new world(yukihiro)

河南は変わらず部屋の掃除や
水回りは綺麗にしている。

なるべく自分の痕跡を
残さないようにしているようだ。

靴も食器類も自分の部屋に置いてあるらしい。

なんてやつ。

中学生にしてこんな頭が回転するものか。

玄関先にある黒い傘。

あれを見るたびに河南の言葉がよぎる。

『もし不都合がある時はこれ、玄関に立てといて』

家に入らないようにするから。

あいつ本当に中学生か?

ある日、保護者の印鑑が必要だからと
あいつの成績表を見た。

「お前・・・」

俺は頭を抱えた。

「お前、バカか?」

河南は黙ったまま立っている。

これで高校行かないつもりだったのかと思うと
危うく俺は河南の才能を蹴散らすところだった。

「俺より頭いいじゃねーか」

学年トップだった。

数学や英語の家庭教師をやっていた俺よりも
はるかに数値がいい。

「夢とか・・・あんのかよ」

『別に今はない』

あれから河南の笑顔は見ていない。

笑わないこいつが俺には苦痛だ。

ガキが、気取ってんじゃねぇよ。
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