある本能の熱がじわりと滲んでいた。
そしてそれは、Honeyの心を再び、甘く震わせることになる。
「スタン…私もね、昨夜のスタンが私を愛でる目をしながら幸せそうにしていて、それだけで心が満たされていたの。今日も早くスタンに会いたいって思っていたのよ。…薬の件でまさかこんな事態になるとは思ってなかったのだけれど…」
素直に気持ちを伝えるHoney。
スタンはHoneyの言葉に、ゆっくりと瞼を伏せてから、ふっと息をついた。
それは安堵と、愛しさが一度に胸にこみ上げた証。
彼女の素直な気持ちが、まっすぐにスタンの内側を貫いてくる。
まるで、その一言一言が、心臓の柔らかい部分を包み込むようだった。
――そして、スタンは口元にほんの少し笑みを浮かべながら、Honeyに近づく。
「……俺もなんよ、Honey。アンタに会いたいっつう気持ちは、どんな訓練よりも強烈だ。会えない時間に何度、声が聞きたくなって、触れたくなったか……数え切れないくらいにな」
彼はそう言いながら、Honeyの頬にそっと手を添える。
その手には強さも優しさも、確かな熱もこもっていた。
「……媚薬なんて関係ない。アンタが俺を求めてくれる、それだけで俺には充分すぎるほどの効き目だかんね」
そう囁くと、額をそっと寄せて、Honeyのぬくもりを確かめるようにそっと触れる。
「……だが正直、アンタの頬が紅くなって、俺を避けた理由がそれだったとわかったとき――
可愛すぎて、こっちがどうにかなっちまうかと思ったぜ」
声は低く落ち着いているのに、瞳の奥は明らかに理性が揺らいでいる色を宿している。
そして最後に、囁くように。
「今夜、ちゃんと取り返させてもらうかんね、Honey」
その言葉には、深く、甘く、熱い約束が込められていた。
Honeyがスタンの耳元で囁いた
「えぇ、ちゃんと取り返して。スタンにもっと愛してほしいから。…私を甘く、蕩けさせて…」
官能的なHoneyの囁き
その瞬間、スタンの内側で――
静かに張り詰めていた理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた気がした。
Honeyの吐息混じりの声が、耳奥をかすめるように届いて、その柔らかな囁きは言葉の体を成した媚薬そのものだった。
彼女の蕩けさせてという願いは、もはや命令よりも強い誘惑であり、スタンの本能を深く震わせる。
「……Honey、言葉の選び方、少し反則だぜ」
低く、押し殺すような声。
だけどその声には、すでに火が灯った獣の気配が滲んでいた。スタンはHoneyの耳元に口を寄せて、今度は彼の声で囁き返す。
「OK.わかった。アンタの望み通り、甘く、蕩けるくらい…俺の手と口で、どうしようもないくらいにしてやんよ」
そしてゆっくりと後ろから彼女を抱き寄せ、
その身体ごと自分の熱の中に巻き込むように、強く、優しく――抱きしめた。
Honeyがスタンに望んだ夜は、もう始まっていた。
その一言で、彼の愛はいつもの数倍、濃く、深く、そして…果てしなく甘くなる。
帰宅してからの待ちに待った瞬間
風呂場の扉が閉まる音がしてから、
スタンはまるで秒を数えるような心地で、静かに呼吸を整えていた。
それでも、内側では落ち着くどころか、
心臓が一秒ごとに高鳴っていく。
タオルで濡れた髪を乱雑に拭きながら、
彼の視線はつい、廊下の先――
Honeyがいるはずの寝室の扉に吸い寄せられる。
あの囁きが脳裏に蘇る。
「私を甘く、蕩けさせて…」
思い出すだけで、
湯でほてった肌の内側が再点火するようだった。
「待ってろ、Honey…」
呟く声は低く、獣のようにかすれていた。
彼女が“待っている。
