new world(yukihiro)

まあ何かあったらその時になんて
安易な考えで葬儀場を後にした数日後
予想外にすぐに電話が鳴った。

知らなかった河南の電話番号だったのに
河南からだって直感が働いた。

「河南ですけど」
『うん、何?』
「マンションのことで相談があって」

そう言って呼び出された高層マンション。

俺よりいい部屋だな。

黙っていた俺に河南は語りかけるように話す。

『私、未成年だから一人では住めないみたい』

収入なしの未成年
しかもまだ中学生の未成年で親がいないんじゃ
契約も通らないってことか。

「いつまで居られるの?」
『今月いっぱい・・・』

さらに河南は家賃も気にしているようだ。

中学生じゃ働くことも出来ないし仕方ないのか。

『不動産屋にも行ったけど
相手にしてもらえなかった』

確かに河南だけじゃ無理なのかもしれない。

「遺産とか」

口から出た言葉はまさかの言葉だった。

中学生相手に何て事を言ってしまったのかと
つい河南を見てしまった。

目が合う。

けれど河南は何も聞かなかったように冷静に言った。

『あるけど何があるか分からないから
今はあまり使いたくない』

その答えは中学生だと思えない。

冷静に物事を見据える河南の心が
少しだけど見えた気がした。

冷血になったのはワガママな大人のせいだよな。

明日、ラルクで会うから
テツくんに相談してみるか。

「分かった。何とかする」

外に出るとマンションを見上げる。

どんより曇った空模様に
やるせない気持ちが混み上がった。

翌日テツくんに相談したけど
やはり親権者がいないと難しいみたいだ。

児童相談所も視野に入れたけど
それじゃ俺が河南を追い払ったみたいで
気が引ける。

何日か考えた末
事務所所有のオートロックのマンションに入れた。

契約者は俺。

何故だろうか悪い気はしなかった。

だけど河南は家賃は払うからと聞かなくて
中学生のお前に何が出来るのかと
キツイ言い方をしてしまった。

それでも河南は引かなくて
それなら俺の家政婦になればいいと
俺の部屋の合鍵までもを渡したのは俺自身。

俺、何がしたい?

「時給1000円でいいよ」
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