陽だまり(hyde)

《4》ー首輪と求人誌ー

さすがにこの年での再就職はキツい。

企業は中途採用も厳しくて
あるのは学生アルバイトばかり。

働ければ何でもいいかと思っていたけど
この時給じゃ頭金を揃えるだけでも時間がかかる。

夜間アルバイトなら何とか稼げるかもしれないと
探すもなかなか見つけられない。

そしてふと、街中で見つけた求人誌に目をやる。

夜のお仕事もありなのかな。

何冊もある求人誌を手当たり次第に集め
職業安定所の情報も集め
カバンがパンパンに膨れあがり
それでもまだ街中の掲示物も手当たり次第に
スマホのカメラに集め
hydeさんの部屋に帰宅した。

一冊、一枚を隅から隅まで丁寧に見る。

情報は逃したくない。

赤ペンと付箋とノートは必須である。

第一希望はそれは安定が望める企業だけど
寮ありも捨てがたい。

ブツブツと念仏のような呪文のような
そんな言葉たちが部屋を汚染している。

年齢制限もある最近の求人は
大学の就職活動のようで泣けてくる。

一生懸命に面接して入った企業で
せっせと貯めながら
それなりに楽しく人生を過ごしてきたはずだったのに
何故に急に貯金がなくなり
仕事がなくなり
何を好きで一からやり初めているのかさえ
今は考えたくもないのに
虚しいと感じている私がいる。

『何やってるんだろう』

独り言が響く広いリビングの
テーブルの上に広がる紙や冊子。

その上を転がるペンが
自分自身の考えを混乱させる。

手っ取り早く稼ぐのか
この機に自分のやりたいことをするのか
安定を望むのか
先ほど決めた第一希望も崩れていく。

挫折と諦めがすでに私を支配している。

あれから5日しか経っていない今は
再就職のことは考えられない。

心の休養が欲しい。

でもいつまでも
ここにお世話になるわけには行かないと
気持ちは焦るばかり。

ドサッとテーブルの上にうつ伏せる。

整理された資料がズレるのも構わない。

首もとの
朝、hydeさんが外した首輪がない。

温もりのない冷たい風を感じる。
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