-河南side-

yukihiroさんが楽屋を出たあと
私も楽屋を出た。

戻ると閉めた記憶がある楽屋のドアが
少し開いている。

最近の出来事を考えると自然に中を覗いた。

絶句したのはあの子がハサミで
私の衣装を切り裂く姿。

「な・・・んで」

漏れた声が聞こえたのか
ドアの隙間から目が合う。

慌てて手で口を塞ぐ。

見てはいけなかったものを見たからか
呼吸を整える暇もなく心拍が上がる。

後退りする私に迫る狂気は
恐怖心をあおる。

誰か・・・

そこから逃げ出した私は
yukihiroさんを探しに出た。

靴のことも衣装のことも
いつも気にかけてくれていた。

言わなくちゃ。

さっき廊下の天井を腕を組んで
難しい顔をしながら見上げていた。

見上げればそれは簡単なことで
防犯カメラを意味していた。

そっか警備室。

その辺のスタッフを捕まえて場所を聞くと
小走りにスピードを上げた。

階段を見上げるとガラス張りの壁の向こうに
yukihiroさんと空海がいるのが見える。

空海？