twinkle twinkle(ken)

夢から覚めた私は
また学生としての日々を送る。

無くした学生証を探したけどどこにも見つからず
頬の傷も幸い痕が残らないで治った。

夢のような瞬間は
本当に夢なのかと思う程
一瞬で終わってしまった。

覚めたくなくても
やがて覚めなくてはならない。

いっそうのこと
覚めてしまったほうがいいのかもしれない。

そう思って夢から覚めたのだ。

今日はいつもより気温の高い夏日。

夏休み中の夏期講習に通う。

「あっつい」

ぎらぎらと太陽があたるのを
手のひらで避ける。

見上げる空は雲ひとつない青空。

何かが反射して目を刺激する。

目を細めてみると
校門前に止めてある車からだった。

見たこともない形の車は
怪しさ満点だから
見ないふりをしようと
逃げるように足早に通り過ぎた。

『河南ちゃん?』

私?!

急に名前を呼ばれて心臓が羽上がる。

そろりと振り返りながら
後退しながら
いつでも逃げられるようにして
男性の顔を確認する。

どこかで見たことある雰囲気の人だけど
逆光でよく見えない。

そこに突然
携帯が着信を知らせた。

知らない番号。

出ないことも考えたけど
この場合
出た方が身のためかもしれない。

「もしもし」

『俺』

オレオレ詐欺ならお断り。

「誰?」

『ケンだけど』

どちらのケンさんですか?

私の知り合いにケンは何人かいる。

だけど声も口調も違う。

『目の前に
ラルクのKenだけど』

イタズラかとも思った。

だけど今目の前にいるのがKenちゃんならと
体が勝手に男性の元へと近づいていた。

電話で話さないでいい距離。

それなのに
耳から離れた電話は通話中。

Kenちゃんの手が私の頬を触る。

憧れの人に触れられて
近すぎる距離に
過呼吸寸前でクラクラする。

『傷痕残ってないで良かった』

少し前かがみのKenちゃんの顔。

切ない目付きに一瞬時間が止まる。

これだけの為にわざわざ?

信じられなくて
嬉しくて戸惑うばかり。

だらしなく握られた携帯が落ちる。

Kenちゃんが笑いながら
まったく
危なっかしい奴やと
携帯を拾ってくれた。

『そうや、これ』

携帯と一瞬渡された手帳。

「私の!」

探していた学生手帳。

治療してもらった時に落としたらしい。

Kenちゃんを見ると
あのへにゃりとした笑顔があって
頭をぽんぽんっとされた。

『しっかし、あっついわ~』

私が見上げる先はKenちゃん。

Kenちゃんが見上げる先には太陽と青い空。
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