episode20 愛しい人

『こんなの嘘やろ・・・』

静かな部屋で
hydeの声が木霊する。

会話にならない想いを
それぞれが胸に抱き続ける。

『嘘だって言ってくれ』

yukihiroの低音の声は
怒りに満ちていることが分かる。

握る拳は
振るう場所がなく
宙を浮いたまま。

深い呼吸で
自分自身を抑えるyukihiroの姿。

部屋中に息使いが拡がる。

『ユッキー、冷静にな』

tetsuyaが
その怒りに釘を刺す。

『テツくんの冷静さおかしいよ』

yukihiroの怒りが
tetsuyaに向けられる。

『ここで騒いでも仕方ないやろ』

リーダー的な回答。

『二人とも止めや』

hydeの低く棘を刺す声。

そしてまた沈黙が走る部屋。

暖かい温もりを感じたのは河南。

目を開けるも
全身に痛みを感じ
朦朧とした意識。

誰にも気付かれずに
また眠りに付く。

ノックされるドア。

複数の制服を着た人物が
許可なく部屋へ入る。

交差点で
暴走車にひかれたのだ。

他にも被害者はいたが
いずれも軽傷で済んでいた。

河南だけが
意識がハッキリしない状態だった。

今にも狂いそうな
yukihiro。

手の平は爪が食い込み
血が滲んでいる。

つり上がった目が
警察官を睨み付ける。

『河南がどうしてこんな・・・』

hydeが警察官に説明を求めた。

歩行者側は青信号だったと
説明が始まった。

横断歩道を渡っていた時に
暴走車が突っ込んで来たのだ。

真っ先にひかれたのが河南。

スピードが落ちてもなお
何人かをはね飛ばし
電柱にぶつかって停車。

それは速報としてテレビでも中継していた。

もしかしたら死んでいたかもしれない。

そう思うと
tetsuyaも冷静ではいられない。

怒りの矛先が向けられずに
三人は
その怒りを自分自身に溜めた。

hydeは立ち上がり
河南の髪を撫でる。

何も言わずに髪にキスをした。

哀しみが溢れた目には涙。

tetsuyaは河南が目覚めるまで
決して一人にはしないと誓った。
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