twinkle twinkle(ken)

銀杏や楓がそれぞれ色付いたのが
ひらひらと音が鳴るように
落ち始めている。

寂しくなった私の心のように
木々から葉が去って行く。

あれからKenちゃんとは会っていない。

マフラーを巻いていても
心には温かさを感じない。

町の雰囲気も受験勉強に消され
今年はクリスマスどころではない。

根詰めてもいい結果にはならないと親に言われ
少しは外の空気を吸いに行きなさいと
家を追い出された冬休みのある日
ショッピングに出掛けた。

クリスマスモード一色の街になかなか溶け込めず
疲ればかりが増す。

ふと目にやったキーホルダーが可愛くて買ってしまった。

しかも何を思ったのか
色違いで2個。

気持ちのどこかでKenちゃんの分もなんて思った。

思い上がり。

こんなキーホルダーなんて
安っぽいプレゼント
受け取るはずないじゃん。

公園で時間を潰すも
公園の時計はまだ昼間真っ只中を指している。

何て暇な休日なんだろう。

Kenちゃんは何してるのかな。

お仕事してるかな。

LINEを起動しては閉じて。

それでも元気かなって
モヤモヤするくらいなら
言葉を伝えた方がいいよね。

返事が帰ってこなければ
諦めもつくと勝手に思っている。

お元気ですかの言葉と
それからは私の近況と
Kenちゃんの活躍楽しみにしていますと加えた文章。

送信してしまえと
指先ひとつで送信してしまった。

すぐについた既読の文字に
目を疑って慌てて携帯を閉まって
いつ返事がくるのかと
ドキドキしてしまう。

するとLINEの通知音ではなく
着信を知らせる携帯。

Kenちゃん用の個別設定している着信音が鳴る。

心の準備が整わないのに
慌てて通話へスライドする指。

「も・・・し・・・もし」

第一声に力がこもる。

『緊張せんといて~?』

私の行動を察しているかのように
笑いを堪える電話の向こうのKenちゃん。

『河南ちゃんからの連絡待ってたよ』

そう言われて自然に笑顔になる。

考えてみれば
いつも緊張を和らげてくれるような言葉をかけてくれる。

そう思うと
今までKenちゃんと恋愛することを否定するかのような自分の考えが
やはり子供なのだと分かってしまう。

子供だから子供なりに考えて
大人の人とは釣り合わないと勝手に決めていた自分が
やはりKenちゃんには釣り合わなさそうで
そう考える自分の気持ちが
嫌になる。

嫌いにならなきゃ
Kenちゃんは諦めなきゃ
私とは違う世界なんだからと考えた
ついこの間のことが
虚しくなって
優しいKenちゃんの声を聞くだけで
糸が切れてしまいそう。

『河南ちゃん?』

返事がない私を覗くような感覚で
耳元の声が聞こえる。

「Kenちゃん元気かなって」

振り絞る声は少し震えている。

「変なLINEして迷惑だよね。ごめんね」

泣き笑いしている自分がいる。
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