レーズンバター(hyde)

一時間くらい経っただろうか…

見ていれば強いアルコールのものばかりを飲み干した彼女は
虚ろな目をして立ち上がった。

河南はお釣りも受け取らないで店を出た。

外のベンチに座ると
堪えていた涙が溢れ出てしまった。

もう冬になる空気は澄んでいて
肌を刺激するほどひんやりしている。

それでも家路に着くことなく座っていた。

hydeが店を出たのは
##NAME1##が出てから30分くらい後のこと。

ベンチの隅でうずくまる彼女に気付いて声をかけた。

「ねぇ」

すると彼女はすかさず言った。

「今はきっと酷い顔してるから…」

彼が話かけたのだと分かった。

けど今は見せられる顔はしていない。

hydeは察すると冷え切ったであろう彼女の背中に
自分の上着をかけ
隣の建物に消えて行った。

マスターは
その気配を感じているのか
グラスを磨きながら
微笑みをドアに向けた。
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