陽だまり(hyde)

《9》ー飼い主と重要案件ー

俺が帰ると猫の姿はなかった。

ただ暗いリビングにスマホが放置されていて
何やら慌ただしい音と光りとバイブレーションが
着信を知らせている。

##NAME1##が忘れたのか
なくしたと思って鳴らしているのか。

玄関には河南の靴はあったはず。

だったらなくした線はないなと肯定する。

何度もけたたましく鳴るそれを
手に取り河南を探す。

俺の手の中で何度も鳴るからつい
画面を見るも
それは着信だけじゃなく
メールもLINEもパレードのように
画面を占領している。

ポップアップ表示には
許さない、詐欺師、訴えてやる
そう挨拶でもない
友達からのメッセージでもない
物騒な言葉たちが並んでいた。

猫の飼い主は俺だからと変な理由をもとに
また鳴るそれを俺は見ることにした。

スマホを放置したまま現れない猫は
俺のベッドの中で丸まっていた。

俺はベッドに座り話かける。

「どうしたん?これ」

『・・・見た?』

「・・・見た」

するとモゾモゾしながら
泣きはらした顔を覗かせる。

私が悪いのかな
そんなことを言うものだから
悪いのはあいつの方だろと一喝する。

簡単に言えば
旦那を寝取って金を要求した河南を訴えると
嫌がらせのパレードだった。

未読のままのメッセージを含めて見れば
数十件の迷惑メールと化しているそれを
全て証拠としてバックアップを取る。

その中で重要案件であろうLINEを見つけるも
更に精神的苦痛を河南に追わせている二人を
俺は許せるわけがない。

うちの猫、いじめんとって。

全てを隠すことなく
河南は俺にスマホを預けてくれた。

河南は知らなかったとは言え
不倫をして相手の奥さんに心外を与えたのは
自分だと深く気にしている。

だから一度
奥さんに会って謝って来ると言い出した。

俺はそれを止めた。

俺に任せて。
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