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それは甘い


 佐藤くんと目が合ってから3日目。月曜日は入学式のみ。昨日の火曜日は校内を見て回って、授業はほとんどオリエンテーションのみ。そして今日から本格的に授業開始。昨日のLHRで今日から部活動の見学が可能と言うことを聞いていたので、放課後は真希とグラウンドで行う部活を中心に見に行こうと約束していた。


「音はどこか入る予定なの?」
「んー、私は家の手伝いをしたいから帰宅部の予定かなぁ」
「え?お家でなにかやってるの?」
「シーサイドブルーっていうカフェ屋を経営してるんだよね」
「知ってる!音はそこの娘なのかー」
「実はそうなんですー」

 そう、私の家はカフェ屋を営んでいる。お兄ちゃんがいるから私が継がなきゃいけないわけではないけど、お手伝いは昔からしているので、高校でも手伝おうと思っていた。結構接客も楽しいし!友達も来てくれるからなー!


「じゃあわざわざ付き合わせちゃったね」
「ううん!良いのがあればマネージャーくらいならやってみたいと思ってたし」
「音がマネージャーやるの、似合いそう」
「そう?なにか出来るのあるかなぁ?」


 グラウンドに着き、テニス、陸上、野球、と見てきたが、真希は元々野球部のマネージャーに興味があったらしい。野球部をしばらく見た後、監督さんに話して名前を書いてきていた。御目当ての部活を見れたのだから帰っても良かったけど、せっかくだから音のマネージャー候補も探そう!と最後にサッカー部を見にきた。


*****



 サッカー部の練習場に着いたのはいいものの、女の子が結構いる。みんなマネージャー志望なのかな。こんなにいっぱいいるならマネージャーになんてなれなさそうだから真希に断るも、せっかくだし、と言うことでみんながいる見学の場所へと向かう。向かう際にサッカー部の練習している先輩や見学中の女の子達が「1年生の姫がいる」とざわつき始めた。どーゆうこと?たしかに真希は美人だけど、いつのまに姫って呼ばれてるの?


「ねぇ、真希ってお姫様なの?」
「え?」
「さっきからみんな1年生の姫って言ってるから。真希の家はお金持ちなの?」


 そうやって真希に言うと怪訝そうな顔をして私の顔をじっと見てくる。すこし溜息を吐かれると、まぁ、そんなところも可愛い要素の一つだけど、と言われる。なんか、変なこと言ったかな?


「それ、私じゃないよ。音のことだよ」
「え?わたし?」
「そうだよ!音って入学前から結構有名なんだよ!今年の1年生に可愛い子が入ってきた、って!」
「えぇー、そんな私、姫ってキャラじゃないし…」


 姫って私のことなの?真希が言うには、入学前のオリエンテーションで来た時に可愛い子がいる、と噂になったらしい。しかもその日は普通に授業もあったから、先輩たちも知っているようだ。…たしかに何人かの先輩とはすれ違ったりした。

 半信半疑で真希の話を聞いていると、不意に危ない!と大きな声が聞こえ、声のした方に振り向くとサッカーボールが飛んできている。これ、ぶつかるやつじゃん!と瞬時に判断して腕を顔の前に出して防御の体制を取るが、ぎゅっと誰かに包まれて一向に痛みは来ない。不思議に思い目を開けて顔を上げてみる。女の子の悲鳴と、男の子のどよめき声と、真上から大丈夫?という声が聞こえてきた。キス出来るくらい近く、お互いびっくりして抱き留められていた体を素早く離された。


「怪我はしてない?」


 ちょっと顔を赤らめて私の体を包んでくれていたのは新入生代表の佐藤くんだった。体育館で聞いた、あの優しい声をこんな間近で聴けるなんて。


02.3センチ
(あと3センチ近かったらちゅーするところだった)
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