episode22 絆

「話…する?」

河南は目の前に建つ
今の住まいにtetsuyaを招いた。

その小さな部屋には
見覚えのある写真立て。

それを河南は変わらずに飾っていた。

慣れた手付きで赤ちゃんをベッドに寝かせる河南。

目を合わせることなく
河南が話始めた。

「離婚届出してないんだね」

するとtetsuyaは河南を抱きしめた。

『ごめん…』

tetsuyaの腕を解く。

「私は大丈夫だから
早く出して」

さらに河南は続けた。

「私の方こそごめんね」

自分が三人を選んだからいけなかったと
そう言って写真立てを伏せる。

tetsuyaの顔を見たら
もう依存してはいけないのだと改めて思っていた。

どこかでまだつなぎ止めて置きたくて
出されない離婚届に甘えていた。

けじめをつけなきゃいけないと。

黙って聞いていたtetsuyaは
強引に河南を抱きしめた。

「離…して」

『離さへん』

tetsuyaの強い口調に
もう離れるって決めたのに
気持ちが揺らぐ河南。

『離婚なんてせえへん』

河南の頬に流れる一粒の涙。

「子供…てっちゃんの」

子供じゃないって言おうとした口を
tetsuyaはふさいだ。

たとえyukihiroかhydeの子供だとしても
tetsuyaは覚悟して
河南を迎えに来ていた。

tetsuya一人と河南は結婚したわけじゃない。

tetsuya
yukihiro
hyde
三人と結婚したのだから。

言葉に詰まっている河南を助けるかのように
玄関のドアがノックされた。

覗き穴から外を覗き
更に体が動かない河南を見て
tetsuyaがドアを開けた。

tetsuyaには誰が来たのか分かっていた。

それは河南の反応からも分かった。

yukihiroとhydeの姿。

yukihiroもhydeもまた
覚悟して来ていた。

『僕の子供だよね』

離婚していない以上
戸籍はtetsuyaの子になる。

だけど本当はyukihiroの子供。

赤ちゃんの顔を見れば
父親が誰かなんてすぐ分かる。

世間的には不倫相手の子供になるのは確か。

だったら一人で育てた方がいい。

そう思っていた。

あの日、あの家を出た時にはもう妊娠していた。

夜遊びだってtetsuyaに叱られてから
またみんなを待ってみようって
そう思っていた河南が知った事実。

誰も帰ってこなくて不安で
押しつぶれそうだった。

だから楽になりたくて
逃げ出した。

お腹が大きくなるにつれて
産んでいいのか迷って
だけど愛した人の子供だから
簡単に終わらせたりしたらいけないって。

正直、三人の誰の子供なのか分からなかったけど
産んでみたらyukihiroの子供だってすぐに分かった。

切れ長の目が
顎のラインがyukihiroとそっくりだったから。

この関係を貫き通す?

それとも終わりにする?

h『ユッキーだけの子供やない』

t『俺たち4人の子供やん』

hydeもtetsuyaも声を合わせる。

どれだけ優しいの?
どれだけお人好しなの?


y『河南だからだよ』

yukihiroが河南を抱きしめた。

三人の愛は常に河南に向けられている。

t『一人で辛かったやろ…』

h『戻ってき』

一人でしんどいと何度思ったことだろう。

辛さを思い出したら
涙が止まらなくて号泣した。

母親の泣き声と同時に
赤ちゃんも泣く。

彼女をtetsuyaがあやす。

t『パパでちゅよ』

h『こっちもパパでちゅよ』

きょとんとした赤ちゃんは二人の顔を見ると笑った。

yukihiroが顔を見せたら
泣いた。

y『僕が本当のパパなのに』

再び戻った笑い声。

そして再び戻った生活。

何も変わらない。

三人が赤ちゃんをあやすなんて
誰が想像したかな。

相変わらずyukihiroには笑わない赤ちゃん。

全てを受け入れてくれたtetsuya。

hydeだって自由になれるのに
その気すらない。

これでいいのかな。

約束したよね。

みんなで一緒にいるって。

だからこれでいいんだよね。
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