propose once again(hyde)

お盆初め
毎年の帰省コース。

関西国際空港から
バスで来たのは秀人の実家。

結婚してから何年かは
二人で来ていた。

VAMPSを始めたころから
夫婦二人がなくなって
毎年、私と息子。

今年は私ひとり。

お義母さんも
お義父さんも
変わらずに笑顔で迎えてくれる。

孫がいないのが寂しいようだけど
毎年来ていることは秀人さんに言わないでいいと
言ってある。

それから自分の実家へは行かずに東京へ戻った。

東京よりも涼しくて
緑が多い田舎町。

星空が輝く夜空を
うちわ片手に縁側から見上げる。

それは今年は叶わなかった。

秀人の実家で
来ていた姪っ子をかばって
階段から落ちた。

私自身が若くないのに
放っておけずに軽い捻挫。

それで実家には行かずに
家に戻るつもりで
飛行機を降りて
携帯の電源を入れると
秀人からの着信を知らせる文字。

折り返そうと
ダイヤルしようとしたら
目の前に秀人がいた。

「なんで?」

とっさに怪我をした足を隠す。

『お袋から電話来たんよ』

足の怪我を心配して
お義母さんが秀人に全てを話していた。

帰省を隠すつもりはなかったけど
何だか気まずくて
口を開けずにいた。

『荷物持つから』

「うん、ありがとう」

すると荷物を片手に
手を繋いでくれた。

ぎこちない歩きをサポートするように
隣には秀人。

『なぁ』

「うん?」

『毎年行ってくれてたんやね。ありがとう』

「みんな元気だったよ」

秀人が笑った。

嬉しくて足の痛みを忘れるくらい。

久しぶりの笑顔。

まだ繋がっていられるかな。

そう思ったのもつかの間。

秀人はまたhydeとして
世の中に出て行ってしまった。
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