陽だまり(hyde)

《14》ーhydeさんと空ー

店に顔を出すと常連の男性が私を探していると
知らされた。

すぐにhydeさんだと分かった。

迷い猫を探しているのかな。

この仕事をしてすぐ
名簿にhydeさんの名前があって
この店の常連さんだと知った。

だけど店で会うことはない。

私は2号店の準備とマーケティングで
店舗にはいないからだ。

今日の空も快晴。

行き交う人とは反対に
もこもこした雲がゆったりと流れる。

いい空をスマホのカメラに収め
インスタグラムにあげる。

ハッシュタグで自分の居場所を教える。

あなたに。

異国の空気を吸ってるからか
あの出来事は忘れたと言ったら嘘になるけど
笑えるようになった。

そんなこともあったよねって言えるほど
心は澄んで来ている。

あなたのインスタグラムを確認する。

同じ空が写っている。

同じ街にいるのに
あなたはどこにいるの?

同じ空を見上げて
あなたは何を思っているの?

すれ違うばかりであなたに会えない。

届きそうで届かない触れられない。

電話をすればすぐに会えるだろう。

電話をすれば声も聞ける。

なのにそれをしないのは
私が野良猫に戻ったからよりも
駆け引きみたいなことが楽しいから。

あなたのハッシュタグの長期滞在の文字。

それが駆け引きの引き金。
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