レーズンバター(hyde)

彼、hydeは日本を代表し世界でも有名な人気ロックバンドのボーカル
いわゆるトップミュージシャン。

彼女、河南は量販店のアパレルメーカーのデザイナー。

河南が帰宅すると玄関先には男物の靴が無造作に脱いである。

それを見て静かにドアを閉めると
来た道を戻りOWLの前。

ためらわずに店内に足を踏み入れた。

決まっているかのように
一番奥の席に座ると
タイミングよくマスターがメニューを差し出す。

今日はhydeが先に来ていたのにも関わらず
河南はそれに気付かないほどに苛立っているのが分かる。

最初からウイスキーをストレートで飲み干すと
店内に響き渡るほど大きなため息を吐く。

すかさずマスターが水を出すと
それもまた一気に飲み干し、
マスターに小さくありがとうと呟いた。

気持ちが落ち着いたのか
いつものように
レーズンバターを注文した彼女と目が合う。

彼女はhydeが居ると気付くと
一連の動作を見られていただろう恥ずかしさから
はにかみながら軽く会釈をした。

「どうかなされたのですか」

静寂を破ったのはマスター。

「今日は酔いたい気分なんです」

そういう彼女の横顔から
下唇を噛む仕草が見えた。
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