24時間キスしていいですか?(yukihiro)

-河南 side-

何日経っても思い出してしまう。

yukihiroさんの顔がまだ間近にあるようで
胸がまだ高鳴ったまま
作詞も作曲も手が付かなくなってしまった。

息抜きをしようとスタジオを出れば
空海の後ろ姿。

来た廊下を引き返すが
河南と叫ぶ空海の声が廊下に響く。

動揺していた気持ちが余計に動く。

『河南、飯食った?行こうよ』

小動物のような人だと思っていたけど
野獣のような強引さに
すぐに返事が出来なくて
そのまま手を引かれてしまった。

スタジオの食堂。

『それ旨そうじゃん、ちょうだい!』

オムライスは一口二口と
空海の体内に取り込まれていく。

コロコロと替わるその表情に思わず笑った。

『笑うと可愛いね』

ロックを歌っているからかな
普段からキリッとした顔をしてる私も
久しぶりに笑った気がした。

張り詰めていた気持ちが楽になる。

「そのカレーも美味しそうだね」

そう言って手を付けたカレーを口に運ぶと
空海と目が合う。

真面目な顔をした空海を初めて見た。

目を反らせないまま
噛まないで飲み込んだカレーの味は
まったく分からない。

『付いてる』

空海の親指が私の唇をなぞる。

それを空海は自分の口へ運ぶ。

恥ずかしくて目を反らした先には
一人の女の子が立っていた。

睨まれた・・・

『空海じゃん、ここにいたんだぁ』

今の顔とは違う
可愛い気のある顔をしたその子は
お盆に乗った自分のオムライスを
空海の横へ置き、空海の横へ座った。

そして私に言った。

『私たちお似合いでしょ』

笑った私が馬鹿だった。

そして私は立つ。

『河南?』

「お似合いね」

また戻る。

人見知りな私に。
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