Caress of Venus(hyde)

穏やかな時間が過ぎている。

仕事を降ろされてからは
彼女の上司としては変わらない立場だけど
皆が嫌がる集計作業などを担当している。

影でちょっと色々言われてるのも知っている。

私がまとめきれなかったのも事実だし
疲れきっていたのも事実。

hydeからはいい機会だと励ましてもらってた。

彼女自身がhydeとのタイアップを
リリースしたのだから
私は彼女の手腕に期待していた。

彼女が成功したら
私は辞めてもいいんじゃないか
ひたすら独身のまま突っ走ってきたのだから
これもhydeの言ういい機会なのかもしれない。

そろそろ辞表かな。

そしてまた鳴瀬ちょっとと上司に呼ばれた。

そこには後輩の彼女がいて
何やら涙を浮かべて深刻な顔をしていた。

見せられたのは週刊誌。
そして開いたページには彼女であろう姿と
担当中のアイドル。

すみませんと小さな小さな
壊れそうな声。

呼び出される度に
プライベートと混在して行って
浮かれて仕事してしまったと
泣きながら話してくれた。

アイドルに頭をポンポンされて
浮かれない女子はいないだろう。

ふと私とhydeのこともよぎる。
私も迷惑かけるかもしれない。

アプリが完成するまで処分は待って下さいと
頭を下げる。

先輩···
心配そうな後輩をよそに
うん、大丈夫!やり切ろう!と喝を入れる。

私のチームはこれで終わることを
みんなに伝える。
不甲斐ない上司でごめんなさいと。

またhydeに会えない日々に
全力で仕事をした。

久しぶりの充電は
お互いの雰囲気も良くて
今日はhydeとの夜を期待したのに
後輩からの電話が鳴る。

呼び出された。
行けないと断ったのに
目前のアバター完成にまた待ったを入れられた。

分かった、行くから。
そうhydeを見ながら話す。

送ってく。
hydeは車のキーをポケットに入れた。

今日は遅くなるかもしれない。
hydeの手を握り締め
また連絡するからと。

クラブ前の路地。
行こうと彼女の肩を叩く。

彼は私達2人を見て鼻で笑った。

週刊誌の件をご存知で
まだ呼び出すんですか?

もう貴方の勝手に相手はしていられない。

納得行かないのは分かっているつもりだけど
どこからどこまでなのか、もう分からない。

私達もこだわって仕事してきたし
相手が納得した上でのリリースをしたい。

だけどアバターは実物でも写真でもない。

胸の内を吐き出した。

すみません、もうこのまま進めさせて下さい。
もし不服があるのなら私が処分を受けます。
そう頭を下げた。

彼が連れているのは事務所の後輩たち。
私にも可愛い後輩がいる。

「俺の彼女、
あまり困らせないでもらってええ?」

聞き慣れた声と
知ってる手のぬくもりが私の頭にある。

ポンっとされて振り返り
hydeと言いかけた言葉を飲む。

びっくりしているのは彼らもだし
後輩もだし。

確かに俺らは魅せる側。
だけど周りを困らせたりするんはどうかな。

そうhydeが助言してくれて
夜も遅いし解散なって手を引かれた。

hyde、私、後輩
3人連なってクラブを出る。

そして私は後輩に謝る。

ごめんなさい
私の彼、hydeなの。
私の方が週刊誌沙汰になっていたかもしれない。
7/9ページ
スキ