レーズンバター(hyde)

待ち合わせなんかしてない。

時間だって何時になるか分からない。

それでもいい。

待っている時間も
今までと変わらない。

ずっと独りだったから
いくらでも待てる。

先に来ていたのは河南だった。

河南はいつもの席で
いつものレーズンバターを右に
デザイン画を書いていた。

ドアがカランコロンと音を立てるのも肴。

笑顔になる。

今までと違うのは、その隣に座ること。

隣いい?
なんて聞かない。

もうお互いの隣には
hydeと河南。

誰も知らない二人の空間で
寄り添い合いそうな距離。

河南の隣に座りながら目を移すデザイン画。

「新作?」

「いえ…」

最後の色を塗り終えて話を続ける。

「hydeさんをイメージして…」

お酒のせいではない顔色。
ほんのり色付いた河南の顔に愛しさが溢れる。

「貰っていい?」

河南は黙って頷くことしか出来なかった。

前からhydeをモデルに書いていたのは内緒だと誓う。

デザインを眺めるhydeの横顔を見て
河南は自分の頬が赤くなるのを感じた。

hydeが好きだと実感する。
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