Jewel box(hyde)

その翌日から私は風邪をひいた。

止まない咳と高いままの熱。

hydeの呪いだと風邪菌に名前を付けた。

ただ辛い体を支えるベッドに身を任せ
天井を見ながら考える。

悪魔の仕業・・・

タイミングよく鳴るLINEの新着メッセージ。

期待と不安を知らせる緑に光る携帯のランプ。

しんどくても確認してしまう。

《会わない?》
そうhydeさんからのメッセージ。

〈hydeの呪い菌に犯されて
悪魔に支配されている私なので会えません〉

《何やねん、それ》
返ってくると思った返事そのままの文面が
ディスプレイに表示される。

〈小悪魔hydeが私の体内で暴れているのです〉

《それは風邪やね、熱あるん?》

〈熱がなかったら私は犯されていません〉

そんな会話が続くと私は携帯を離し
意識を手放した。

犯されている体が眠りを誘ったのだ。

気付くと何件もの不在着信と
LINEの未読メッセージ。

全部hydeさんから。

心配してくれたのかな
自然と笑顔になる。

私が読んだことで既読が付いたLINEを見たのか
すぐに電話が鳴る。

『生きとる?』

「死んでたら電話してないですよね」

『心配したんよ?』

「・・・ごめんなさい」

下がらない熱と会話の度に出る咳に
hydeさんが看病しに来ると言ったのを
慌てて止めてもらう。

「自分の立場分かってます?」

風邪なんかを移した日には
世界のhydeファンから恨みを買うのは
間違いない。

それを話したら高らかに笑われた。

『ファンも大事だけど
好きな女も大事やけどな』

急に低い声で話し出す。

頭が回転しない。

「熱・・・まだあるみたいです」

おやすみなさいと通話を切った。

あれって
好きな女・・・
誰が?
私が?

熱に朦朧としながら
好きと好きと好きにうなされた。
7/9ページ
スキ