episode20 愛しい人

それでも相変わらず空を見上げている必ずに
hydeは理由を聞いた。

目を瞑るとあの日のことが甦る。

跳ねられて
身体が地面に叩き付けられた瞬間の空は
真っ青に晴れていた。

お母さんが見えた気がして
死ぬんだって思った。

だけど生きていた。

「どんな日でも空は変わらないんだね」

『安心せえ、ずっと側におるから』

hydeもまた寄り添う。

河南はフルーツばかりを好む。

そればかりじゃいけないと
言っているけど
なかなか食べようとしない。

医師からは精神的ショックも原因のひとつだから
好きな物を食べさせてもいいと言われている。

河南はポツリと言う。

「お母さんのご飯食べたいな」

そればかりは叶えられない。

hydeは自分が何か作ってくるからと
気休めかもしれないけど
そう言うことしか出来なかった。

翌日はyukihiroが
hydeからそばを持たされて来た。

hydeが一から自分で作った
こだわりのめんつゆと
初めて打ったそば。

相変わらずユキも食べてないんだから
一緒に食べようと
河南と食事をしたyukihiro。

「美味しいね」

喜ぶ河南の笑顔を
久しぶりに見たyukihiroは
自然に笑顔になっていた。

だんだんと食欲が出てきた河南は
やっと病院食も食べるようになってきた。

病院食は美味しくないからと
来ている三人の口に
放り込んで楽しんでいる。

退院のめどが経った。

まだ右腕と足首はギブスをしたままだが
全身は立てる程に回復した。

退院したら何がしたいかと
tetsuyaが尋ねたとき
また四人でお鍋が食べたいと言っていた河南を
初めて四人で食事した料亭に連れて来た。

最初は拒否されたが
今は河南のお風呂当番が出来た。

今もまだ1人では眠れない。

今もまだ取り除けない恐怖がある。

だけど三人の愛情が
河南を笑顔にしたのは間違いない。
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