episode24 hyde

『河南、たまには呑みに行こうか』

姫から離れて息抜きに連れ出してくれたのはhydeだった。

この所ラルクとして多忙を究めていたパパ勢は決めていた。

クリスマスも音楽番組やらで
まともに河南と姫の顔を見ていなかった。

年も明け活動にゆとりが出て
てっちゃんがオフを決めたのだ。

いってらっしゃいと小さな手を振って
満面な笑みを見せてくれた姫は
ユキパパとてつパパと居られてご機嫌な様子。

大丈夫かな?と心配になりつつも
嬉しさは隠しきれない。

車に乗ればすぐに世界が変わる。

『河南、愛してるよ』

hydeのその声に母を忘れて女になる。

照れるだけしか出来なくて
赤くなる河南をhydeはにこやかに
見つめていた。

『久しぶりのデートやね』
「うん」

緊張してしまって上手く会話が出来ない。

hydeがエスコートしてくれて
最近では買い足してない洋服が
抱えきれないほどの紙袋に収まっている。

シンプルなディナードレスに身を包み
有名なレストランで食事をとる。

乾杯をするとhydeが話し始める。

『今日、何の日か覚えとる?』
「うん・・・覚えてる」

笑い合う。

あれは私が初めて東京に来た日
交差点で私たちは出逢った。

誘拐されると思った相手が今は旦那様。

あの時、送ってくれると言いながら
私の汚れたスーツと
折れたヒールを買い直してくれたのを
よく覚えている。

あのスーツとヒールは今もクローゼットに
閉まってある。

『あの時の河南の顔
今でも忘れられないよ』

いたずらに笑うhydeを睨み付ける。

「怖かったんだからね」

ワインを飲みながらふて腐れる。

『そんなお前が可愛いよ』

またあの目をする。

hyde特有の誰でも虜にさせる目。

ワインとhydeにもう酔いそう。

レストランを出る。

帰りたくないって気持ちと
帰らなきゃって気持ちが交差する。

そんな私を見てか
hydeがぎゅっと腰に手を回す。

そして優しく唇を親指でなぞる。

うるさくなる胸。

そのままhydeがキスをする。

時が止まったかのような感覚に襲われる。

「ん・・・」

このままhydeに流されちゃう・・・

「hyde、ダメだよ、バレちゃう」

途切れ途切れの言葉。

『ええよ』

低い男の声。

感じてしまう。

するとhydeが笑った。

『かわええ』

唇が離れたのと同時に
からかわれたと確信した。

「もう!」

はだけ始めてたストールを巻き直し
hydeと反対方向に歩き始めたのもつかの間
腕を引かれhydeの胸にすっぽり収まる。

おでこにキスされると
そのままhydeの車でその場を離れた。

帰宅したのは日付が変わってから。

夢のような時間が終わる。

まるでシンデレラになったよう。

その頃
姫はてつパパと眠っていたのでした。
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