pretty girl(ken)


ー河南 sideー

Kenちゃんと久しぶりの二人を楽しめて
気持ちの充電ができ
機嫌良く今日は初めて観客席に
立ってみようと思った。

いつもより少しメイクも濃くして
Kenちゃんに見て貰えるように。

関係者オンリーの楽屋前。
開きっぱなしのドアの隙間から中を覗くと
Kenちゃんがいた。

今の誰?

横切った女性スタッフの声。

ほら、トレーラー運転してる人。

あー、Kenさんの知り合いって人?

そうそう、ニッカ着てる。

ニッカなんて女の着る服じゃないよね。

今さらお洒落したってと笑い声。

そんなヒソヒソと小声にもならない
おしゃべりが聞こえてきて楽屋に入るのを躊躇った。

全身を見れば
確かにニッカ着てる人が今さらお洒落しても
意味ないって私のことだよね。

相応しくないって言われてるのかな。

帰ろう。

振り返ったとたん、ぶつかった。

「すみません」

何も言わない相手はhydeさん。

涙が溢れた顔を慌てて反らした。

h『入り』

何も言えずに首を横へ振った。

h『いいから』

hydeさんに手を引かれて楽屋に入る。

h『てっちゃん!!』

いきなりてっちゃんに捲し立てるhydeさん。

h『人のこと
偏見で物を言うスタッフなんていらんとちゃう?』

k『河南どうしたん?』

涙が止まらなくて
だけど私がライブ前のラルクに
迷惑をかけることはしたくなくて言った。

「hydeさん、大丈夫ですから」

「Kenちゃんごめんね、今日は帰る」

その後はどうなったかは知らない。

メイクを落としてニッカに着替えて
ライブが終わるのを待った。

機材を積んでKenちゃんにも会わずに
次の地へ向かう。

何度かKenちゃんの着信に気付いたけど
運転を理由に出なかった。

私はツアーが終わるまで私の仕事をすればいい。

そうしてツアーも半分が終わり
あれからメンバーにも会わずに
ただただ運転をして気を紛らわせるしかなかった。

ニッカは着なくなった。

ジーンズとTシャツ。
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