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序章





『僕を見てくれーーーーー』



その日、闇に打ち勝った騎士たちの歓声が響いた。

世界に光がさした。闇によってたくさんの人が、大切なものを失った。それでも歩み続けようという意思が人々から伝わってる。それのなんと美しいことか。我輩にはなかった勇敢さであった。
魔法界はまた再び光を取り戻したのだ。自らの手で、自らの力で!
一人の小さな英雄の背中に次いで、人々はまた一歩前に踏み出した。


そして全てを見届けた一つの魂は、世界から消滅した。







バリンッ──……

急に、なんの前触れもなくガラスの割れる音がした。
「何をした!!」
お父さんのどなり声が響く。ああ、また殴られた。

こわい、怖いよ…。私は何も知らない。ごめんなさい、もう何もしないから。もうなぐらないで!それすごくいたいの!!

わんわんと泣き叫んでも誰も助けてくれない。益々お父さんの殴る力が強くなるだけだった。お母さんは部屋の隅で、震える土色手足を押さえ込んでいた。ごめんなさい、ごめんなさいーーーー。ぶつぶつと意味のない懺悔をしているようだった。

またひとつ何かが割れる音がした。
私の心を表すかのように、窓ガラスからミシミシと音がする。ーーーーおちついて、心をとざざすの。いつものように。そうすればいつのまにか全てがおわっているはずだから。心をなくして、見えないようにしたら。




ほら、音が消えた。


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