new world(yukihiro)

「待てよ」

俺はお人好しだったのかと自問する。

だけど知り合った少女を児童相談所行きにするような
腐った奴にはなりたくない。

背中を見せる河南が涙を流しているように見えた。

泣いている子供をあやすように抱き締めてやる。

「泣けよ」

河南はどのくらい泣いていたのだろうか。

俺の服を掴んで大声を出していた。

こいつの淋しさを考えると
俺の苦労の方が楽なんだろう。

「今日からこの部屋使え」

客間にしていた部屋。

契約したマンションは解約した。

一人にはしたくなくて一緒に住むことを選択した俺。

一枚の書類には迷うことなく判を押した。

『本当にいいの?』

「お前ひとりじゃ何も出来ないだろ?
その変わり成人するまでだからな」

『ありがとう
なるべく迷惑かけないようにするから』

そしてもう一枚の書類には判は押せない。

「お前、高校行かないの?」

『お金かかるから』

「馬鹿か、高校くらい行っとけ
苦労するぞ」

『でも・・・』

河南の頭を撫でる。

「心配するな、俺を誰だと思ってる」

『yukihiro』

「よろしい」

初めて河南の笑顔を見た。

あどけない少女。

これからもっと笑顔が増えることを願うよ、河南。

生活パターンは変わらず
河南は俺がいない時に活動してるようで
俺がいる時は部屋からあまり出ない。

父子というよりは
親戚のような感覚。
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