new world(yukihiro)

「卒業式行ってやろうか?」

3月初め、学校からの通知に目を通した。

学校行事に行かないにしろ
未成年を預かってる以上
通知は見せるように言ってある。

『大丈夫、ひとりで平気』

その言葉を発しながら
河南は迷いを顔に出していた。

何故なら河南の学校の卒業式は
校長先生からもらった卒業証書を
感謝のしるしに保護者に渡して席に戻るという
一連の流れがあるらしい。

そこに保護者がいないのは
15歳には堪えられるかどうかはノーだろう。

河南なら堪える。
だけどそんなことはしたくない。

行くとも行かないとも言わないまま
卒業式当日を迎えた。

三日前。

相談するのはやっぱり妻子持ちのテツくんかな。

するといつもはああしてこうしてと
真剣に聞いてくれるのに
今回は意外な答えが帰ってきた。

スーツだろうと一言。

そしてhydeに聞いた方が確かやでと。

そりゃそうだ。

いくら妻子持ちとは言っても
まだ小学生にならない子供たち。

テツくんが言うように
ここはやっぱりhydeくんかな。

だけど今回はなかなか電話で相談しずらい。

だからコミュニケーションツールで聞いてみた。

卒業式って何着て行けばいいの?

すぐに既読になるも返事はなかなか帰って来ない。

単刀直入過ぎたかなと
携帯片手に苦笑いしか出ない。

きっとhydeくんもフリーズしてるかもしれない。

隠し子とか思われてるかな。

しばらくして帰ってきた一文。

ユッキーが行くん?

だよね。

俺以外誰だよって突っ込みたくなる。

うん。

その一文がまたhydeくんを困らせているのも
分かっている。

だけどKenくんに聞いても
こればかりは答えすらない。

そうして今、俺は校門の前にいる。

だいたいが夫婦で参加したりするんだろう。

あまり浮くこともなく馴染めていると思う。

髪は切った。

黒のスーツにだて眼鏡。

普段なら付けることのない色のネクタイは
hydeくんから借りた。

そして言われた。

スリッパ忘れたらあかんよと。

さすがだよ、hydeくん。
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