propose once again(hyde)

籠城ライブの合間に
家に帰ってきては
ちび人を連れてまたライブに行く。

相変わらず私は蚊帳の外。

あの時の優しさは何だったのだろう。

気まぐれ?

気づけば11月も半ば。

私の誕生日もどこかに消えていた。

ビーストパーティーに
新曲発売
新アルバムに
籠城ライブが終わって
あとは年末のテレビ出演を残すだけとなった頃。

意を決して
秀人に話があると
強引に仕事部屋へ押し入った。

「チビ人も大きくなったし、秀人も自由になってもいいんだよ」

匂わした離婚の二文字。

言葉の意味
伝わったかな。

「私に構わないで。
ひとりでも大丈夫だから」

黙って聞いてくれた姿は
うつむき加減で
リズムを取るようだった。

あなたなら羽ばたいていける。

私はもう秀人を離す覚悟を決めた。

私には滅多に見せてくれないhydeの顔。

あなたは知らないでしょう?

毎日、一日中
家ではhydeの歌声が
hydeの姿が
止まないテレビで再生されていること。

それほどまでに
hydeも秀人も愛していた。

だから秀人だけじゃなく
hydeでいるあなたも
ずっと見てきた。

私の前では秀人になってくれることが幸せで
この15年そばにいた。

けれどもう秀人はいない。

少なくとも
私の愛した秀人は
いつの間にか
私の前にいなかった。

あなたはhyde。

L'Arc~en~Cielの
VAMPSのhyde。

寳井秀人はもういない。

覚悟を決めた日から
秀人が帰ってこなくても
不思議と寂しさがなくなった。

離婚も別居もしたわけではない。

だけど気持ちが前よりも楽になった。
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