チョコレート症候群(hyde)

デスクに戻ると見慣れない箱が置いてある。

よく見ると箱の隅に
hydeさんのサインが書かれている。

恒例のお土産だと思って
何気に箱を開けた。

今回は新潟に行ったお土産のマグカップ。

前はメモ帳のセットだったな。

デスクはhydeさんからのお土産の文具品ばかり。

マウスパッドにポストイット。

ボールペンにシャーペンに
小さな置物も。

回りを見れば
いつもそう
私だけにそっとお土産をくれるんだ。

私だけに。

あれ?
私、ずっと気づかなかった。

デスクにはhydeさんの気持ちばかり。

いつも黙って置いてあった。

当たり前のように受け取って
当たり前のようにお礼だけ言って。

だけど他の事務員さんには
私みたいなお土産ないんだよね。

いつも皆で食べてと
箱菓子をくれた。

だから私も内緒にしてた。

自然と流れる涙に気持ちが溢れ出す。

止まらない涙が周囲を巻き込んで
具合悪いみたいだからと
今日は帰って休んだほうがいいよと言ってくれる皆の優しさが二重に染みる。

私、馬鹿だ。

ずっと見ていてくれたhydeさんの気持ちに
ずっと気付かなくて
何をしていたのだろう。

嘘の恋に舞い上がって
本当に大事な相手が分からなかった。

謝ろうと鞄から電話を出そうとしたら
hydeさんに渡すはずのプレゼントが落ちた。

自宅の玄関。

プレゼントを拾うと
座り込んだまま動けない。

タクシーで帰ってきたはずなのに
それを思い出せないほど
ずっと心が病んでいる。

電話が鳴る。

動く手は習慣のようで
何を考えていても
着信に応答する。
7/8ページ
スキ