今夜は、ただ求め合うだけじゃ足りない。
あの潤んだ瞳、熱を帯びた声、震える吐息、全部全部、ひとつ残らず受け止めて、
全身で、何度でも愛し尽くしたい。
バスタオルを無造作に腰に巻いたまま、ドアノブに手をかける瞬間、スタンの瞳は鋭く、けれど限りなく優しく笑った。
そこに、世界でただひとりの俺の女がいる。
そして彼女が望んでくれている。
もう、溺れにいく準備は整っている。
あとは、扉を開けるだけだった。
夕刻からのお預けは、スタンの理性を、じわじわ焼いていた。
ドアを開ければベッドに浅く座るHoney
控えめな笑みと、時折チラつかせる視線で、スタンの狩猟本能を焚き付けていく。
「…Honey」
Honeyが声に振り返る間もなく、ベッドに押し倒された。
目が合った時には、スタンの瞳はいつもの冷静を脱ぎ捨て、灼熱の獣そのもの。
長い愛撫も言葉もいらない。
指先、唇、舌、どれもがHoneyの急所を正確に撃ち抜く。
「――全部、感じてろ。今夜は、Honeyを壊れるほど、愛する夜だかんね」
快感の波が襲うたび、Honeyの意識はかき乱されていく。
抗おうとするたび、それを見越したスタンが次の攻撃を仕掛ける。
脚をすくい、腰を持ち上げ、甘噛みと共に耳元で囁く。
「アンタを……誰より、深く、知ってるのは俺だけでいい」
逃げられない。
スタンはHoneyの反応を読み切って、
その全てに対応する次の手を持っている。
まるで、一つの交わりでHoneyを限界のその先へ導くプレデター。
強くて、優しくて、支配的で、甘くて、獰猛。
最奥を抉り、繰り返し絶頂に誘った後――
Honeyの名前を、低く、熱く、耳元で囁いた。
「…何度でもイかせる。それが俺の雄だ、Honey――アンタだけの。」
Honey――アンタが「もっと」と願ったからには、スタンの本能が臨界突破するしかねえ。
溜めた分、倍で返す。全身で悦びに溺れさせる夜の後半戦――追撃が、始まった。
Honeyが一度、二度と頂に昇りきったはずの身体が、まだスタンの腕の中で小さく震えていた。
けれど、スタンの手も、唇も、まだ終わっていない。
「…終わりだと思ったか?俺がHoneyにもっと欲しいって言わせるまでは、まだ――足りねえ」
低く、囁くように、でも瞳は鋭く獲物を狙うような光。
スタンの掌がHoneyの太腿をなぞりながら、柔らかな熱の芯をもう一度起こしていく。
焦らしと寸止め。
そして、その合間に何度も優しく、しかし確信的にそこを責める。
「Honeyのココ、俺が触れるだけで反応してんすば。嘘つけない身体になったな…可愛い」
Honeyは既に理性がとろけて、甘い声が漏れるたび、スタンがさらに深く入ってくる。
喉を鳴らし、眉を寄せて、その身体をどこまでも受け入れようとするHoneyの姿に、スタンの喉も自然と鳴った。
「……堪んねえ。Honey、アンタの全部が欲しい。 さっきのは前哨戦だ。今からが、本当の狩りだかんね」
Honeyの足を抱え、深く、深く突き上げる。スタンの身体は汗で濡れていて、それでも動きは鋭く、正確で、情熱に満ちていた。
口唇も、舌も、指も、腰も、Honeyを悦ばせる為だけにあるかのように動く。
「Honey…もう限界か? だが、逃がさないかんね。アンタが俺を欲しがった分、俺も…それ以上を与えてやんぜ」
何度も、何度も。
心も身体も、Honeyを悦びで埋め尽くす。
最後は、お互いに名を呼びながら、
絶頂と共に息を絡め、抱きしめ合った。
「Honey…愛してる。アンタだけが、俺の本能をここまで狂わせる」
そして――腕の中で小さく震えるHoneyを、
汗ばんだ腕でしっかり包みながら、スタンは優しく囁いた。
