陽だまり(hyde)

《7》ー猫っ毛と着信ー

鳴く事が多くなった仔猫ちゃん。

簡単に癒えないことはさすがに分かる。

俺の膝に絡まる仔猫ちゃんの髪を触るのが
俺の日課と化している。

柔らかい陽だまりのような髪の手触りは
まるで猫の毛並みを撫でているかのようで
不思議と俺も癒される。

居ればいい。

ここに。

俺は心のどこかで河南猫を手放しなくない
そんな気持ちになっていた。

愛着なのか独占欲なのかはまだ分からない。

「河南、おいで」

呼べばすぐ来る。

何も言わなくても膝に絡まってくる。

そんな矢先に鳴るスマホの音。

河南のだ。

だけど河南は出ない。

「鳴っとるよ?」

『ん~、いいや』

気だるそうな声で軽く拒否している。

その着信はすぐに切れる。

そしてもう一度鳴ってまた切れた。

「ええの?」

『・・・あいつ・・・なんだよね』

あいつ・・・か。

俺はそれ以上聞かなかった。

そして次の日に河南は少し低い声で言った。

『会いに行ってくる』

しつこく着信が鳴ったら出たら
どうしても話がしたいと言われて
会うことにしたと。

『今度こそ文句言ってやる』

そう言う河南は決心と言うよりは
遠い目をして力なく言葉を発していた。

会いたくないのと
会ってどうするかと気持ちの狭間で
揺れ動いているのが分かる。

「言いたいこと、ちゃんと伝えたらええやん」

hydeさんだったらどうする?

俺が言った言葉の答えは返って来なくて
逆に質問されてしまった。

そしてその答えを返すことが出来なかった。

どうする?

その言葉が脳内で繰り返される。
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