twinkle twinkle(ken)

彼女になっては聞き流して
妹という存在になればいい。

そうすればまた笑えるかもしれない。

『河南ちゃん今日暇?』

「えっ?あっはい。」

『今からKenちゃんに会いに来て~?』

渡したいものがあるから
会わないかと言われた。

断る理由もなく
近くだから行くことにして
Kenちゃんの仕事が終わるまで
近くのファミレスで参考書を読みながら時間を潰した。

『お待たせ』

顔をあげるといつものKenちゃんがいて嬉しくなる。

行こうかと手を引かれ
さりげなくお会計してくれて
いいって言ったのに
学生なんだから黙ってなさいとコツかれる。

「どこ行くの?」

『Kenちゃんち~』

「へっ?」

力の抜けた声にKenちゃんが反応する。

『取って喰ったりせーへんよ』

と笑う。

自分のマヌケさに苦笑いをするしかない。

意外にキレイにされている部屋は
桁違いの広さがあって
私は今、ポツンとソファーに座っている。

これこれと
鼻唄混じりに部屋から出てきたKenちゃん。

『ほい』

この間、仕事で行ったところに学業の神様がいてんねんって言いながら
手渡ししてくれたのは
学業のお守り。

ありがとうって満面の笑みでお礼を言ったら
頭ぽんぽんってされた。

それから
季節は春になり
私は大学の入学式を迎えた。

KenちゃんとはLINEで話をするだけで
今日も入学式の写真送って~って言われて
今さっき送信したところ。

Kenちゃんがオフの時には
たまの息抜きだと言って
ドライブに連れて行ってくれることもある。

何ヵ月に一回会う程度。

モヤモヤしていた気持ちは
私が大学生になったからか
不思議となくなり
友達以上恋人未満の関係が
長く続いた。

20歳になり
気持ちも大人になって
洋服も少しでもKenちゃんと釣り合いたくて
清楚な服ばかり。

将来は女子アナか?と言われて
口を膨らますのもしばしば。

成人のお祝いだと言って
高級なレストランを予約してくれて
美味しいカクテルを飲ませてもらった。

バイトをしたり
充実していた大学生活も
また免許取得のために
煮詰まっていたり。

そうこうしながら
国家試験の合否が発表された。

桜が咲いた私の道は
Kenちゃんが照らしていてくれたからなのかもしれない。

いくつもの研修や勉強を経て
私は晴れて保育士になった。

『Kenちゃん合格したよ』

これだけはLINEじゃなくて
ちゃんと伝えたくて電話をした。

仕事中だと分かっていて
最初は電話に出られなかったKenちゃんだけど
すぐに折り返してくれた。

お祝いしなきゃあかんと言われて
待ち合わせをしたKenちゃんのマンション前。

そのまま部屋まで連れて行かれて
シャンパンで乾杯した。

『河南ちゃんが保育士さんになるのずっと待ってた』

急に真面目な顔になるKenちゃんから目を反らすことが出来ない。

『大人になったんやし
もうええやん?』

俺かてずっと我慢してきたんやで。

Kenちゃんと過ごした年月はもう五年になる。

私が保育士になるまで
ずっと支えてくれたKenちゃん。

10代でKenちゃんとの恋を否定していた自分が
20代になり
保育士になり
社会人としての1歩を歩み始めて
初めてKenちゃんと釣り合うようになったのかな。

「待たせてごめんね」

『ほんまや』

長い長い間隔を埋めるかのようにキスをした。

俺の彼女になってな。

あの時の言葉を思い出す。

社会人としても
Kenちゃんの彼女としても
まだまだ新米だけど
鳴瀬河南!
もっともっと精進します!!
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