最初から寂しそうな
心ここにあらずな雰囲気がした。

『ちょっと待っててや』

てっちゃんが引き止めた瞬間
強張った顔を見せたその子は
怯えて震えて
それなのに名刺出すし…

きっとパニックになってるんやろうなって思った。

サングラスを外して
顔を見せてやれば安心するかな。

俺らの不注意から始まったことだし
優しくしてあげな。

ただそう思っただけなのに
泣きながら帰してって言われた時
何故だか胸を打たれた。

もし自分が同じ立場だったら
帰りたいのは当然。

なのに邪魔してるのは俺達。

「乗ってけばええよ」

行き先が同じなら
一緒に行けばええだけのこと。

泣き笑いをしたその子の名前は河南。