Caress of Venus(hyde)

さて、先輩、仕事しましょう!

彼女のデスクには相変わらずhydeグッズが
綺麗に並べられている。

私が住んでいた部屋は解約し
hydeの事務所の下の階が運良く空いて
そこで彼女と2人の会社を立ち上げた。

あの日、彼女が言った。

hydeさんと先輩がお付き合いしてるのを
怒ってたわけじゃないんです。

ただ、先輩に相談して欲しかった。
アイドルからずっとダメ出しされてた時、
先輩は1人で頑張ってたし
そもそも、hydeさんの担当だって変えてきて。
もっと頼って欲しかったのにと。

週刊誌の事もそう、
自分は浮かれてしまって
感情まで持って行かれたのに
先輩は私たちの前では顔色ひとつ変えないで
辞表まで出して勝手に責任感じて。

ズルいと。

そして無造作に置いてあった書類を見て
私もこれがやりたいと。

デザイナーじゃなくてクリエイター。
彼女の言葉も忘れられなくて
一緒にやろうと走り出した。

hydeの特性や世界観が良く出ている
そのアプリはHYDE RUN。

NEOTOKYOを舞台にhydeが駆け巡る
マイルームを飾ったりとこだわりが沢山詰まった。

今もまだ追加するステージや
アイテムを作っている。

はっきり言って楽しい。
彼女のおかげだ。

あの日、私が帰宅しない、電話にも出ないと
hydeが部屋に来た時にはもう
酔って寝てる私たちだったそう。

hydeが事務所に行く時には
必ず私たちの会社へ寄る。

今日はプレミアムグッズを手に
昔の過ぎてなかなか手に入らないそれを
hydeは確か事務所の奥にあったはずと
簡単に出して来てダンボールごと
後輩に渡していた。

そしてついに一室が
彼女のhydeグッズで埋まった。

夢みたいだとニヤけながら
hydeに私の夢のことをサラリと暴露した。

ちょっと待ってと口を塞いだ時には遅く
hydeに話を聞かせて貰おうかと拉致られた。

行ってらっしゃいと手を振られ
今はhydeと部屋にいる。

明日は追加の声撮りだからねと
hydeに言い聞かせるも無駄で
今まであったノートパソコンは
hydeと私の間から消え彼女の元にある。

今の彼女は本当に仕事が楽しいみたいで
河南さんの彼がhydeさんなら
私の彼はバーチャルhydeですと言い切っている。

河南、好きだよ。
あの夢はhydeとの繋がりだったのかなと思う。

そう話したら
hydeは実は俺も同じ。
いつも大事な決断前には必ず河南の夢を見ていた。

河南が「hyde、好き」って
照れながら言うの。

hydeが好きって言ってくれた日
言ってって言わされたのを思い出す。

おでこを付けながら笑う。

おかえり、hyde。
河南、ただいま。

ズルいって思ったことも
嘘つきって思ったことも必然だった。

もう一度、やり直すために。
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