episode27 ユッキータイム

今日はユッキータイムの日。

姫が朝からそわそわワクワクしている。

『ママ、ほんと?』
「うん、今日はユキとずっと一緒だよ」

『やった~!』
手をグーにしてジャンプしている姫は
4歳になった。

もちろんhydeタイムの日もあるけど
私にとってユッキータイムは特別なのである。

朝からユキが帰って来るのを
まだかまだかと待っている姫は
お昼を食べてうとうとしてしまったようだ。

「寝る?」
『やだ!』

待っていたいのと眠たいのが紙一重で
愚図りだす。

そのうちどうしていいか分からなくなって
泣き出してしまった。

『抱っこ~』
「はいはい」

そうこうしてるうちに
ガチャっと聞こえた玄関の音も耳に入らない。

「どうした?」

ユキはケーキの入った箱をテーブルに置くと
変わると言って姫を抱き抱えた。

『ユッキー…』

小さな声で名前を呼んだかと思うと
小さな腕でぎゅっとユキの首にしがみつく。

そして寝息を立て始めた。

私とユキで微笑み合う。

愛しい愛しい小さな姫とユキと三人。
今日は三人だけで過ごすユッキータイム。

「重くなったな」
そう言いながら姫を抱えたままソファーに座った。

「痺れるかな?」
ユキが満面の笑みで言う。

『降ろす?』
「ん~、大丈夫」

ユキは姫の匂いを嗅いだり
髪をなでたり。

子供なんて寝てる時に何をしても起きないのは
あるあるなんだと思う。

ユキをパパと呼ばせたくても呼ばせられない。
パパが三人いると言わせられない。

パパはてっちゃん。
ユキとhydeは同居人。

だから二人目も作らない。
姫には悲しい思いをさせるかもしれないけど
将来を考えて皆で決めた。

思い切り姫を独り占めして欲しくて
私が作ったユッキータイム。

本当の家族団欒。

t『は?』
h『何でやの?』

その頃、hydeとてっちゃんは
ホテルの廊下で顔を見合わせていたらしい。

ユッキータイムの日は
hydeとてっちゃんは家には帰って来ない。

t『だからって』
h『こんな偶然、普通はないよな』

別々に予約した宿泊場所が重なり
偶然にも部屋が隣同士。

どんだけだよって言い合いながら
話すのは姫の事ばかり。

h『じゃあ後で行くわ』
t『覚悟しとけ』

てっちゃんはhydeにスマホを見せびらかし
二人してニヤついていたとさ。
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