24時間キスしていいですか?(yukihiro)

-河南side-

生放送歌番組
ミュージックステーションの本番直前。

AKBグループやジャニーズなどの
アイドル達でごった返す舞台裏。

あまりの緊張に手足が震え
過呼吸気味でスタッフの声も聞こえない。

寒気立ち
衣装の下は鳥肌が立っている。

そんな私に後ろから声を掛けてくれたのは
L'Arc~en~Cielのyukihiroさんだった。

事務所とレコード会社の先輩で
レコーディングのサポートメンバーとして
ドラムを叩いてもらっていて
お世話になっている。

『河南、大丈夫?』

普段ならyukihiroさんから
話しかけてくることはない。

私は極度の緊張症で
ジャケット以外では顔を出さない歌手として
長く活動しているが
意を決して今ここにいる。

そして
やっぱりテレビ出演をしなければ良かったと
後悔している真っ最中だ。

ダメだ・・・
もう帰りたい。

顔を出さないからなのか
新人扱いに近くストレスを感じたりして
心のゆとりがない。

一人立ち尽くし
真っ青な顔をしている私を見てか
yukihiroさんは私を壁に追いやり耳元で囁く。

『大丈夫だから』

その言葉に頷くことしか出来ない。

『お前なら大丈夫』

暗示のような言葉は催眠術のようで
呼吸を整えながら
少し落ち着くことが出来た。

するとyukihiroさんはいきなり
私の頬にキスをした。

「えっ?!」

あまりの突然の出来事にざわめく周囲。

もちろんhydeさんやKenさんも驚いているし
アイドル達からは悲鳴に近い声も聞こえる。

私の時間だけが止まる。

みるみるうちに顔が赤くなり
火照りだすのが自分でも分かる。

『顔、赤くなったね』

クスッと笑う顔に一瞬で胸を撃ち抜かれた。

その瞬間にオープニングが始まり
胸の高鳴りが収まらないまま
ステージへの階段を下りる。

タモリさんから紹介をしてもらっても
自分の出番が終わっても
エンディングでいかがでしたか?と
アナウンサーに聞かれるも
緊張しすぎて
ほとんど覚えていなかったが
まともに応対は出来たようだ。

覚えているのはあの感触。
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