陽だまり(hyde)

《11》ー好きとアレルギーー

もうじっと見ていることは出来ない。

河南が本当に猫になってしまいそうだから。

泣きながらワインを飲んだ河南も
無我夢中で求人を求めた河南も
陽だまりの中の河南も好きだけど
俺はあの時の鎖骨が綺麗な河南が好きだ。

痩せ細ったことすら河南は気付いていない。

飼い主としては健康な猫でいてほしい。

そっちで解決してもらわないと
こっちは弁護士用意してもいいんやけど。

正直、夫婦の問題やろ?

河南は関係ないやんな。

関係ない河南を巻き込まないでくれるかな。

河南をこれ以上傷つけるなら
俺はお前を許さない。

そもそもお前のせいなのに
誰とも知らない女が河南を責めるの
間違いとちゃうん。

どこからが言った言葉なのか
どこからが俺の思想なのか分からなくなった。

けど全てが本音なのは間違いない。

俺は河南のスマホの変わりに
全てをデータ化した書類を相手に渡すと
スマホを回収して
カウンターに金を置いて
河南の手を取って店を出た。

河南の手をしっかり握ったまま
無言で夜道を歩く。

河南が泣いている。

泣いているから部屋に入るとすぐに
河南を抱き締めた。

声をあげて泣く河南をただ抱き締める。

強く強く。

猫アレルギーなんか河南のおかげで治った。

だからもう泣かないで河南。

俺の河南。

それからまた河南は陽だまりに丸まっている。

俺の膝に絡まって来ては
寂しそうに鳴く。

そんな河南が俺が帰ると
仕事を決めてきたと話す。

「えっ?」

俺は驚くことしか出来なかった。

そして明日出て行くと伝えられた。

待てって。

何がどうしてそんなに急ぐん?
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