Jewel box(hyde)

一年前
あの頃は月に何度かhydeさんと会っていた。

あの有名なhydeさんに会えていたのは
当時の彼がミュージシャンだったからだ。

今もテレビに忙しくしている彼は
私じゃない誰かと授かり婚をした。

私と婚約していたのに
彼の浮気相手が妊娠したのだ。

そして妊娠してなかった私が切られた。

一気に冷めて追うこともしなかった。

好きだったはずなのに涙も出なくて
あれ以来、hydeさんとも会わなかった。

それからは彼氏と言う存在も面倒になり
ひとりをそれなりに楽しんでいる。

『一緒に食べへん?』

hydeさんが建物を指差す。

「へっ?」

裏返る声に笑われた。

一緒に来るはずだった人が来れなくなったと
ついさっき連絡があって
せっかく予約が取れたから来てみたけど
やっぱり一人は味気ないかと思っていた矢先に
私を見かけて声をかけたと流れらしい。

一度は断ったけど
なかなか予約が取れない店と聞いたのと
二度に渡りここへ導かれたこと
お肉が食べたい衝動にかられて
御一緒することにした。

中は素敵な鉄板焼のお店。

カウンターに身を任せるタイプ。

「すご・・・」

思わず出た一言にhydeさんが笑う。

『ワインでええ?』

「はい」

近況報告を兼ねた世間話が始まる。

会話を楽しみながら
高級なワインと出されたお肉の美味しさに
天へ舞い上がりそうだ。

じゅわっと広がる脂の甘さに
厚いのにとろけてしまうような歯触り。

あまりの美味しさに言葉を失う。

「ごちそうさまでした」

hydeさんが幾ら払ったかは知らない。

桁違いの額だと認識するも
私には払えないのでごちそうしてもらう。

hydeさんの笑顔と
美味しいお肉に満たされ
明日からまた頑張れそうな気がした夜。

せっかくだから連絡先の交換しようと言われ
hydeさんの連絡先がアドレス帳に追加された。
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