君のカメラは見たくない(yukihiro)
「あっ」
見上げる空からは白い結晶。
「雪」
俺の言葉に彼女も見上げる。
『本当だ』
彼女の手のひらに溶ける結晶が
今の気持ちと重なる。
結晶とは違う。
消えてしまいたくない俺の気持ち。
二人で降る雪を眺める。
『ホワイトクリスマスですね』
そう言った彼女の横顔が綺麗だ。
その後何かを思い出したような彼女に
連れられて、また中に入った。
俺が気になった写真の前。
『この写真、
yukihiroさんの撮影の時の写真なんです』
やっぱり。
バラバラになった黒の薔薇の花びらが
山のようにまとめられた真上に
葉の揚々とした茎が刺さって
スポットライトを浴びている。
たまたまなんですけどね
掃除してたらピンときて茎刺しちゃいました。
黒い薔薇なんて
本当は写真加工でどうにもなるんです。
だけど艶感がいまいちなんですよね。
カメラマンらしい凛とした言葉に
さっきの彼女とのギャップがある。
そして彼女に渡された小さな紙袋の中には
この個展の写真のポストカードが全部入っていた。
yukihiroさんが来るって分かってたら
クリスマスプレゼント用意したのになと
今日はなくてごめんなさいと
しょげる彼女がまた猫みたい。
コロコロ変わる彼女の表情に虜になる。
「これ」
ポケットの奥、無駄にならずに済んだ箱を
そっと差し出す。
「クリスマスだから」
『私に?』
頷く。
彼女の手が小さく震えている。
『開けてもいいですか?』
可愛くてつい笑みが溢れる。
俺が愛用してるREIDMFGのピアス。
見た目はハードだけど彼女なら似合うと思う。
箱を開けた彼女は何も言わずに
自分のしていたピアスを外した。
鞄から鏡を取り出し机に置き
ピアスを付ける。
『どうですか?』
一連の仕草に見とれてしまう。
「似合ってる」
お互いに照れる。
そうして別れた後の足取りは
薄白く積もった雪さえも溶かす程に熱く
次の日も軽いスティックさばきで終演を迎えた。
彼女がくれたポストカードは部屋に飾った。
彼女とのLINEのやり取りも増えた。
彼女は相変わらず曇天模様の空。
しばらくはプチ・ブラバンソンの結成やらで
忙しくしていた俺だけど
そのバンドのアー写を彼女が撮ると聞いたときは
さすがに動揺した。
うまく俺でいられるかだ。
見ないほうがいいかもしれない。
それなのに彼女の耳にはクリスマスのピアス。
目が離せなくなる。
反則だろ。
『目線合わせなくても大丈夫です』
『京さんだけ目線下さい』
俺の気持ちを知ってか知らずか恨めしくなる。
yukihiroさん、今日ため息多いっすね
そう京に言われるが
ソロ撮りが終わって彼は帰って行った。
最後の俺の番が来るまで
ため息は止まらなかった。
俺がスタジオに立つと
彼女の様子が違うことが分かる。
『すみません、五分だけ休ませて下さい』
本当すみませんと焦りながら
カメラを置いてスタジオを出てしまった。
トイレに行くふりして彼女を追う。
外に立つ彼女を見つけた。
「どうした?」
ビクッと鳴る彼女の肩。
yukihiroさん…
彼女が俺を見る。
潤んだ瞳。
『yukihiroさんの番になったら
急に震えちゃって』
どうしよう。
そんな事を言うもんだから
可愛くなってつい抱き締めた。
彼女を抱き締めながら空を見上げる。
「気づいた?今日は晴れてる」
それも気持ちいいほどに。
よく晴れた冬の空
俺は彼女にキスをした。
俺の方が緊張してた。
上手くyukihiroになれるか不安だった。
カメラを見られなくなるんじゃないかって。
だけど君のおかげで見られるようになった。
君から目線が離せなくて
レンズ越しにも君を見ていたくて。
どんな曇天でも俺がいる。
「俺、晴れ男だから」
『頼りにしてます』
そうしてソロはいつも彼女がアー写を撮る。
『目線合わせなくても大丈夫です』
俺が見たいのにほらまただ。
カメラ越しに俺を見てるくせに
俺には見させてくれない。
カメラ越しから俺を手玉に取るように。
だから嫌なんだ
お前のカメラは見たくない。
くそ!
