-河南 side-

yukihiroさんには本当に感謝している。

yukihiroさんのおかげで私は今
別世界に生きている。

常に緊張していた糸も
笑うことが多くなって
その姿も自然に出るようになった。

移動も常にyukihiroさんがいて
取材やら撮影やら
yukihiroさんが隣にいないことがない。

少しでもいなくなると
風が通り抜けるみたいに寒くなる。

温かい場所がほしくなる。

普段ならお気に入りの音楽が耳元で
流れているのに
その音楽さえも二人で共有して
会話がなくてもまるで夫婦のような空気。

テレビ出演が多くなり
今を騒がすダンスグループの空海と
また顔を合わせることも多くなってきた。

空海はyukihiroさんとの楽屋にも
しっかり来ている。

『河南久しぶりじゃん！元気だった？』

ありきたりな会話なのに
空海の場合は油断出来ない。

そこにスキンシップという名の抱擁も入る。

それをyukihiroさんが睨むように見ていると
空海の冷や汗。

そんなやりとりにも笑顔が出る。

リハーサルから戻ってくると
スタイリストが右往左往していた。

yukihiroさんと顔を見合わせる。

どうやら本番用の私の靴が
見当たらないらしい。

確かにリハーサル前にはあった。

サイズ合わせをしたから覚えている。

「じゃあそっちにしよ」

指を指す方には箱に入った真っ赤なパンプス。

候補にしていたけど
少しサイズが合わなくて断念した方。