レーズンバター(hyde)

不意に店のドアが開き
聞き覚えのある声が聞こえて
集中していたのを切り替えたのは河南。

「お姉ちゃん?」

それは妹と
早く元カレにしてしまいたい男。

「この前ここで見かけたからな。
お前いつもここで浮気してたのかよ」

河南はもう彼女でいたくないと思っていた。

何度別れたいとお願いしたか。
お願いするたびに拒否されて
河南の中ではもう終わった存在だったために
浮気だなんて考えてなかった。

そこにhydeが手にしていたグラスの中身を飲み干して立ち上がった。

気分を害してしまったと河南は慌てた。

「今日は帰って」

男の背中をドアに向かって押した。

河南はhydeとの時間を邪魔されたくなかった。

この場所を汚されたくないと強く願う。

「なに言ってんだよ。俺ら来たばかりなんだけど」

「おごるから飲んでいきなよ」

そう言ったのは誰でもないhyde。

「話分かるじゃん」

そう言って男性は座ってしまった。

おごる代わりに先に酔いつぶれた方が手を引くという条件の飲み比べが始まった。

マスターがウォッカを順に差し出していく。

妹は格好いいとhydeに絡みはじめ
河南は三人の様子を見ているしか出来なかった。

何杯飲んだか分からないが男はもう呂律も回らない。

そして次の瞬間、男はダウンした。


「俺の勝ち。手を引くのはお前だね」

「わかったよ」

真っ直ぐに立てない歩けない男が店を出て行った。

「私は行かない。この人の方がいい」

河南の妹はhydeの腕にしがみついて離れなかった。

また…
そう思ってしまう河南。

河南が好きな人に必ず手を出す。

hydeはサングラスを外して河南の妹を見つめた。

hydeを見て驚く。

毎日のように聴くお気に入りのミュージシャン本人だからだ。

河南の妹は耳まで赤くして出て行った。
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