episode26 tetsuya

『河南行くで!』

てっちゃんに連れ出された夜。

タクシーに乗って行き着いた場所は
ライブハウスだった。

今日も賑わうここは
私の誕生日ライブをしてくれた場所だ。

たくさんのミュージシャンが
誕生日を祝ってくれたのを思い出す。

そして今度は手を繋いで夜の街に出る。

温かいてっちゃんの手はとても安心する。

これまでてっちゃんには
本当に色々と助けてもらったと
てっちゃんの横顔を見て実感する。

それに気付いていたのか
てっちゃんの繋いだ手に力が入る。

『ちゃんと手繋がないと迷子になるで』

「もう・・・」

笑い合う。

お互い思い出すのは私が上京してすぐ
会社からの帰り道が分からなくて
迷子になって
yukihiroやhyde、てっちゃんが探しに来てくれた。

クリスマスパーティーをした日も
てっちゃんのマンションに行く途中で
迷子になった。

妊娠した時もそうだった・・・

いつも探しに来てくれるのはyukihiroで
てっちゃんはどっしり構えて
部屋を暖かくして帰りを待ってくれていた。

そんなことを思い出すと
私も繋いだ手に力が入る。

「てっちゃん、いつもありがとう」

何も返事が帰ってこないけど
優しく微笑んで頭を撫でてくれる。

てっちゃんの包容力が大好き。

いつも通るこの道。

私たちの人生を歩んだ道と言ってもいい程
この道を忙(せわ)しなく掛けていった。

今は姫がいるからかな
ゆったりとした時間が流れている。

バーの少し重たいドアを開けると
見慣れた光景。

この場所も思い出のひとつ。

よく来ていた。

私がhydeとyukihiroとてっちゃんと
このままでいいのかなって悩んで
呑みに来た場所でもある。

静かな時間が流れる。

帰りの公園のベンチで寄り添い合う。

「いろいろ思い出すね」

『せやなぁ』

繋いだ手は離さない。

『いろいろ苦労かけたな』

「ううん、私も迷惑いっぱいかけたよね」

何だか感情的になって涙が溢れる。

それをてっちゃんが親指で拭ってくれる。

二人きりの空間を月明かりが照らし
目と目が合えば自然に触れ合う唇。

深くなる行動は闇夜に包まれて
抑えられない欲望を吐き出す。

ふとユキパパといる姫を思い出すも
やはり女の私の意識はもうてっちゃんの中。

『河南、愛してる
だからこれからもずっと俺達の傍にいてや』

「ずっとずっと傍にいる」

繋いだ手を離さないように
温かい温もりが続くように
私とてっちゃんは流れ星に願いを込めた。
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