-yukihiro side-

河南の楽屋に行こうとしたら
あの子が楽屋を覗いていた。

それを見て中にいるのが河南と
ダンス野郎だと分かった。

それにしても人の楽屋を覗くなんて。

『悪趣味だね』

声をかけると逃げるように去って行った。

河南の様子を見に来たけど
今はいいやと入る気を無くした。

それからリハーサルで河南を掴まえる。

『サポートが来ない？』

「はい・・・」

事故に巻き込まれた
その後の見分などに時間をとられて
本番に間に合わないと決まった。

心細いなんて言ってられないけど
不安が募ると悲しそうな河南。

俺は河南を連れてラルクの楽屋に戻った。

事情を話す俺の横で河南は
自分の服をぎゅっと握ったまま立ち尽くす。

ｈ『ユッキーは河南の曲も叩けるんやろ？』

hydeくんが河南の頭を撫でる。

何かを考えていたテツくんが急に立つ。

ほいきた！と言わんばかりに
ギターを持つKenくん。

リハーサルなしで本番を迎えたが
結局は数少ない事務所の仲間と
技術者が集まればこんなものと
即座に出来上がった特別ユニットは
話題を呼びそうなほど大成功した。

エンディングが終わり楽屋への帰り道。

また乃愛瑠が横にいた。

『今日もかっこよかったですね』

こいつとは会話もする気にならない。

無言のまま歩いていると
更に勝手な話が続く。

『河南さん、サポートが来られないからって
バックにラルク付けちゃうなんて凄いですね』

その一言で分かった。

サポートが来ないのは周囲に話してもいない。

足を止めて彼女を睨む。

『お前が仕組んだのか？』

俺が分かったからなのか
鼻を鳴らして彼女が言った。

『空海からあの人を遠ざけてくれません？』