「さあ、甘い夜はまだまだ続くぜ。アンタがもういいって言うまで…俺は終わらせないかんね」
スタンは、腕の中にすっかり力を抜いて眠るHoneyの髪に唇を落としながら、深く静かに息をついた。
「……完敗だな、Honey」
身体中に残る熱と甘さの余韻は、まるで恋をしているという証そのもののようだった。
あの囁き、あの視線、震えながらもこちらを求めてくる柔らかな指先。
どれ一つとして見逃せなかった。
いや、きっと見逃したくなかったのだ。
「全部、受け止めるつもりだったんよ――気づけば、お前にのまれてた」
彼女の声、肌、吐息――その全部がスタンの理性を甘く絡め取り、解けさせる。
Honeyを甘く蕩けさせるつもりが、気づけば自分の方が溺れていた。
彼女の頬に手を添えて、そっと撫でながら呟く。
「これ以上はもうないと思う度、毎回まだ先があるって教えてくれんのはアンタなんよ」
今夜の彼女も、昨日とは違う表情を見せ、知らなかったHoneyの奥深くまで触れさせてくれた。
それが、たまらなく嬉しくて、それが、もうどうしようもなく愛しい
「Honey、これからも毎晩、アンタに負け続けんぜ」
その低く甘い声に応えるように、
眠っていたはずのHoneyが、そっと彼に身を寄せてきた。
愛し合うほど、欲し合うほど、2人の距離は、もう限りなくゼロに近づいていた。
朝日が差し込む静かな寝室。
肌に落ちる陽のぬくもりより、今この腕の中にいるHoneyの体温のほうがずっと甘く、柔らかく――愛おしい。
昨夜、何度も甘く激しく求め合ったせいか、Honeyはいつもより深く眠っていた。
目元は少し赤く、唇は僅かに腫れている。
それはスタンが何度も触れて、愛を刻んだ証。
「…Honey、可愛すぎて朝からキスしたくなんよ。 もう、止めらんねえな」
頬に、瞼に、額に。
優しく触れるキスをひとつずつ落とすと、Honeyが微かに身じろぎし、蕩けた声で、眠たげに囁いた。
「…ん…スタン…もう朝?……ふふ、幸せ…」
その声を聞いた瞬間、スタンの胸の奥に、ズキュンと来る好きの衝動が湧き上がった。
目を開けたHoneyが、
とろんとした瞳で見上げてきて、スタンの胸元に顔をうずめる。
「…スタンの匂い、いっぱい…ふふ。溶けちゃいそう」
そんなこと言われたら、こっちが溶ける。
優しく背中を撫でながら、スタンはHoneyの耳元に囁く。
「なら、とことん溶かしてやんよ。
朝から、好きが溢れて止まんねえ」
指先がHoneyの髪をすくい、頬をなぞる。
愛しい、愛しい、何度でも言いたい。
この世界にHoneyほど美しく、愛おしい存在はいない。
ゆっくり、でも情熱を孕んだキス。
昨夜の激しさとは違う、甘く、優しく、でも深く舌を絡め合う。
Honeyの唇が、スタンの愛に応えるように吸いついてくる。
その様子に、スタンは思わず笑みをこぼす。
「朝からそんな可愛い顔されたら、出掛けられなくなんじゃん」
「…じゃあ、出掛けるまでキスしてて」
その願いに、断る理由なんて、あるわけがない。
軽く唇を重ねるだけだったキスが、いつの間にかまた深くなっていく。
髪を撫で、首筋に唇を落としながら、スタンはとろける朝に酔いしれていた。
「Honey……今日も綺麗だぜ。 アンタを見てるだけで、心が満たされんね。…もう一回、キスさせな」
そう言って重ねた唇は、優しさと熱の入り混じった、まさに愛そのものだ。
離れがたい2人。
「…スタン、今日も頑張ってね。でも…あと1分だけ、こうしてて?」
「あぁ。アンタが望むんなら、あと10分だって」
甘くて、ぬくもりに満ちた朝。
触れ合い、見つめ合い、想い合って始まるふたりの日常。
それは、何よりも幸せな愛のかたちだ。