陽だまり(hyde)

《15》ー河南と指輪ー

同じ街の同じ空の下。

スマホを片手に河南の痕跡を辿る。

すぐに掴めると思った存在は
思ったよりも遠いようだ。

河南の居場所はインスタグラムが教えてくれる。

電話をすれば届くかもしれないけど
今は電話よりもこうやって河南を探したい。

猫の足跡を辿るように。

河南はいつもここを通るのかな。

そう思いながら歩くと
その道も愛しい。

日本にはない音と臭いが気持ちを高ぶらせる。

河南のインスタグラムはまた更新されていて
今度は高層ビルから街並みを見下ろした写真。

それは下に並ぶ店舗で俺にもすぐ分かった。

会える。

その確信は現実に変わる。

見上げたビルの隙間から
ゆっくりと流れる雲が顔を出す。

このビルのどこかに河南がいる。

今にもビル内を探し出したい気持ちを抑える。

俺は待ち続けた。

何時間もそこから動かずに
じっと出てくる人の顔を見ながら。

そしてやっと見つける。

君の驚いた顔とはにかむ顔の両方が
俺を更に刺激する。

駆け寄る君の姿が目の前。

そして河南がおもむろに言う。

『にゃん』

そして指を俺に見せる。

そこには猫の顔と首輪が2連に連なった指輪。

お互いに笑い合う。

河南は今、また俺の膝に絡み付いている。

俺は河南猫の髪を撫でる。

俺は活動拠点をロサンゼルスに移していた。

だからまた拾う。

猫を。
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