レーズンバター(hyde)

河南が気付いたのは昼過ぎだった。

遅刻だと慌てて部屋を出ると妹がお粥を手にしている。

妹が会社に電話をして休みを伝えていた。

いつまでも甘えん坊だと思っていた妹が
ちゃんと大人になっていたことに
素直に嬉しいと思う河南。

お粥を食べて薬を飲んでまたベッドに戻ると
机の上に覚えのない紙がある。

そこには元気になったら連絡をしてほしいと
電話番号が書かれていて
hydeの名前があった。

昨日の事を思い出す。

hydeに抱かれて部屋まで連れて来られたこと
うっすら記憶がある。

お礼を言わなくちゃと考えている。

だけどお礼以外に話すことはないと
電話をかける手を止めた。

翌日から仕事に行ったものの
一週間経っても電話が出来ずにいる。

週刊誌の件は妹から聞いてはいるけど
葛藤した気持ちに
なかなか整理が出来ない。

芸能人のゴシップなんて言い出したらキリがないのかもしれない。

だけど腕を組んで楽しそうに笑う相手の顔は
女の顔だった。

真実でも嘘でも
hydeの口から聞きたいと願う。

そうじゃなくちゃ自分の気持ちが整理出来ないと河南は考えていた。

ふと見渡せば社内にはひとり。

考えすぎて仕事がはかどらなくて残業に持ち込んでしまった。

コーヒーを飲みながら
窓際で夜景を眺める。

このままじゃ仕事にもならないし
葛藤するのも疲れていた。

ちゃんと聞けば良くても悪くても忘れられるかもしれない。

お礼も言わなくてはならない。

そして河南は意を決して通話ボタンを押した。
18/37ページ
スキ