帰ったら覚えとけよ!
見上げる空からは白い結晶。
「雪」
俺の言葉に彼女も見上げる。
『本当だ』
彼女の手のひらに溶ける結晶が
今の気持ちと重なる。
結晶とは違う。
消えてしまいたくない俺の気持ち。
二人で降る雪を眺める。
『ホワイトクリスマスですね』
そう言った彼女の横顔が綺麗だ。
その後何かを思い出したような彼女に
連れられて、また中に入った。
俺が気になった写真の前。
『この写真、
yukihiroさんの撮影の時の写真なんです』
やっぱり。
バラバラになった黒の薔薇の花びらが
山のようにまとめられた真上に
葉の揚々とした茎が刺さって
スポットライトを浴びている。
たまたまなんですけどね
掃除してたらピンときて茎刺しちゃいました。
黒い薔薇なんて
本当は写真加工でどうにもなるんです。
だけど艶感がいまいちなんですよね。
カメラマンらしい凛とした言葉に
さっきの彼女とのギャップがある。
そして彼女に渡された小さな紙袋の中には
この個展の写真のポストカードが全部入っていた。
yukihiroさんが来るって分かってたら
クリスマスプレゼント用意したのになと
今日はなくてごめんなさいと
しょげる彼女がまた猫みたい。
コロコロ変わる彼女の表情に虜になる。
「これ」
ポケットの奥、無駄にならずに済んだ箱を
そっと差し出す。
「クリスマスだから」
『私に?』
頷く。
彼女の手が小さく震えている。
『開けてもいいですか?』
可愛くてつい笑みが溢れる。
俺が愛用してるREIDMFGのピアス。
見た目はハードだけど彼女なら似合うと思う。
箱を開けた彼女は何も言わずに
自分のしていたピアスを外した。
鞄から鏡を取り出し机に置き
ピアスを付ける。
『どうですか?』
一連の仕草に見とれてしまう。
「似合ってる」
お互いに照れる。
そうして別れた後の足取りは
薄白く積もった雪さえも溶かす程に熱く
次の日も軽いスティックさばきで終演を迎えた。
彼女がくれたポストカードは部屋に飾った。
彼女とのLINEのやり取りも増えた。
彼女は相変わらず曇天模様の空。
しばらくはプチ・ブラバンソンの結成やらで
忙しくしていた俺だけど
そのバンドのアー写を彼女が撮ると聞いたときは
さすがに動揺した。
うまく俺でいられるかだ。
見ないほうがいいかもしれない。
それなのに彼女の耳にはクリスマスのピアス。
目が離せなくなる。
反則だろ。
『目線合わせなくても大丈夫です』
『京さんだけ目線下さい』
俺の気持ちを知ってか知らずか恨めしくなる。
yukihiroさん、今日ため息多いっすね
そう京に言われるが
ソロ撮りが終わって彼は帰って行った。
最後の俺の番が来るまで
ため息は止まらなかった。
俺がスタジオに立つと
彼女の様子が違うことが分かる。
『すみません、五分だけ休ませて下さい』
本当すみませんと焦りながら
カメラを置いてスタジオを出てしまった。
トイレに行くふりして彼女を追う。
外に立つ彼女を見つけた。
「どうした?」
ビクッと鳴る彼女の肩。
yukihiroさん…
彼女が俺を見る。
潤んだ瞳。
『yukihiroさんの番になったら
急に震えちゃって』
どうしよう。
そんな事を言うもんだから
可愛くなってつい抱き締めた。
彼女を抱き締めながら空を見上げる。
「気づいた?今日は晴れてる」
それも気持ちいいほどに。
よく晴れた冬の空
俺は彼女にキスをした。
俺の方が緊張してた。
上手くyukihiroになれるか不安だった。
カメラを見られなくなるんじゃないかって。
だけど君のおかげで見られるようになった。
君から目線が離せなくて
レンズ越しにも君を見ていたくて。
どんな曇天でも俺がいる。
「俺、晴れ男だから」
『頼りにしてます』
そうしてソロはいつも彼女がアー写を撮る。
『目線合わせなくても大丈夫です』
俺が見たいのにほらまただ。
カメラ越しに俺を見てるくせに
俺には見させてくれない。
カメラ越しから俺を手玉に取るように。
だから嫌なんだ
お前のカメラは見たくない。
くそ!
帰ったら覚えとけよ!