new world(yukihiro)
追いかけることもなくただ時間が過ぎた。
何て言えばいいのか分からなかったのか事実。
保護者変更に印鑑を押すということは
河南に関わる全てを俺は背負うことになる。
そして進路希望に印鑑を押すということは
中卒で就職する河南を後押しすることなる。
どちらも俺はすぐには決められなかった。
だけど今、河南が頼る大人は俺しかいない。
河南が成人するまでの六年、
俺は責任を追うことが出来るのか。
もし俺が結婚して子供が出来たら
また大人の都合で
河南を捨てることになるかもしれない。
そんな無責任なことは俺には出来ない。
翌日も河南は部屋の掃除をしに来たようだ。
だけどノートは捨てられて
紙切れに迷惑かけてごめんなさい
あの家もやっぱり解約して下さいと書いてあった。
まさかと思って借りた部屋に行ったら
河南はいなかった。
こんな時間にどこへ?
河南の携帯に電話するも
お客様の都合でお繋ぎ出来ませんと返された。
料金を払えずに止められたらしい。
いつから?
それさえ俺は知らない。
すると知らない番号から俺の電話が鳴る。
「もしもし」
俺は今、河南を引き取りに交番へ来ている。
大きな荷物を持って歩いていたところを
補導されていた。
補導されて二時間の間
河南は俺の連絡先を言わなかったと
警察官に聞いた。
このままだと児童相談所行きになると聞いて
観念したらしい。
だけど引き取りに来なかったら
児童相談所に入れてほしいと河南は言ったらしい。
「お前、馬鹿か」
『馬鹿でいいよ、生きてる意味ないし』
『どうせなら、あんたも捨ててよ』
『そしたら死んでも誰にも迷惑かけない』
『どうせ、いらないし』
河南がそう思うのは
俺たち大人のエゴのせい。
目の前の少女の命を見捨てる程度の大人なのか俺は。
今の河南を救うことが出来るのは俺しかいないのか。
フィッシュバーガーを家で食べる。
「お前、母親は?」
『知らない、捨てられたから』
ある日、母親にメモを渡されて
お前の父親はここにいるから
二度と帰らないようにと言われたと。
あいつを訪ねたら
俺、死ぬからその間で良ければと
父子関係になったと淡々と話す河南。
一度、母親を訪ねたら
以前の場所にはいなかったと
初めて河南と長い会話をした。
食べきったハンバーガーの包み紙を見ながら
河南は言う。
『ハンバーガー、いつぶりかな』
「飯、どうしてたの?」
作るのは光熱費がかかるから
昼飯にパン一個と
夕飯におにぎり二個を買っていたと
ポテトを食べながら1日三百円で済むと
笑いもせずに一粒の涙を流した。
『あいつが生きてた時はそれなりに楽しかった』
その言葉が胸に刺さる。
そして河南はまた立ち上がり荷物を持つ。
『あんたにはもう迷惑かけないから』
『ありがとう』
・・・ありがとう・・・
温かな言葉が脳裏に木霊する。
何て言えばいいのか分からなかったのか事実。
保護者変更に印鑑を押すということは
河南に関わる全てを俺は背負うことになる。
そして進路希望に印鑑を押すということは
中卒で就職する河南を後押しすることなる。
どちらも俺はすぐには決められなかった。
だけど今、河南が頼る大人は俺しかいない。
河南が成人するまでの六年、
俺は責任を追うことが出来るのか。
もし俺が結婚して子供が出来たら
また大人の都合で
河南を捨てることになるかもしれない。
そんな無責任なことは俺には出来ない。
翌日も河南は部屋の掃除をしに来たようだ。
だけどノートは捨てられて
紙切れに迷惑かけてごめんなさい
あの家もやっぱり解約して下さいと書いてあった。
まさかと思って借りた部屋に行ったら
河南はいなかった。
こんな時間にどこへ?
河南の携帯に電話するも
お客様の都合でお繋ぎ出来ませんと返された。
料金を払えずに止められたらしい。
いつから?
それさえ俺は知らない。
すると知らない番号から俺の電話が鳴る。
「もしもし」
俺は今、河南を引き取りに交番へ来ている。
大きな荷物を持って歩いていたところを
補導されていた。
補導されて二時間の間
河南は俺の連絡先を言わなかったと
警察官に聞いた。
このままだと児童相談所行きになると聞いて
観念したらしい。
だけど引き取りに来なかったら
児童相談所に入れてほしいと河南は言ったらしい。
「お前、馬鹿か」
『馬鹿でいいよ、生きてる意味ないし』
『どうせなら、あんたも捨ててよ』
『そしたら死んでも誰にも迷惑かけない』
『どうせ、いらないし』
河南がそう思うのは
俺たち大人のエゴのせい。
目の前の少女の命を見捨てる程度の大人なのか俺は。
今の河南を救うことが出来るのは俺しかいないのか。
フィッシュバーガーを家で食べる。
「お前、母親は?」
『知らない、捨てられたから』
ある日、母親にメモを渡されて
お前の父親はここにいるから
二度と帰らないようにと言われたと。
あいつを訪ねたら
俺、死ぬからその間で良ければと
父子関係になったと淡々と話す河南。
一度、母親を訪ねたら
以前の場所にはいなかったと
初めて河南と長い会話をした。
食べきったハンバーガーの包み紙を見ながら
河南は言う。
『ハンバーガー、いつぶりかな』
「飯、どうしてたの?」
作るのは光熱費がかかるから
昼飯にパン一個と
夕飯におにぎり二個を買っていたと
ポテトを食べながら1日三百円で済むと
笑いもせずに一粒の涙を流した。
『あいつが生きてた時はそれなりに楽しかった』
その言葉が胸に刺さる。
そして河南はまた立ち上がり荷物を持つ。
『あんたにはもう迷惑かけないから』
『ありがとう』
・・・ありがとう・・・
温かな言葉が脳裏に木霊する。