レーズンバター(hyde)

翌日
河南は彼が羽織らせてくれた上着をクリーニングに出した。

あの時から3日が過ぎ
河南はまたOWLに来ていた。

丁寧に丁寧に扱う手元にはhydeのジャケットと
一生懸命に考えたお礼にはおしゃれなソックスが二足、控え目なラッピングで
同じ紙袋に収められている。

しかし待ってもhydeが来る様子がないので
コースターの裏にメッセージを書いて紙袋をマスターに託した。

「河南…」

hydeは彼女の名前を声に出していた。

マスターから受け取った紙袋には
上着と控え目なラッピングがしてあるソックスが入っていた。

そしてメッセージが書かれたコースター。

一文字づつ丁寧な字体に
書いている彼女を思い浮かべる。

hydeは今日は一段と酒が旨いと思っていた。

お礼をハンカチよりソックスにしたのには河南なりの訳がある。

例え奥さんや彼女がいたとしたら
地味なソックスなら言い訳が付きやすく
女性のプライドに傷が付かないと考えたから。

中堅ブランドにしたのには安物では失礼にあたるし
高価ならまた女性のプライドが傷つくと考えたから。

ラッピングも彼が受け取り易いように
敢えて中身が分かる透明なケースに入れただけにした。

あれからすれ違いでなかなか会えずにいる。

お互いOWLのドアを気にしながらも
未だにhydeも河南も顔を合わせていない。
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